日曜日。
何で足利へ1人で行ったのだろうか。
縁もゆかりも無いと言っても差し支えのない土地だ。
知り合いの焼鳥店の大将が足利出身でこのイベントをfacebookでフォローされていたので知っただけで。
すげー楽しそう!って僕も思ったわけじゃない。
朝の7時半に家を出て。
栃木県足利市の「県」(あがた)という駅を降りた。
そこからマイクロバスでイベント会場まで。
一緒にバスへ乗り込んだ方達は皆が仲良しの団体だった。
ああ。
やはりこんな所に1人で来る奴はいないわな。
辺り一面の麦畑だ。
そこを切り取ったような会場。1人、キリン一番搾りで乾杯。
ココファーム・ワイナリーのブースには僕が知っている醸造責任者の柴田さんはいらっしゃらなかった。
本当に知り合いが1人も居ない。
何だこの空間は。
足利1の村八分がここにいるぞ。
ビールから。
ココファームのワインへ。
飲むしかないじゃん。
「あわここ」相変わらず微妙な味だね。
「風のエチュード」大好きだよ。
さあ。
司会者の掛け声と共に麦フェススタートしました!
乾杯!
相変わらず乾杯する相手も居ない。
マール牛美味しそう。
それってマールって言うの?なんて突っ込みは入れないでね。
美味しそうな野菜も並び。
何やら楽しそうですね。
さりげなくボトルワインの値段が500円アップしてる。
何やら楽しそうですね。
ココファームのブース
肉に群がる足利の方々。
私は「仕事で来てんだよ。」と言わんばかりに写真ばかり撮っている。
ココファームのブース。さりげなくボトルワインの値段が500円アップしてる。
それでも2500円は安いーーーよ。
え?
「1人で来てるの?」
と優しいお姉さんが声をかけてくださった。
「良かったら一緒に飲みましょうよ。」
あっ。
あぅ。
その時には私は言語を忘れてしまっていたのだが。
優しいお姉さんに連れられて楽しいテーブル席へと座したのであった。
会場に着いて3時間近く経過してからだ。
優しいなぁ。
マール牛うめーなぁ。
「朝のバスで一緒でしたよね?」と話しかけて下さるこの方々は東京でミュージカルをやっていた団体で、主催者のお知り合いで東京やら千葉やらから来ているそうな。
なんて言いますか。
私は感動してしまいました。
ココファームのワイン飲み過ぎてしまったんでしょうね。
いつ間にか涙が出てました。
寂しくてじゃないですよ。
すごいなぁって。
何も無い所と言ったら麦畑に失礼だけど、
何も無いところですよ。
集まる理由も無い。
主催者はマール牛の生産者の奥さんらしい。
どこからか、足利に嫁いで。こんなイベントを企画して。
農業を見直して貰う。
生産者との繋がりを深める。
その思いで皆が動いている。
何も無いところでも、人はこんなにも気持ちが豊かになるのかと思った。
人が居る。
酒がある。
肉や野菜がある。
歌や踊りがある。
だから人が集まる。
こんなシンプルなもので人は満たされるのだと。
場所など関係は無い。
自分は自分のやりたい事をずっと場所のせいにして諦めてたんじゃないかって思った。少しだけ。
美しい。
人、歴史、文化。
受け継がれるもの。
自分は何を伝えるのが仕事なんだろうかと。
仕事の大半は伝えるって事だ。
うん。
楽しかった。
残念ながらどうやって帰ったかは覚えていない。
ココファームのおかげで。
マール牛と一緒にドナドナして帰ったのかもしれない。
翌日の月曜日は酷い二日酔いと日焼けによるダメージでその日を乗り切るので精一杯だった。
そして翌日の火曜日は何故かとても忙しく店が満席になった。
こんな六本木と西麻布の間の大通りから入ったビルの半地下なんぞに皆さんわざわざ足を運んで下さって誠に有りがとうございます。
そう思った。足利の麦畑よりだいぶ恵まれている土地だが。
そんな時にパリの山下さんが来店して下さった。
しかしもちろん満席なので帰してしまった。
山下さんは少しだけ驚いた表情を浮かべて、その後にこちらへ笑顔を向けて店を後にした。
自分の思い通りにならなかった事への苛立ちなどそこには少しも感じられなかった。
むしろ忙しそうで何よりだね。という笑顔をくれた。多分。
農業。
農業の全てがそうでないにしろ、自然と共に生きている人の視点、思想は何か違うのかもしれない。
思い通りにならない事を受け入れ楽しむ術を知っているのかもしれない。
それに比べて自分も一緒に働く仲間も思い通りにならないことに対して毎日酷く苛立っている。
何が違うのだろうか。
何が欠けているのだろうか。
考えれば考えるほど辿り着くのは
「感謝」
その一言かもしれません。
自然と共にある農にこそその恵みへ素直に感謝出来るのかもしれません。極端に言えば毎日が台風なら何にも出来ないわけですから。
そんな生産者の仕事を引き継いで最終的な消費者へと届ける僕らは意外なまでもその感覚を共有していない。
生産者との繋がりを大切にする飲食店は増えています。
「こだわりの食材を扱っているんだな」というイメージばかりが湧きがちですが、それだけじゃなく自分の仕事の根本を見つめるためにも生産者の仕事を少しでも理解すべきだし、その生産されたものへの有り難みを知ればいろんな事へ感謝出来るのではと思います。その気持ちはそのままお客様へのサービスにも表れます。
僕の働く店の名前は「燃(もえ)」と言いますが、「火」と「然」という字から成り立っています。
自然の恵みである食材を、自分たちの熱を持ってお客様に届ける。良い言葉です。
思わず萌えます。
ボスが考えたとはとても思えない。
そんなわけで色んな事への気付きを下さった楽しい麦フェス。とてもオススメです。
もしも来年、行こうかなと思った方がいましたらどうか御誘い下さいませ。
気が向いたら行きます。