水精オンディーヌ
ヨーロッパに伝わる水の精について。
吉原幸子の詩「オンディーヌ」について書いた旧WEB日記(2007-05-01)を基にしつつ、情報を整理・追加して再構成する。ちなみに、オンディーヌ(Ondine)は仏語で、独語ではウンディーネ(Undine)だそうだ。
水の精としては、オンディーヌの他にもライン川のローレライ(Loreley)やギリシャ神話に登場するナイアード(Naiade)など様々な伝承があり、文学、音楽、美術など種々の芸術の題材となっている。
居間の階段型オープンラックに入れた陶器製のフラワーベース。
ホタテガイの貝殻を支えているのは海の水精かな。
ラリック社の「ナイアード・ピントレイ」。
ルネ・ラリックはこのようなナイアードのモチーフが気に入っていたそうだ。
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吉原幸子(よしはら・さちこ)
『現代詩文庫56 吉原幸子詩集』(思潮社, 1973.9.1)より、彼女の代表作「オンディーヌ」の第Iパートの最初の二連と最終(第VIII)パートの第一連を引用する。
「オンディーヌ」 吉原幸子 (抄)
〈 I 〉
水
わたしのなかにいつも流れるつめたいあなた
純粋とはこの世でひとつの病気です
愛を併発してそれは重くなる
だから
あなたはもうひとりのあなたを
病気のオンディーヌをさがせばよかった
〈 VIII 〉
わたしのなかにしか棲まなかった
わたしの病気
オンディーヌ
遠い森かげを いつまでも
ひそやかに
せせらぎにまじって 月よりも白い
あなたの 思ひつめたはだしの
足おとがする
この詩の設定は、フランスの劇作家ジャン・ジロドゥの戯曲『オンディーヌ』に基づいている。もしかするとこの詩は彼女自身ののっぴきならない経験の最中に、この戯曲が触媒となって生まれたものかもしれない。
戯曲『オンディーヌ』は、フリードリヒ・フケー(フーケ)の小説『ウンディーネ』の筋書きをベースに、登場人物の名前をはじめ独自のアレンジを加えたもの。水の精霊オンディーヌと人間の騎士ハンスとの悲恋に、王の養女でありハンスの婚約者であるベルタとの関係が加わる(彼女はオンディーヌの養父母の実の娘だったが、生後半年の時にさらわれて行方不明になっていた)。
吉原幸子の「オンディーヌ」はI~VIIIまでの8パートから成っており、各パートで話者(作者自身、オンディーヌ、ハンス、ベルタ)が交代する。上に引いた第Iパートと、第VIIIパートは共に作者自身の語りになっている。とは言え、他の話者自体、吉原幸子が憑依したキャラクターと言える。
これは私の極個人的な感想だが、この詩の語り口から「いかにも都会的な現代女性」然とした作者の像が浮かび上がる。また、詩句の中に、強く惹かれる部分と、どうにも歯車が嚙み合わないような違和感のある部分が共存する。この辺りの感覚は面白くはあるが、今はまだ言語化することは難しい。
この詩をもとに混声合唱曲が作曲された(木下牧子作曲、1990年)。女声合唱曲に編曲された版もあり、YouTubeでいくつか聴くことができる。
Youtube:
女声合唱曲「オンディーヌ」/木下牧子
冒頭の水の流れが煌めき揺らぐような旋律が印象的だ。
その他、
ラベルのピアノ曲「夜のガスパール」の冒頭曲が「オンディーヌ」と題されているが、今回、こんなピアノ曲も見つけた。
高木正勝「水の精」
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Edward Burne-Jones (British, 1833-1898)
エドワード・バーン=ジョーンズの絵画『海の深み』 について。
Edward Burne-Jones - "The Depths of the Sea"
(from Wikimedia Commons)
この絵の本質を理解するためには、女(人魚)の表情をよく見なければならない。
モニターの左側にたまたま映ったデッサン(Study of the mermaid's head for 'The Depths of the Sea')からタブローに至る過程で女の表情に加えられた愛しさと絶望の情念の強度を見ると、この画家はこんな表現も出来たのかと驚かされる。
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今回の風景写真はワルシャワのワジェンキ公園にある水上宮殿。
ヴィスワ川から水を引いた細長い池の上に造られた夏の離宮。








