孤児院(Numeri日記より) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

どうしても孤児院出身ということにしておきたかった。

本当に孤児院出身の人が聞いたら立腹も甚だしいと思うけれども、どうしても自分のことを孤児院生まれと詐称したい時期があった。今でもそうなのだけど、うら若き高校生くらいの頃だっただろうか、その頃が一番酷かったように思う。当時の僕は自分の中で心に傷を持った悲しき青年が異性にモテると熱烈に勘違いしてる部分があって、そういった自分をプロデュースするのに躍起になっていた。

僕は暇さえあればどうしようもないことを妄想する癖があって困る。妄想する暇があるならマリオカートでもやってるほうがいくらか有意義だと思うのだけど、どうしても妄想が止まらない。オナニーか妄想か、妄想かオナニーか、たまにエロ本、こんな29歳になるなんて、幼稚園時代の僕が見たら自ら命を絶つかもしれない。一体どこで間違ってしまったのだろう。

現在、僕は普通の家庭に生まれて貧乏ながら普通に育てられ、普通に学校にいって普通に就職して普通に仕事をしてるわけなのだけども、こんな普通じゃ物足りない、と日々妄想の中で自分のドラマティックな人生を組み立てて楽しんでいる。

妄想の中での僕は孤児院出身だ。これだけは外せない。孤児院で育った僕は愛を知らない。愛されることも愛することも知らないのだ。孤児院の先生は、あの感情のない目で見られるとゾッとした、などと後に証言する。僕の幼少時代を語る上で重要なエピソードが一つある。孤児院で飼っていたウサギが何者かの手によって虐殺された時、多くの子供たちが泣いた。しかし、僕だけは動じる様子もなく、ウサギの死骸を手にとってムシャムシャと食べ始めたのだ。「いつも食べてる肉と同じじゃん」と言った僕に対して、孤児院「慈愛の館」の園長は「この子は重要な何かが欠落している」と感じたそうだ。

中学生になった僕は孤児院を出ることになる。ある資産家に養子として引き取られ、豪邸に住み何不自由なく生活する権利を手に入れたのだ。養父も養母も優しかった。この当時、僕の人格を決定付ける重大な事件が起こる。資産家の養子であることに地元の不良グループに目をつけられた僕はカツアゲに遭う。しかしながら、テコンドーの使い手であった僕は不良グループをちぎっては投げちぎっては投げ。逆に返り討ちにしてしまう。暴力、破壊、一方的な殺人ショー、破壊衝動にスイッチが入ってしまった僕は、不良グループを半殺しにしてしまい警察に連行される。少年院送りかと思われたが、養父が金の力で揉み消してしまう。

地元の有名進学高に入学した僕は、一見すると穏やかな普通の高校生を演じつつ、心の中では着々と悪魔を育てつつあった。恐ろしいことに、僕には罪悪感と言う意識や、他人をいたわる気持ちが全くなかった。言うなれば、人の痛みを知らない人間に育っていた。後に僕をカウンセリングしたカウンセラーによると、愛情と同様に痛みを与えられずに育ったことが主な原因らしい。自分が痛がらないのだから他人の痛みが分からない。愛されたことがないからどう愛していいのか分からないのだ。一見すると普通の速水もこみちみたいな高校生だが、その中身は凍てつくほど冷めた心を持った男だった。

大学に入り、ある一流企業に就職する。僕に与えられた仕事は企業の裏を守る門番だった。表沙汰にはできない数々の事件を秘密裏に処理する、いわば企業の裏の顔だった。社長の愛人問題の解決、総会屋への根回し、政治家への賄賂、重要人物を自殺に見せかけて殺す、借金取りのような仕事も平気でやった。普通の人なら良心の呵責から1年と持たないポストだったが、なんと僕は7年も勤め上げたのだった。

このままいけば裏社会で幅を効かせる裏社会のドンも夢ではないと思い始めた7年目の冬。僕はある一家に出会う。退職した社員に追い込みをかけた時だった。この社員は中枢のポストにありながら突如退職した。会社が手がけていたインサイダー取引の証拠を握ったまま突如として退職したのだ。僕に下された命令は、その元社員の抹殺およびインサイダー取引の証拠を回収することだった。この案件にあたる相棒として謎のお色気美女ジェニファーとペアを組むことになった。なんでも社長直属の部下らしく、彼女でなければインサイダー取引の証拠を見分けられないそうだ。

