映画『8番出口』は、不思議な地下通路のループをテーマに、現実と心理の迷いを描く物語です。


原作ゲームのルールに沿いながらも、映画版では主人公の“迷う男”が自らの人生の岐路や父性と向き合う姿が丁寧に描かれています。


『8番出口』は2025年8月に公開された日本映画で、川村元気監督・二宮和也主演という布陣です。


物語は地下鉄の通路に閉じ込められた主人公が、異変を見逃さず正しい出口を見つけるためのループを繰り返す—という、ミステリアスで心理的なゲーム的体験に根差しています。


映画は、主人公が現実社会で煮え切らない人生を送る姿から始まります。


地下鉄車内で、赤ん坊連れの母親が怒鳴りつけられている場面も、主人公は見て見ぬふりをしてしまいます。しかし、人生の転機とも言える元恋人からの妊娠報告が届き、主人公は否応なく「父になる覚悟」と向き合うことになります。


そのまま地下通路の“ループ”に迷い込んだ主人公は、「異変」を見つければ引き返し、見逃せばどこか違う出口に辿り着けないという謎の空間で出口を探します。


徐々に不気味な現象や、自分自身への問い直しを重ねる中、主人公の心の動きが丁寧に表現されていきます。



感想

映画『8番出口』を観て、とても独特な世界観に引き込まれました。地下鉄の通路を歩き続けるだけのシンプルな舞台設定ですが、心理的な緊張感と不安が終始漂っていて、観る者の心を常に揺さぶります。


最初は何度も同じ景色やおじさんとのすれ違いを繰り返すシーンが続きますが、その中で主人公の微妙な心の変化が少しずつ積み重なっていく様子が印象的でした。


また、主人公が現実世界で抱えている悩みや煮え切らない姿が、通路の迷宮とリンクしているように感じました。


特に、彼女から妊娠を告げられてもすぐに向き合えず、後回しにしてしまう心情は、多くの人が抱える人生の迷いや逃避に共通する部分だと思います。


映画のルールである「異変を見つければ引き返す」という設定は、単なる謎解きではなく、主人公の心の“覚悟”や“決断”に関わる重要なテーマだと感じます。


ラストシーンで、以前なら放置していた母子に対して、主人公が勇気を振り絞って介入しようとする場面は、彼が「8番出口」を本当に脱出し、内面的な成長を果たしたことを示していると思います。


全体を通して、異世界の迷宮が現実世界の葛藤を映し出す演出が秀逸ですし、ミステリーとヒューマンドラマが融合した物語構造には深みを感じました。


特に二宮和也さんの演技は、繊細な揺れ動く感情や葛藤を実にリアルに表現していて、物語の核心に迫る力強さがありました。


さらに、通路で出会うおじさんや少年など脇役の存在も物語に奥行きを与えており、それぞれに人生の迷いや傷があることが仄めかされます。その重層性が物語に深い余韻を残していました。


『8番出口』は、単なるスリラーや謎解き映画ではありません。心の“出口”を探し続ける現代人の孤独や再生への願いがこめられていて、観る人の人生観にも問いかける作品だと思います。


観終えてから何度も自分と現実を重ね合わせて考えたくなる、奥行きのある映画でした。






ららぽーと横浜に8番出口のパネルが出現!

 


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