「神戸ニニンガ日誌」(第2,745号)
○井上荒野の『切羽へ』を読んだ。恋愛小説はほぼ読まない。直木賞受賞作。切羽(きりは)とは、採掘坑道の先端。最先端だが、一番危険な場所か。
○離島の教諭・セイが画家の夫と暮らす1年2か月の物語。赴任してきた音楽教師の石和は静かで不思議だ。セイと石和は見つめる、歩く、そして確かめる。終点で切羽は終わる。
○井上荒野の父・光晴が佐世保の炭鉱で働いていたという。『切羽へ』の舞台は長崎の島か。
○井上光晴の『地の群れ』に、「坑道は働いている間じゅう甘ずっぱい空気を切羽に匍わせている」という表現があるらしい。
○『地の群れ』は戦争を生き残った被爆者・部落・在日の差別を描く芥川賞候補の問題作。熊井啓監督が映画化している。
○切羽(せっぱ)は刀の鍔を挟み込むものでもあり、荒野の妹の名前。井上荒野に井上切羽。父・光晴、凄すぎる。
○ほぼ読まない恋愛小説を読んだので、背中がカユい。それは春だから、か。
まだいまだ。