早速、銃を忍ばせてジェニファーと共に元社員の住むマンションに向かう。そこには、元社員の暖かい家庭があった。「お父さん、今度の日曜日は遊園地にいけるの?」「ああ、お父さん、もうずっと休みだから、いつだって花江と遊べるんだぞ、いつだって・・・」「あなた・・・」「パパー、どうして泣いてるのー?」いつもなら僕にとってこんなの屁でもなかった。泣きすがる子供の前でライバル社の重役を射殺したこともあった。平和な家庭を壊すことなど、家庭の味も痛みも知らない僕にとって造作もないことだった。ただ引き金を引けば動かなくなった肉ができるだけ、それだけのはずだった。

「ゆ・・・遊園地・・・」

周る観覧車、上下するメリーゴーランドの馬たち。楽しそうな子供たちの顔。断片が浮かんでは消え、頭が割れそうになる。

「Hey pato。どうしたの?」

ジェニファーが僕を気遣う。

「なんでもない、大丈夫だ」

「なんでもないって・・・。速水もこみちみたいな顔が真っ青よ」

「大丈夫だ!なんでもないって言ってるだろ!」

柄にもなく声を張り上げてしまった。

「さあ、早く仕事を済ませましょう。ボスの命令は証拠の回収と一家の殺害よ。無駄に遺族ができると後々面倒だってね」

「まってくれジェニファー、ここは俺に任せてくれないか?」

ジェニファーの返事も聞かず、僕は単独で一家に押し入った。ヤツは組織が消しに来ることを半ば分かっていたようでその表情からは諦めが見て取れた。ただ、ヤツはこう言った。

「どうか、どうか、妻と娘だけは助けてくれませんか・・・?私はもう覚悟してます、私だってインサイダー取引に加担していたのですから。ただ、妻や娘に罪はない」

僕の銃口がブレた。

「どうして・・・。どうして・・・。お前らは自分を犠牲にしてまで人を助けようとする?それがお前らの言う愛なのか?」

「愛かどうかは知りません。ただ、自分が痛いより、妻や娘が痛い方が私にとっては痛い。あなたにもきっと分かる時が来ますよ」

「パパー、この速水もこみちみたいな人だれー?またお仕事?遊園地にいけなくなっちゃうの?」

また頭の中が割れるように響いた。そしてまたあの断片的な景色が。

「ゆ、ゆうえんち・・・。お母さん・・・」

「花江、静江、奥の部屋にいってなさい!」

喧騒が鳴り響く頭の中、なんとか意識を繋ぎとめ、僕は言葉をひねりだした。

「早く・・・インサイダー取引の証拠を出せ・・・そして、早く荷物をまとめてここを離れるんだ!」

彼は1枚のCD-Rを差し出すと、小さなカバンを持って家を飛び出した。もちろん、彼の妻も大きな荷物を持ち、娘も宝物なのだろう、飼っていたハムスターをカバンに移して手をひかれていった。

「まさかアナタが組織の命令に背くなんてね。私は証拠の回収を命じられただけだから構わないけど、殺害まで指示されたあなたはどうなるかしらね」

ジェニファーは小悪魔のように笑い、僕の手からCD-R奪い取った。

「ヤツは何も喋りはしない。殺す必要はない」

「その判断をするのは組織のボス、グレートチュパカブラよ。どうやらあなたと組んで仕事をするのは今日が最初で最後のようね。なにせあなたは明日から、いいえ今からグレートチュパカブラに終われる身だもん。もちろん、生き延びれるわけがない。もちろんあの一家もね」

「あの一家だけは殺させない!この俺が守る!」

「あら?それがアナタの愛かしら、おかしいわね、フフフ」

ジェニファーと別れ、自分のマンションへと帰る僕。ドアの前に立ってすぐに異変に気がついた。毎日出かける時にドアノブの上に髪の毛を置いているのだが、髪の毛が床に落ちている。誰かが部屋に入った証拠だ。銃を構え、音を立てずにそっと室内に入る。物陰から2つの影が、銃声が鳴り響く。僕の銃撃が早かったのか、二人の男は床に倒れこむ。おそらく即死だろう。見ると、その二人は以前の仕事で組んだことがあるダニエルとマックだった。

