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ストロマトライトと自己治癒・自己増殖コンクリート

ストロマトライトとは、シアノバクテリアが光合成の休止時に分泌する粘液と細胞外に産出する炭酸カルシウムによって、海水中に浮遊する砂などの粒子を結合させて造るドーム状の石である。

 

シアノバクテリアは、先カンブリア時代前期に地球上に出現し、光合成による酸素放出という、当時の嫌気性生物にとっては破局的な環境破壊を行った張本人である。もっとも、その環境破壊の結果として酸素呼吸をする我々のような生物が地表で生きていけるようになったわけだが。

 

ストロマトライトの化石は古くから知られていたが、オーストラリアのシャーク・ベイで現生のストロマトライトが発見され、その理解が飛躍的に高まったそうだ。

 

 

豊橋市自然史博物館の「ストロマトライトの海」と題したコーナー 。

 

 

以前紹介した小型化石第一標本箱の上段。

 

 

その一画にあるUSAユタ州産のストロマイト化石。古第三紀始新世。

 

 

こちらはUSAワイオミング州産のストロマトライト化石。これも古第三紀始新世。

 

 

モロッコ産のドーム状ストロマイト化石。

 

 

ストロマイトの特徴である同心円状の縞模様が確認できる。

 

モロッコには、エルフード、ケムケムなど白亜紀のストロマイトを産出する産地がいくつかあるようだ。

 

 

さて、近年、このようなバクテリアの作用を利用して、亀裂を自己修復して内部の鉄筋の腐食を抑制する自己治癒コンクリートや、破損部の自己修復のみならず材料を与えれば自己増殖する「生きたコンクリート」が開発されている。

 

例えば、オランダのデルフト工科大学で開発され、會澤高圧コンクリートが技術導入した自己治癒コンクリートはバシラス族バクテリアの一種である耐アルカリ性・好気性芽胞形成菌を使っている。まず、休眠させた芽胞形成菌と餌になる乳酸カルシウムを封入したマイクロカプセルをコンクリートに混ぜ込んで固める。マイクロカプセルはコンクリートが固まった頃には壊れるようになっている。その後、芽胞形成菌は眠り続けるが、コンクリートに亀裂ができて水と酸素が供給されると目を覚まし、餌を食べて炭酸カルシウムを生成し亀裂を修復する。修復が完了して水と酸素の供給が断たれると、芽胞形成菌は再び眠りにつくという仕組みだ。

 

一方、米コロラド大学の研究チームが開発した「生きたコンクリート」は砂やハイドロゲルを主体とした材料にシアノバクテリアを混入して作られる、まさに人工のストロマトライトだ。作製された「生きたコンクリート」の写真を見ると、上に紹介したモロッコ産のストロマトライトにそっくりの質感を持っている。

 

以前紹介したバクテリアによる地盤改良技術と言い 、古生物学の話題がいきなり工学技術の最前線にリンクする。面白い分野だ。