『ダイアナ』 英国王室もの映画の季節到来ということで・・・ | シネマの万華鏡

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ダイアナ妃の離婚から衝撃の事故死までの2年間を描く

明日から始まる『ヴィクトリア女王 最期の秘密』に、2/15公開の『女王陛下のお気に入り』と、何故かイギリスの女王ものが続きますね。

ヴィクトリア女王が夫君に先立たれた後、元馬丁の使用人と恋愛関係にあったという実話は『Queen Victoria 至上の恋』ですでに映画化されていますが、同じジュディ・ディンチ主演で、今度はどんな「秘密」が明かされるんでしょうか?

そしてアカデミー賞作品賞にもノミネートされている『女王陛下~』は、アン女王時代の英国版「大奥」みたいな話?

大好きなヨルゴス・ランティモスの作品でもあるので、『女王陛下~』はとても楽しみです。

 

 

で、こちらは同じく英国王室もので、ダイアナ妃をナオミ・ワッツが演じた作品。

仕事のために観ました。

ダイアナ妃がチャールズ皇太子との離婚後事故で亡くなるまでの2年間を描いたもの。

イギリスではとても評判が悪かったらしいのは、ダイアナ妃と彼女の恋人だったとされるパキスタン人医師ハスナット・カーン氏との恋愛が中心になっているからでしょうか?

1997年にダイアナ妃が亡くなった当時恋人として報道されたのは、一緒に亡くなったドディ・アルファイド氏ですが、実は彼との関係は破局したカーン氏へのあてつけで、洋上での熱いキス写真もダイアナ妃が記者にわざと撮らせたものだという説をとった作品なんです。

何を演じても高く評価される演技派のナオミ・ワッツも、これだけは「似てない」とさんざんな言われよう。

アイコン化した人物を演じるのは難しいですね。

 

イギリス人じゃない私が観れば、離婚後の純愛と破局の物語。

どこにも恥ずべき行動の描写はないし、むしろ愛のない結婚で傷ついた女性が本当の恋をした、というダイアナ妃のとても人間らしい一面を描いていると思うんですが、王室関係の話だけにイギリス人から見ると触れてほしくない部分もあるのかもしれません。

 

ダイアナ妃が離婚前のインタビューで語った「この結婚は最初から(カミラ妃(現)を含めた)3人だった」という言葉などはそのまま使われているものの、チャールズ皇太子やカミラ妃、姑であるエリザベス女王などは登場しません。

多分、製作にあたってはいろんな困難があったのでは・・・と思わせる内容。

勿論、ダイアナ妃謀殺説についても触れられていません。

 

監督は、『ヒトラー暗殺、13分の誤算』のオリヴァー・ヒルシュビーゲル、ハスナット・カーン氏は、『イングリッシュ・ペイシェント』でジュリエット・ビノシュの恋人役を演じて注目されたナヴィーン・アンドリュースが演じています。

以下は映画の話というより、史実のほうが中心です。

 

皇太子との結婚は初めから間違いだった

 

リアルタイムでイギリス皇太子夫妻の離婚報道を観てましたが、まあ当時のダイアナ報道はすさまじかったですね。

とにかく美しい人だったしファッションも斬新で、人前に姿を現す際彼女が何を着ているか?だけでもう大変なニュース!

 

その彼女が皇太子と不仲になり、冷え切った夫婦仲を晒すような写真が出回り始めると、さらに報道は加熱。

夫と別居中の彼女の恋人の名前が次々に出てきたり、チャールズ皇太子とカミラ夫人の関係に関する新証言が出てきたり・・・と、お互いの陣営が相手を貶める泥沼のリーク合戦も始まって、一体どこまで行くの?という状況でしたよね。

今にして思えば、パパラッチに追われる中で事故が起きたのは、あの加熱しすぎた報道の行き着く先の必然的な悲劇のようにも・・・

この作品では、ダイアナ妃はマスコミの容赦ない報道姿勢に苦しめられたと同時に、それを逆手に取って利用していた部分もあったように描かれていますが、実際はどうだったんでしょうか。

 

私の記憶では、日本では、皇太子との不仲に関してはダイアナ妃に同情的な報道が多かったような気がしていたんですが、今回読んだこの本↓には結構手厳しいことが書かれていました。

 

 

