最近ブームなんですかね。こんな田舎町にもボコボコ新規のネットカフェがオープンしています。職場の近くにも新たにネットカフェがオープンしやがりまして、無類のネットカフェ好き、無類の仕事嫌いの僕としましては、嬉しいやら恐ろしいやら、多少複雑な気分であります。
まず、僕がどれだけネットカフェ好きで、どれだけ仕事嫌いなのか説明しないと話が始まりませんので説明させてもらいますけれども、おそらく皆さんが考えている7倍くらいは好きで嫌い、と考えてくだされば結構です。
仕事嫌いは今に始まったことではございませんので、ネットカフェ好きについて説明させてもらいますけど、例えば、極寒のアラスカ、30年に一度の巨大ブリザードに襲われた僕は、仲間との通信も途絶え、食料もなにもない、まさに絶体絶命の状態にあったとします。いよいよもうダメか、思えば儚い人生だった、雪の上に横たわりいよいよ最期の時来たりと覚悟した時、目の前に女神が現れたとします。幻覚が見えるようになったか、いよいよもうダメだ、と思った時、女神は慈愛に満ちた表情でこう言いました。「アナタを助けてあげましょう。5分間だけネットカフェを利用する権利と、温かいブランデー、どちらか選びなさい」と言ったとします。そうなった場合、僕は、さんざ迷うだろうけど間違いなく女神のおっぱい揉む。揉みしだく。「本当にあったブログないしょ話」という雑誌でNumeriの日記が漫画化されているのですけど、漫画内の僕のセリフのほとんどが「おっぱい揉みたい」だけだったという文字通り内緒にしたい話に基づいて女神を陵辱しまくる。それくらいネットカフェが好き。
でまあ、そんな魅惑のネットカフェが職場近くにできたとなると大変な騒ぎで、普段なら「近くにないから」「行くの面倒くさい」といった理由で仕事後か休日に利用するのがメインとなるわけなのですが、職場から徒歩圏内に建立されたとなるとさあ大変。ちょっと仕事で嫌なことがあったりすると途端にランナウェイしてネットカフェに篭ってしまうのです。
「patoさん、○○の書類まだですか?」
とか催促されただけでネットカフェに走る。まるで世捨て人のようですけど、職場近くにネットカフェがあるってのはそれだけ危険をはらんでいるわけなんです。
オープン以来、何度となく、それこそ嫌なことがあると仕事をサボってネットカフェに行っていたのですが、そうなると、たちまち常連になってしまうではないですか。オープンしたてで客が少ないってのもあるんですけど、数日行っただけで常連風になってしまって、店長と思わしき人と会話を交わすまでに上り詰めてしまったのですよ。
「いつもありがとうございます」
「あ、はい!」(いきなり話しかけられて戸惑っている)
「ネットゲームをされるのでしょうか?」
「は、はい。ネットゲームもしますし、漫画も読みます」(まさかふたりエッチを読みに来たとは言えない)
「ありがとうございます。ホント、最近オープンしたばかりで右も左も分からないものですから。何か不具合があったら言って下さいね」
ちょっと店長がホモっぽくてカマっぽくて怖いのですけど、全国チェーンでない極めてマイナーなネットカフェらしく、いささかの不安を抱いて経営しているようです。そりゃそうですよね、何の指針もなくオープンさせたら不安にもなるってものです。
「いえ、大丈夫ですよ。パソコンのスペックも良いし、今のところは不自由ありません」
「大丈夫ですか?パッチとかあたってます?一週間に一度はあてるようにしてるんですが」
「あ、はい、大丈夫です」
あまり専門的な話になると、もはや店長が何言ってんだか分からないのですが、とにかく店長の不安を解消すべく返答しておきました。
それにしても店長に話しかけられるとはね、よほど僕がネットカフェ狂いの剛の者に見えたのか、まあ、なんにせよ気分悪いものじゃない、今日も仕事サボって楽しむぞー、と指定された個室に赴いたのです。
コーラを飲み、漫画を読み、ネットゲームに興じる。そうやって心の底からネットカフェライフを楽しんだのですが、いかんせん、時間が長すぎて持て余してしまう。お得だという理由だけで8時間パックというキチガイ沙汰を演じてしまったため、どうにもこうにも4時間ぐらい時間を持て余してしまいましてね、何をして良いのか分からない状態になってしまったのですよ。
そこで、もはやサイト管理人の鑑と言う他ないのですが、4時間もあるのなら日記の4,5本は書けてしまう!と妙な使命感に燃えてしまい、ガリガリとネットカフェでNumeri用の日記を書き始めてしまったのです。
変な話ですよね。日記なら家でも職場でも、パソコンさえあれば書けるのに、わざわざ金払って入ったネットカフェで書いてしまう。どう考えても不経済なんですけど、なんだろう、そういうのを超越した、僕は日記を書かねばならない、みたいな神の天啓を受け取ってしまったのです。
個室ブースで鬼のように日記を書く姿は正に鬼、日記の鬼。親が死にそうになっていてもその横で日記を書いてるんじゃなかろうかという勢いで書きまくってました。何も事情を知らない人に、「あの人は病気の子供と約束をしてるんだよ。日記を書いたら手術を受けるって約束してるんだよ」と嘘を言っても信じてもらえそうな、それほどに鬼気迫る勢いで日記を書いていたのです。
この日、僕が書いた日記が、少年時代に自転車屋のオッサンと交流した、ちょっぴりセンチで切ない内容の日記で、まあ、みんな泣くんじゃないの?といった、それこそ月曜10時代くらいにドラマ化されてもおかしくない美談を書いていたのですけど、書きながら自分でも泣けてきちゃいましてね、なんて僕は純粋なんだ、と自分に感動しながら出来上がり作品をフォームメールにて自分宛に送信したのです。
