1981年のキネマ旬報ベストテンと、シドニー・ルメットの『エクウス』 | シネマの万華鏡

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映画記事は基本的にネタバレしていますので閲覧の際はご注意ください。

またもやいつもの友人と、『ダンケルク』に行って来ました。

『散歩する侵略者』や『三度目の殺人』も話題作だよ~と言ったんですが、彼女はやっぱり洋画派。

そういうところも気が合って嬉しいんです。

結局終了後の感想はそれぞれ分かれましたが、意気投合したのは、

「トム・ハーディかっこいい~!! もう!!あの眼が!!✨」

戦争映画でカタルシスを与えてはいけないと、こちらで大林宣彦監督も言われていますが・・・でも、トムハが戦闘機乗りなんか演った日には、どうしたってカタルシスに押し流されちゃいます✨

勿論、そういう軽い映画では全くないので、日を改めてゆっくり記事にしたいと思いますが。

物凄く凄惨なことが起きているのに、こんな時も海は青いんだなぁ・・・というのも、強く、深く、脳裏に刻まれたことの一つです。

 

さて、今日は昨日の記事を・・・

昨日、ひさしぶりにキネマ旬報のバックナンバーを読む会(お一人様)を復活させてみました。

まだ1982年・・・遅々として進まず笑い泣き

一体いつ読み終わるのか、計算するのも怖い・・・

 

まあ気を取り直して、1981年のキネ旬ベストテンからいきますね。

 

外国映画ベストテン

1.『ブリキの太鼓』(フォルカー・シュレンドルフ)

2.『秋のソナタ』(イングマール・ベルイマン)

3.『普通の人々』(ロバート・レッドフォード)

4.『約束の土地』(アンジェイ・ワイダ)

5.『グロリア』(ジョン・カサヴェテス)

6.『レイジング・ブル』(マーティン・スコセッシ)

7.『チャンス』(ハル・アシュビー)

8.『ある結婚の風景』(イングマール・ベルイマン)

9.『ブルース・ブラザーズ』(ジョン・ランディス)

10.『エレファント・マン』(デヴィッド・リンチ)

 

日本映画ベストテン

1.『泥の河』(小栗康平)

2.『遠雷』(根岸吉太郎)

3.『陽炎座』(鈴木清順)

4.『駅 STATION』(降旗康男)

5.『嗚呼!おんなたち猥歌』(神代辰巳)

6.『幸福』(市川崑)

7.『ガキ帝国』(井筒和幸)

8.『北斎漫画』(新藤兼人)

9.『ええじゃないか』(今村昌平)

10.『近頃なぜかチャールストン』(岡本喜八)

 

『ブリキの太鼓』・『泥の河』が1位って・・・『泥の河』はともかく、『ブリキの太鼓』は、今なら単館上映ですよね。このラインナップ、かなりハードル高いですね。特に洋画は娯楽映画が少ない印象。

邦画は、ATG(日本アート・シアター・ギルド)作品が目立ちます。

『遠雷』『ガキ帝国』『近頃なぜかチャールストン』はすべてATG。初期ATGのような芸術作品ではなく、低予算の娯楽映画・青春映画を量産した結果のようです。

『遠雷』主演の永島敏行は、この年のキネ旬主演男優賞ですね。今どきのイケメンとは殆ど共通項のないルックスなんですが、雰囲気がえも言われず男っぽくて、この頃人気がありましたっけ。

 

この年は『泥の河』で監督デビューした小栗康平はじめ、若手監督の活躍が目覚ましかったということで、1982年3月下旬号では「若手監督アンケート」という企画が掲載されていました。

質問の中には「日本映画の現状について」という項目もあり、殆どの監督が悲観的な回答をされているんですが、中でも井筒和幸監督の超辛口回答が面白かったので、引用しますね。

Q.日本映画の現状について

A.感動作がなに一つない事です。作り手が責任を持って作らない。『駅』など、名指しで上げればキリがないが、警官や刑事が主人公じゃノル訳がないし、偽善者の感動など、ひとつも要らない。

ゴミ映画が多い。

それにもうひとつ。映画評論家と称するゴロツキやタレントがいるが、皆んな、バカでどうしようもない。(以下略)

新進気鋭の若手監督らしい尖った回答ですね。

井筒監督の『ガキ帝国』は不良が主人公ですから、刑事ものに対するネガティブなご意見はなるほどです。

でも、刑事ものはこの後ヒット作がいくつか出たような・・・

『踊る大捜査線』が出てきた時、警察批判の刑事ドラマというところに新しさを感じたんですけど、どこかそのあたりで警察ドラマに関するパラダイムシフトがあったのかもしれません。

 

ところで・・・1982年のキネ旬(3月分まで)の中で気になったのが、シドニー・ルメット監督の『エクウス』

『アマデウス』の原作者として知られるピーター・シェーファー原作で、日本でも何度か舞台上演されているようです。

ムービーウォ-カーによれば、

イギリスの田園地帯を舞台に17歳の少年の馬に対する異常な行動とそれをめぐって苦悩する精神分析医の姿を描く。

という内容らしいんですが、この映画、キネ旬の寸評を読んで、直感的に同性愛的な内容を含む映画だと思いました。

 

 

当時の寸評ではあまり評価されていない上、「何故最後にギリシャに向かうのか意味がわからない」というようなコメントも。

当時は日本で公開されるゲイ映画は少なくて、ゲイ映画でよく使われるメタファーもあまり周知されていなかったのかもしれないですね。

ギリシャとくれば、古代ギリシャの少年愛文化を暗示しているんだということは、今ならすぐに伝わるんですが・・・当時の日本には、ちょっと時期尚早のLGBTQ映画だったのかもしれません。

 

この映画、日本ではVHSさえ発売されていません。アメリカでは当然のようにDVDも・・・英語さえ堪能なら!! こういう時、本当に悔しい思いをします。

それにしても、シドニー・ルメットがこういう映画を作っていたとは。

やっぱり観てみたい!!

TSUTAYA復刻シネマライブラリーにリクエストしてみようかな。

 

 

【追記】

さっそくTSUTAYA復刻シネマライブラリーにリクエストしてみました!