「もう組織の手が・・・あの家族が危ない・・・!」

銃を握り、速水もこみちみたいな顔の僕は走り出した。

幸い、彼の携帯番号は事前に調べてあったので連絡を取るのは簡単だった。港の倉庫で一家と合流し、今後の対策を練った。

「組織は、グレートチュパカブラはあなたたち一家の命を狙っている。もちろん、命令に背いた俺の命もな」

「私はどうなってもいい、妻と娘の命、そしてあなたの命だけでも助ける方法はないんですか。私の命で済むならそれでいいんです」

「俺の命のことまで考えてくれるのか・・・アンタ、優しいな・・・」

「私、組織のボスのところに、グレートチュパカブラのところにいってきます。私の命で助かるなら・・・」

「まちな!アンタが行くことはない。アンタは妻や子供のために生きるんだ。俺が、俺がグレートチュパカブラを殺る!」

「とにかく今日はもう遅いです。幸いこの倉庫なら組織に見つかることもない。夜が明けてから考えましょう」

彼は震える妻と娘を抱きかかえるようにして積荷にもたれかかり眠っていた。

「パパ、遊園地は?あの速水もこみちみたいな顔したお兄ちゃんも一緒にいくの?」

状況が把握できていない娘が言う。

「ああ、全てが終わったら皆で行こう。あの速水もこみちみたいな顔したお兄ちゃんも一緒にな」

彼は娘をなだめ、なんとか眠りにつかせた。追っ手が来ないか窓から周囲を警戒していた僕も、いつしか眠りについていた。


朝日がまぶしい。窓からこぼれてくる眩い朝日が浮遊する埃を鮮明に映し出す。ふと視線を移すと、いるはずの場所にヤツの姿がない。妻と娘を残し、忽然と姿を消したのだ。

「あいつ!一人で決着をつけようとグレートチュパカブラのところに!」

残された妻と娘に、絶対にここを動くなと言い聞かせ、僕は速水もこみちみたいな顔をしてグレートチュパカブラのいる組織本部へと走った。裏の仕事の報告で何度も足を運んだことがある組織本部。けれども一度たりともグレートチュパカブラに会ったことはなく、その顔すら知らなかった。それほど僕とグレートチュパカブラとの地位の差は歴然だった。

「以前の俺だったらグレートチュパカブラに逆らうなんて考えられなかった。それが今は赤の他人の家族を、ヤツを救うため逆らっている。どうしちゃったんだろうな、俺は。この爆発しそうな気持ち、なんなんだこれは、イライラする」

組織本部に侵入するのは簡単だった。裏社会でならした身のこなし、瞬く間にモヒカンの構成員達をなぎ倒し、遂にグレートチュパカブラの部屋までたどり着いた。

「そこまでだ!グレートチュパカブラ!」

勢いよくドアを開けると、そこには誰の姿もなかった。ただ一つ、写真の場所で待っていると書き添えられたメモと写真が机の上に置いてあるだけだった。

「この写真・・・どこだ・・・?」

写真はどこかの遊園地のような風景だったが、僕にはその場所がどこなのか分からなかった。けろどもその写真を見た瞬間、また頭に割れるよな痛みが走った。

「俺は・・・・この場所を知っている・・・?」

走った。記憶の断片の中にある場所に向かって、僕は速水もこみちみたいな顔をして走った。僕はこの写真の場所を知っている、そして、無意識に忘れようとしていた記憶も知っている。僕はこの場所にいかなければならない。

辿りついた場所は、今にも潰れそうな遊園地だった。営業も終わったようで、周囲に人影は全くない。何の躊躇もなく柵を乗り越えると周囲を警戒しながら速水もこみちみたいな顔をして園内を歩いた。