前にも書いたのですけど、僕は家以外の場所で日記を書いた場合、その文面を一度自分宛にメールにして送信します。それを我が家で受け取って更新作業をするんですよね。
でまあ、日記も書けたしちょうど8時間パックも終わる時間になった。なんて有意義な時間だったんだろう、ものすごい泣ける作品も書けたしな!と大満足してネットカフェを後にしたのです。
一度職場に寄って帰宅準備。5分と滞在しないうちに帰宅しまして、何のために仕事場に来たのかサッパリ分からないんですけど、溜まりに溜まってバベルの塔みたいになってる書類の山は見ないことにして満面の笑みで帰宅したのです。
家に帰って洗濯して、破れたパンツを縫ってからですね、いよいよ更新するかとパソコンを立ち上げ、自転車屋のオッサンとの交流を描いたお涙頂戴の日記を更新しようとしたのです。
まあ、普段からほとんど推敲とかしないんですけど、一応、書き上げた日記をザーッと読みましてね、自画自賛で申し訳なく、どんなオナニーだよと言いたくなるのですけど、やはり泣ける日記だ、と感涙に咽びながら読んでおったわけなんですよ。
”少年時代のあの日、自転車屋のオッサンはヒーローだった。”
のくだりから始まる日記。昭和時代のノスタルジックな感覚を思い出させてくれる思い出話。ええ話ややなあ、と思いながら読んでいたのですけど、途中から何か様子がおかしい。
”僕はパンクした自転車と400㍊だけを握り㍊めて自転車屋へと向かった”
なんか、㍊とか訳わかんない文字が出てくるんですよ。ここは「僕はパンクした自転車と400円だけを握り締めて自転車屋へと向かった」っていう、貧しい僕と優しいオッサンとの温かい触れ合いを描いた場面であるはずなのに、㍊が全て台無しにしてやがるんです。400ミリバールを握りミリバールめて自転車屋に行くとか、意味がわからんにも程がある。
どういうトリックなのか知らないですけど、どうにもこうにも先に読み進めていくとどんどんおかしなことになっていきまして、漢字全部が㍊とか㌦とか訳分からん記号文字に置き換わってるんですよ。それが後半になるにつれて大変なことになり、最後のほうのクライマックス、最も泣ける場面では、
”母から聞いた話では、おじさんは癌だったということだった”
というオロロンと泣き出してしまいそうなシットリとした場面では、
”㍊から㌦いた㍍では、おじさんは㍑だったということだった”
という、戦時中の日本軍の暗号みたいになってんですよ。泣けるどころか笑える。
しかも、そこからはいよいよダメになったのか、全部の文章が文字化けして、「猯酳跛照樣讓?發」とかやけに画数の多い漢字の羅列で中国語みたいになってました。
ギリシャ神話に登場する日記の神、ニッキーが宿ったかの勢いで書いた渾身の泣ける日記が文字化けで笑えることになり、どういったイリュージョンだと大笑いして書き直す気力すらありませんでした。というか、㍊を必死で直すのだけは何かが決定的に情けないので死んでも避けたい。
原因が全く分からないのですが、他にも書き上げた日記が「おっぱいを㍊みたい」とか件のネットカフェから送った日記のみ大変なことになっていたので、おそらくネットカフェのパソコンか回線に問題があるのではないかと思います。全然ダメじゃないか。
でもまあ、日記を書かなきゃいいんだよな、と大して気にすることもなく、相変わらず仕事をサボってネットカフェに行っているのですが、またもや店長に
「何か不具合とかありませんでしょうか?」
と気さくにフランクな感じで話しかけられたのですが、「これは言ってやらねばならん!」とクレーマー魂に火がついてしまいましてね、何か無性にテンパった状態で、
「ミリバールになるんですよ!」
とちょっと怒りながら言ってました。キチガイか。
店長さんも「あ、この人、モノホンのキチガイなんだ」的な顔をして困っておられましたので、何とか誤解どころか6階くらいになった事態を解こうと、
「漢字がミリバールになるんです!」
と懇切丁寧に説明しておきました。キチガイか。
絶対に僕の言いたいことは伝わってないんですけど、店長もこれ以上関わったら店に火をつけられるかもしれん、と思ったのか、
「申し訳ありません、対処しておきます」
と先ほどまでのフランクな眼差しが嘘のような、冷徹で業務的な視線で言われました。
でもまあ、そもそも、金を払って入ったネットカフェで日記を書くという行為がおかしいのです。そんなね、ネットカフェに来た時くらい普段やってる行為から開放され、ネットゲームやエロマンガ熟読とか、そういうのに没頭すればいいのです。それらすらも普段やってるとか考えないようにして、日記執筆以外の事を思いっきりやればいいのです。その面においてこのネットカフェには不具合はない。
不具合のない最高のネットカフェ。職場に近くて最高。店長だっていつも気にして僕ら顧客が満足できるように気配りしている。なんて素敵なネットカフェなんだ、最高だね。これからも仕事をサボって通いまくるぞ!と漫画を選んでいたら、少女マンガコーナーから上司が物凄い数の少女マンガを両脇に抱えて出てきました。
「あ、こんにちは」
「お、おおう」
お互い仕事をサボってるという負い目からか、離婚した後の夫婦のような物凄い気まずい会話を交わしました。
さすが職場近くのネットカフェ。物凄い不具合じゃないか。自転車屋さんの日記より泣けてきた