今日も今日とて仕事をサボって遊びたい放題でございました。僕ちゃんってばこんなにフリーダムで良いの?と不安になるほど遊びたい放題。完全に堕落した、社会の歯車にすらない状態で遊んでました。
外回りと称して、適当にチャッチャと得意先への巡回を済ませ、ゲームセンターに行ったり映画を観に行ったりとやりたい放題。誰か俺を止めるやつはいないのか。遊び狂っている俺を羽交い絞めにして止めてくれるやつはいないのか、というほどに仕事をサボってまいりました。
でもね、サボってるといってもあまり楽なものではないのですよ。なんというか、サボって遊び呆けてるというのにイマイチ遊びにのめり込めないのですよ。なんというか、ココの奥底に一抹の罪悪感というか、後ろめたいような気持ちがあるんです。
あ、僕、仕事をサボって遊んでる。コレでいいのかな僕は?
という漠然とした気持ちがですね、ほんのちょっぴり僕の心の中にあるわけなんですよ。そういう気持ちを抱えて大っぴらに遊びを楽しむなんてできない。小心者の僕にはできない。遊んでちゃいけない、真面目にやらなきゃという思いと戦いながら、葛藤しながら遊んどるわけですわ。
遊んでちゃいけない。遊んでちゃいけない。今日こそは真面目に仕事しよう。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ。と物凄く葛藤しながらも、今日も遊んでしまうわけなんですわ。だから、楽にヘロヘロと遊んでいるわけではなく、ものすごい心理的負担を胸に、断腸の思いで遊んでるということなんです。
そもそもですね、外回りという存在自体が良くないのですよ。外回りってのはやはり勤務時間中なのにフリーダムに外に放たれるわけではないですか。上司とかの目の届かない場所に「自由にしていいんだよ」と言わんばかりに放たれる。そりゃあ誰だって遊ぶっちゅーねん。
刑務所の門を開放して、「自由にしていいんだよ」と外界に受刑者たちを放とうものなら、ホントに自由に狼藉を働くわけなんですよ。圧迫された刑務所内での生活から、突如フリーダムへのリリース。鬱積された思いは大爆発。レイプに強盗、傷害にカツアゲなど一気に外の世界は暴力が支配するのです。
それと同じでですね、僕を圧迫し続ける職場の雰囲気や上司からですね「外回り」という魅惑の浪漫飛行でリリースされようものなら僕だって想いが爆発しますよ。普段のストレスを発散するかのように遊ぶ遊ぶ。これでもかと遊ぶ。親の仇のように遊ぶ。上司の支配から逃れて遊ぶ。この支配からの卒業とか言いながら遊ぶ。
だからね、「外回り」という存在自体が悪なわけですよ。これさえなければ僕だって遊ばないわけです。ストレスは溜まるけど真面目に仕事するというものです。外回りさえなければ狂ったように仕事ばかりしてるね。子供が生まれるときも出産に立ち会わずに会議してるような仕事の鬼になってると思う。
だいたいですね、外回りってのは本来は僕の仕事ではないのですよ。仕事上の得意先に書類を届けたりする仕事なんですけど、こういった雑事ってのは事務員であるB子の仕事なんです。女性なのに筋肉モリモリであり得ないマッスルを有するB子の仕事なんですわ。
僕は僕で本来はちゃんとした仕事があるんですよ。一流ビジネスマンのようにキーボード一つで億単位の金を動かしたり、ユーロがどうしたとか公定歩合がとか言うような仕事があるわけ。それなのに外回りとか訳わかないパシリみたいな仕事やらされてるの。
何でかっていうのを説明すると話が長くなるんだけど、まあ良い機会なので説明しますわ。
あれはですね、ちょうど事務員B子が我がオフィスに赴任してきたときのことですわ。上司がヒヒオヤジのようにエロス満載でB子に対して仕事のないようなどを教えていたんです。
「いいかし、こういった物品が搬入されてきたら伝票をだね、わかるかい?」
などと、まるで恋人に囁くかのように教えていたわけです。上司が。ゴーレムB子に。