真っ暗な園内。昼間は楽しそうな場所だろうに、日が落ちるとすっかり不気味だ。

「この景色、俺は知っている」

全ての風景がどこかで見たような景色だった。

「・・・あの日、母さんは、戻ってくることはなかった・・・観覧車の列に並んで・・・」

その瞬間だった。

パーーーン

静かな園内に銃声が鳴り響いた。

急いで銃声のほうへと向かうと、そこには横たわる人影ともう一つの人影があった。

「オッサン!」

急いで倒れているほうの人影に駆け寄る。速水もこみちみたいな顔して。

倒れていたのは、あの彼だった。胸を撃ち抜かれ、まだ息があるものの致命傷であることは一瞬で分かった。

「pato、ヤツがグレートチュパカブラだ。私にはダメだったよ。妻も娘も守れなかった。もちろん君も。すまない・・・。妻と娘に伝えてくれ、遊園地にいけなくて・・・」

「喋るな!伝えたいことは自分で伝えるんだ!絶対に死なせはしない!早く医者に!」

「フフフ、ダメよ。その男はインサイダー取引の証人、家族ごと消してしまうの。もちろん、組織に逆らったあなた、patoもね」

暗闇に浮かび上がるグレートチュパカブラの姿。その姿は、ジェニファーだった。そう、一緒に彼を殺しに行った時の相棒、ジェニファーだったのだ。

「ジェニファー!貴様がグレートチュパカブラだったのか!そんな、まさか・・・」

「組織としては、こんなチンケなインサイダー取引はどうでもよかったの。これはアナタに対するテストだったの。組織の幹部へと昇格するあなたの資質を見るテスト。それに私がじきじきに出向いたのよ。アナタが組織を裏切らないか、あなたは過去のトラウマに勝てるのか、それを見極めるためにね」

「過去のトラウマ・・・?」

「アナタはこの遊園地に捨てられていた。観覧車の列に並び、ここで待っていなさいと言ったまま母親は消え、戻ることはなかった。ずっとずっと、アナタは手を握り戻らぬ母の帰りを待った。ずっとね」

「どうしてお前がそれを!」

「組織の力をなめないことね。そしてアナタは孤児院に送られ、痛みも愛も知らない冷酷な男に育った。それは組織にとってうってつけだった、どんな仕事でも冷酷に遂行してくれるからね。でも、それは弱点でもある。遊園地が、暖かい家族が、小さな子供が、アナタのトラウマを引き起こし、痛みや愛を思い出してしまったら・・・それは組織への重大な背任行為に繋がるわ」

「き、貴様に俺の何が分かる!」

僕は速水もこみち銃を構えグレートチュパカブラを狙った。

「どうやら試験は不合格。あなたは思い出してしまった。守りたかった彼を殺されて痛い?彼ら家族を愛していたの?憎い?私を殺したい?どういう感情なの?」

速水もこみちは銃を構える。しかし撃てなかった。もはやもう僕は昔の僕ではなくなっていたのだ。何のためらいもなく引き金を引けた頃とは違う。この引き金が引き起こす多くの悲しみや痛みを想像してしまうのだ。

「どうした?撃てないの?撃てないなら今から私がアナタを撃つわ」

その瞬間だった。

パーン

また、静かな園内に銃声が鳴り響いた。しかし、僕は撃っていない。撃たれてもいない。しかし、グレートチュパカブラは心臓を撃ち抜かれ、静かにその場に倒れこんだ。

「君は彼女を撃っちゃいけない、そんな気がしたんだ」

そこには虫の息だった彼が、妻や娘そして僕の命まで守ろうとした彼が最後の力を振り絞り引き金を引いたのだ。

「ありがとう、pato君。これで安心して逝けるよ。娘と妻をよろしく頼む」

そう言うと彼はガクッと崩れ落ち、速水もこみちみたいな顔をした僕の手の中で永遠の眠りについた。

吐血するグレートチュパカブラ。僕は彼女も介抱しようと駆け寄ったのだが、彼女は「ありがとう」と言い残すとそのまま逝ってしまった。うっすらと涙を浮かべながら。

銃声を聞きつけ、多数のパトカーが近づいてくる。コレで終わりだ。何もかも終わりだ。たった一人残された園内で僕は立ち尽くした。

数日後。

組織の力で今回の事件のほとんどが隠匿され、僕も無罪放免で釈放された。警察官の話によると、グレートチュパカブラは身元を証明するもののも何も持ってなく、1枚の色褪せた写真を持っているだけだったそうだ。