この本は皇太子夫妻が別居中の1993年に出版されたものなので、少し辛口なのは、一番難しい時期でもあり、皇太子とカミラ夫人の関係がまだ決定的に明らかになってない時期だったせいもあるんでしょう。

このほか、こんな本たち↓も読んでみましたよ。

なんせ英国王室は、妻と離婚したい一心で離婚を許さないカトリック教会を排除して英国国教会を立ち上げたヘンリー8世の昔から、愛憎スキャンダルの宝庫。英国王室関連のこの手の本は山のように出ています。

 

 

 

 

映画には描かれていませんが、『英国王室愛欲史話』によると、チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚は、ダイアナ妃の積極的なアプローチが実ったものだったとか。

よく知られている通り、ダイアナ妃の実家スペンサー伯爵家は貴族の中の貴族、ダイアナ妃も幼い頃から、チャールズ皇太子の弟アンドリュー王子の結婚相手に、などと言われながら育ったそうです。

 

学校の勉強は大の苦手で大学へは進学しなかった彼女は、ロンドンにアパートを購入し、保母の仕事を始めます。

お金も家もあって自由な生活、しかもロンドン!! 憧れの生活に見えますが、両親の離婚を経験していた彼女は早く結婚したかったんだそうですね。

この頃、チャールズ皇太子は大変なプレイボーイで、ガールフレンドと報道された女性も多数いたとか。ダイアナの姉のセーラも一時期チャールズと交際していたようです。

そんな中で、19歳のダイアナは、もう一人の姉ジェーンが王室側近の息子と結婚していたことが縁でチャールズ皇太子に会い、たちまちのうちに「チャールズ皇太子の一番若いガールフレンド」の座に躍り出ます。

シャイで美人のダイアナの出現にマスコミが騒ぎ出し、まだ迷っていた皇太子も流れに押されて結婚。

 

ただ2人とも我が強い性格で趣味もまるで違い、結婚直後から不和の芽はあった、というのがこの本の見方。

拒食症や過食症などダイアナ妃の不安定さについても、結婚生活が彼女を不安定にしたのか、それとも彼女が不安定だったことが皇太子を一層遠ざけたのかはわからない(というのは姉のセーラも拒食症を経験していたので)、という書きぶりになっています。

 

もっとも、皇太子とカミラ夫人の関係が紛れもない事実だったことは後で判明したわけで、それが彼女をひどく苦しめたのは、けして揺るがない真実と言っていいんじゃないでしょうか。

 

「愛人がいない唯一のウェールズ王子になりたくない」

最近「Diana: In Her Own Words」というダイアナ妃の肉声テープを元にしたドキュメンタリー番組が出て、話題になりましたが、これには、ダイアナ妃がカミラ夫人との関係についてチャールズ皇太子を非難した時、チャールズ皇太子が「愛人がいない唯一のウェールズ王子になりたくない」と言った(出店はNEWSWEEKのこの記事)という話も暴露されているようで。

 

多分、王子に愛人がいるのはそれまでは当たり前のことで、妻になった女性は皆それを受け容れてきたんでしょう。

良いか悪いかは関係なく、それが「慣習」であり「伝統」だったということ。「特権」と言ってもいいのかな。

でも、ダイアナ妃にとっては、夫婦に愛があれば愛人なんてありえないことだった。

いろんなスキャンダルが公になっても、彼女の人気が衰えるどころかますます支持が高まっていくのは、王室という特異な世界でごく普通の感覚を持ち続けた稀有な人だったからかもしれないですね。

 

このところ、ヘンリー王子とメーガン・マークルとの結婚で初の黒人プリンセスが誕生したり(実はジョージ3世の后シャーロット妃も黒人の血を引いていたという説もあるらしいですが、こちらは事実だとしても13世紀に遡る話なので、「初」と言っていいんじゃないでしょうか?)、マウントバッテン卿が王族で初の同性婚を遂げたりと、伝統や因習に縛れらない結婚でも世界の注目を浴びている英国王室。

今なら、チャールズ皇太子とダイアナ妃の不幸な結婚も、もっと早い段階で仕切り直しできて、お互いあまり傷つかないうちにいい再スタートが切れていたんでしょうか?

あるいは、皇太子は初めから躊躇なくカミラ妃を選んでいたのかも・・・いやいや、そうきっぱり決断できるのなら最初からそうなっていたはずですからねえ。