B子相手に下心過積載で接する上司に「オマエは何でもありか」などと心の中で突っ込みを入れつつですね、その話を聞いていたわけです。B子もB子でアゴ割れてるくせにブリッコブリブリで「えー、よくわんないですぅー」とか言っちゃって、上司も「こりゃあまいったなーぶはははは」とか何が参ったなのか全然分からないセリフを吐いてたのですよ。
もうなんかね、その上司とB子の周囲だけ星空を見上げるラバーズのような一種異様な雰囲気が蔓延してたわけ。ゴンザレスB子と、ヒヒオヤジ上司が。すごく精神衛生上良くない光景だった。
でね、さらに話は進んで、外回りについて上司が説明してたわけ。
「あと君には外回りもやってもらうから」
とか、全然カッコ悪いんですけどカッコつけて上司が言うわけですよ。それを受けてB子も
「えーーー外回りですかぁー?」
とか、アニメ声優みたいな声出して言うの。セーラームーンみたいな声で言うの。もう見てらんない。
「そうだよ、得意先なんかを周って欲しいんだ」
とか、バスローブを着てバラを咥えるような勢いで上司が言うわけ
「その得意先って遠いんですか?」
とB子も質問。
「遠いところもあるから、車で行ってもらわねばならん」
確かにその通りなんです、周らねばならない得意先はですね、嫌がらせかと思うほどに遠い場所にある時があるんですよ。丘の上のドラキュラが眠ってそうな古びた洋館みたいな場所にあったりするの。だからね、とても公共の交通機関や徒歩ではいけないから車で行かねばならんのですよ。
「えーでもー、ワタシ、車運転できないですしー」
とかB子が言いやがるわけなんですよ。とてもこのゴルバチョフみたいな生物から発せられているとは思えないキューティクルなボイスで。
「おやおや?君は確か車の免許持ってただろ?」
優しく上司が問い詰めます。そうなんです、B子は車の免許を持ってるはずなんです。そう履歴書にも書いてあったはずなんです。なのに車の運転できないとかブリブリに言うんですよ。
「いやー、免許は持ってるんですけど・・・・」
ちょっとションボリした表情でB子が言います。免許は持ているけど運転できない理由が彼女にはあるみたいなんです。
「免許は持ってるんですけど・・・ワタシ・・・ハイパードライバーなんです」
コレを聞いた瞬間、僕は飲んでたお茶を噴出したね。綺麗に毒霧のようにディスプレイに向かってお茶を噴出した。B子的には「ペーパードライバーなんです」と言おうとしたのだろうと思うんです。免許はあるけど実際にはほとんど運転していないペーパードライバー、そう言おうとして「ハイパードライバー」ですからね。
ハイパーなドライバーですよ。ドライバーを超越したハイパーなんですよ。そりゃあ是非ともモリモリと外回りとかやって欲しいものではないですか。ものすごい勢いでハイパーに外回り。
でもね、それを聞いて呆気に取られてしまった上司。何か全てを諦めてしまったのか、妙に悟りを開いた表情で。
「いや、もう外回りはいいや・・・・」
とか言うてました。さらには
「おいpato、オマエこれから外回りやれ」
という有難いお言葉を頂戴しまして、晴れて僕が外回り担当となったわけです。世界を股にかけるスーパービジネスマンの僕が。正義を追求する企業戦士である僕がセコセコと外回りをしているわけなんですわ。
だからね、本来はハイパードライバーであるB子が外回りをするべきなのに、僕がやらされている。さらにはそれが原因で僕はサボりまくり。以上をまとめますと、僕はB子のせいで仕事をサボらざるを得ない状況に追いやられているということです。
なんてこったい、薄々は感付いていたけどB子の仕業で僕が仕事をサボってたなんて。ホント、B子はとんでもないヤツだ。僕を堕落させやがって。許せない、ムキー!!
でもまあ、僕が仕事をサボるのってB子のせいでもなんでもなくて、単純にこうやって全てを人のせいにする自分の気質が悪いんだろうな。どんどんと責任転嫁して堂々巡りのメリーゴーランド。いつまでたっても言い訳ばかりして変わろうとしない。それじゃあ良くないよね。
よし、明日からこそは心を入れ替えて真面目に仕事しよう。そう決意した26歳の冬でした。
たぶんまた遊ぶんだろうけど。