彼女の最後の「ありがとう」はなんだったのだろう。あの涙の意味はなんだったのだろう。そう考えると不思議なことだらけだった。あの組織が、僕一人のためにここまで大掛かりなテストをするだろうか。それもボスであるグレートチュパカブラが出てきてまで。

警察署を出ると、あの妻と娘が僕のことを待っていた。どうやら警察に保護され、さっきまで事情聴取が続いていたらしい。奥さんは深々と頭を下げていた。娘のほうは、僕を見つけると駆け寄ってきてこう言った。

「ねえ、速水もこみちみたいな顔のお兄ちゃん、パパと遊園地に行く約束は?花江はずっと待ってるんだよ!」

「パパはお仕事が忙しいみたいだよ、速水もこみちみたいな顔したお兄ちゃんと二人で行こうか?」

「でもね、花江が連れてきたハムスターのモリゾーが動かなくなっちゃったの。冷たくなって動かなくなっちゃったの。心配だから花江いけないかも・・・」

「ああ、モリゾーはね、きっとお父さんのお手伝いにいったんだよ。だから土に埋めてあげよう。そうすればきっとモリゾーも幸せだから。それから遊園地に行こう」

「うん!」

速水もこみちみたいな顔をした僕は、花江の手をとり遊園地に向かう。あの時、母を待って観覧車の列に並んでいた時、僕はこうやって誰の手を握って待っていたのだろうか。警察官に見せられたグレートチュパカブラの唯一の所持品だった色褪せた写真。そこには姉弟だろうか、観覧車の前で楽しそうに笑う二人の子供が写っていた。男の子の方は速水もこみちみたいな笑顔で楽しそうに笑いながら。


とまあ、妄想が長くなりすぎて何の話をしていたのかサッパリ忘れたのですが、そうそう、孤児院でしたね、孤児院。

つまり、常にこういった妄想をしている僕にとって孤児院は物語のスタートとなる重要な場所なのです。そして、この妄想を本気でカッコイイと思っている僕にとって外してはならない重要な設定、それが孤児院なのです。

特にその勘違いっぷりがすごくて手がつけられなかった高校生当時は酷いもので、愛を知らずに育ったとかそんな設定に本気で心酔していた。だから酷いもので、普通の家庭に生まれて普通の家庭に育ったのに、友人には「孤児院育ちだ」とか本気で言ってた。特に女子に言ってた。モテなかった。

しかも、それを言うたびに近所に住むクラスメイトから「うそつけ、昨日、お前の親父パンツいっちょで釣竿もって歩いてたぞ、変質者かと思った」とか暴露される始末。「あれは育ての親だから」と否定すると、「顔、そっくりじゃねえか」と逃げ場のない追及を受ける始末。

結局ね、思うんですよ、確かに人それぞれ、カッコイイと思う基準は違います。たまたま僕は狂おしいことに「孤児院育ち」がカッコイイと思ってしまい、アホなことを言い出したのですが、それは大きく失礼な話ですし、なによりここまで育ててくれた親に対する冒涜に他ならないのです。

今日も普通に生きれることに感謝し、お父さん、あんたちょっと狂ってるけど育ててくれてありがとう、と心の中で思いながら、僕は退屈な日常という幸せを生き抜いているのです。

「ありがとう、親父、もう孤児院出身がいいなんて言わないよ」

そう感謝しつつ過ごしていると、タイミングが悪いことに携帯電話に親父からの着信が。出てみると、

「大変だ!メデューサが現れた!石にされるうううううううう、たすけてくれええええええええ!ブツッ」

と、こちらが何か言う前に熱演されて切れてしまいました。ウチの親父は僕をなんとか実家に帰省させようと、こういう手を使ってきます。この前は猫娘が出たって言ってました。

えー、先ほどはちょっと感謝しましたが、やはり僕は孤児院出身がいいです。だいたい、あんな顔した親父と速水もこみちみたいな顔した僕が親子なわけない。全然似てないもの。