これを読む前にパート01、02、03をお読み下さい
「敵襲!!」
中佐が手紙を読み終えた数秒後。一緒の洞窟に居た誰かが叫んだ。
それに続くかのようにドゴォンドゴォンズダダダズダダダダという銃声が聞こえる。
こんな時でも敵は待ってくれず、彼らは死んだアメリカ兵の事は知らない。そう思うと何故か虚しくなったがその感情はすぐに忘れてしまった。
洞窟に居た兵士や俺たち、中佐も皆、近くにある個々のライフルを手に取り出入り口に走る。
ダダダ、ダダ、ダダダダダ、ダダダダダ―
ドゴォンドゴォン―
それまでの沈黙を払払拭するかのように日本とアメリカの戦争が始まる。西中佐が出入り口に立ち、敵がいるであろう方向にライフルを撃ち始めた時だった。
ドゴォォォォン!!
ひときわ大きな爆弾独特の音が聞こえた。それは何を意味するのか。それを意味するのはそう、俺たちの洞窟に当たった証拠だ。
「中佐!」「中佐!」「中佐!」
中佐の近くに居た兵士が近くによる。
体を見る限り何所かが無くなった訳ではない様だが中佐はずっと呻きながら目を押さえていた。眼をやられてしまった様だった。
「中佐、申し訳ございません。もう、ここには薬が無いのです。」
中佐に寄り添う一人が言った。死んだアメリカ兵に使った物よりも前から言うならこの戦いが始まってこの方、友軍からの補給は無く、薬は底を尽きかけていたのだ。
「俺にかまうな、他の者を見てやれ。」
中佐は眼から血を流しているのも関わらず、そういった。
その先は俺にも知らない。俺は、伊波と外の銃撃戦に参加していたからだ。
ダダダダ、ダダダダダ、パンッパンッ
外に出て、最初に見えたのはもちろん他の兵とアメリカ人。今日までに何人殺したかも分からない。しかし、俺たちには、もう既に死んだ人間に対しての感情など無かったのかもしれない。
「くそ!!」
そう叫ぶと俺はライフルを撃ち始める。
ダンダン、ダンダン―
ダダダダ、ダダダダダ―
ライフル等の乾いた銃声が鳴り響く。相手も本気でつぶす気がないのか、あまり敵は多くなかった。
「なぁ鈴木。」
「なんだ?」
こんな時だが、伊波が話しかけてきた。こんな時だからこそ、このとき俺は伊波が話しかけてくれたのが少しばかり嬉しかった。
「俺たち、後何人殺せばいいんやろうな。一人十兵って言っててけどもう十人以上今までに殺してんやで。死ぬまで戦えってか?」
そういった伊波の頬には涙が流れていた。
「・・・。」
その時の俺には、伊波にかけられる言葉は無かった。
その後は俺も伊波もだまって撃ち続けた。時に場所をかえ、ただひたすら撃ち続けた。
そしてまた、同じ場所で俺の隣に伊波が居た。
その時だった。
「うっ!!」
隣に居た伊波がいきなり呻いた。赤痢や食中毒ではない呻き方。
「どうした伊波!!おいっ伊波!!」
「・・・」
「伊波!伊波!」
何度声をかけても返事は返ってこない。
たまにはアメリカ兵の銃声が止む事がある。その時を見計らい隣を見た。その時、俺は言葉を失った。腹に銃弾一個位の穴が開いており、そこからは血が止まず、伊波の顔色は青くなっていた。目がうっすらと開いていたが、見えていないのかそこらをゆっくりと見ている。
「伊波!伊波!」
伊波を持ち上げて声をかける。栄養が足りないのか大の大人なのに軽々と持ち上がった。
「鈴木か…?」
「ああ、そうだ。鈴木だ鈴木新一郎だ!」
「グフッ…。なぁ、新一郎、お前の故郷の空はどうやった?」
いきなり何を言い出すのかとも思ったが俺は伊波の質問に答えた。
「俺の故郷の空か?俺の故郷の空は綺麗だった。田舎だからなんも無いけどさ。空気は澄んでて、青くて、夜になったら数え切れないくらい星が出てたよ。」
何故か俺はこの時泣いていた。
「…そうかいな。俺のとこの空もなぁ青うて綺麗やった。俺は、子供と、あの青い空がもう一回見たいんや。」
「ああ・・・。」
「でもなぁ、この体やとそれもかなわんやろうなぁ…。うっ…でも、見たかったわあの空を・・・。」
「なに悲しい事言ってんだよ!!もう一回家族に会いたいって、子供が見たいって言ってただろ?」
「なぁ新一郎、これ、預かってくれへんか?」
あえて聞こえないふりをしているのか、本当にもう聞こえてないのか、伊波は俺の言葉に反応せず、胸ポケットから一枚の手紙を出してきた。
「これなぁ、家族に渡したかった手紙や。新一郎、これ、渡してくれへん、か…?」
「うっうっ」
俺は何も言わずにその手紙を受け取った。その手紙は、伊波の血で、赤くなっていた。
「渡したで。これ、預けたで…。」
そういうと、言いたい事は言ったと言う様に伊波は目を閉じ、腕は力が抜けるようにばたっと地に着いた。
「勇?勇?勇!勇!おいって!起きろよ!おいっ」
ゆすっても勇は起きようとしなかった。
「勇・・・。勇。勇…。うっうっっ・・・。」
そう、伊波勇は、死んだ。この歳で死んだ。俺の親友とも成っていた伊波は死んでしまった。家族を、自分の子供を見るために戦っていたのに、また空を見たいと言っていたのに勇は、死んでしまった。
「うっうっ・・・。いさむぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」