映画『チャイルド・プレイ』は、1988年に公開されたアメリカのホラー映画で、今やホラー映画界の金字塔となったシリーズの第1作です。


物語はシカゴを舞台に、連続殺人鬼チャールズ・リー・レイが警察に追い詰められ、逃げ込んだおもちゃ屋で瀕死の重傷を負ったことから始まります。


死を前にしたレイは、習得していたブードゥー教の秘術を使い、自分の魂を近くにあった「グッドガイ人形」に移します。こうして「チャッキー」という、見た目は無邪気な子供向け人形に凶悪な殺人鬼の魂が宿ることになります。


数日後、主人公アンディ少年は母親カレンから誕生日プレゼントとしてグッドガイ人形を手に入れます。しかし、その日からアンディや母親の周辺で不可解な事件や死が相次いで発生。アンディはチャッキーこそがその犯人だと訴えますが、大人たちは子どもの妄想程度にしか取り合いません。


それでも事件がエスカレートし、やがてカレンとアンディは、チャッキーがただの人形でないことに気づき、命をかけた戦いに巻き込まれていきます。


映画自体は、オカルト色の強い純粋なホラー作品として始まりますが、続編ではブラックユーモアや風刺コメディの要素が強まり、シリーズ累計で8本の映画やリメイク、テレビシリーズにまで発展しています。



感想

ホラー映画好きにとって「チャイルド・プレイ」のチャッキーは、一度見たら忘れられない存在感を放っています。子どもの見た目の人形が、突如として狂気に満ちた顔に変化し、殺人鬼として動き回る、このギャップがたまらなく怖いんですよね。


観ていてまず驚かされるのは、「人形が本気で怖い」という点。普通、子ども向けのマスコット的なデザインって安心感があるものですけど、チャッキーはそれを逆手に取っています。


序盤こそ、グッドガイ人形の陽気なCMや、アンディの無邪気な喜びで和やかな雰囲気が続くのに、不穏な出来事がジワジワと忍び寄ってくる。その不安が、観ている側にどんどん伝染してくる感覚が絶妙です。


とくにポイントになるのは、「大人が信じてくれない」という恐怖。アンディは必死でチャッキーの正体を訴えるけど、周囲にまともに取り合ってもらえない孤立感、その無力さが物語の緊張感をさらに高めています。


その一方で、母の強さも印象的で、カレンの孤独な戦いぶりには思わず応援したくなります。母と子の絆も物語の中で重要な位置づけになっています。


チャッキーの存在感も秀逸。単なる殺人人形じゃなく、「合理的に狙いを定めて襲いかかる」頭脳があり、無駄にしゃべるところがまた怖い。恐怖もありつつ、どこかブラックユーモア的な愛嬌も持ち合わせていて、その絶妙なバランスはホラー映画としてかなり完成度が高いです。


特殊効果や人形操作も1980年代の作品としてはかなりリアルで、今観てもチャッキーの動きや表情にはゾクッとさせられます。


映像面でも「人形なのに血が流れる」といった演出は当時の観客にとって新鮮かつ衝撃的だったでしょう。


こうした古典的なホラーの怖さと、シリーズを通じて進化していくブラックジョークや風刺のテイストが、今も多くのファンを引きつけて離さない理由になっています。続編やリメイク、ドラマ版もありますが、やっぱり原点となる1作目の「背筋が寒くなる純粋な恐怖」は特別です。


ホラーやスプラッター映画の初心者にも意外と観やすい一方、ジャンル好きには「実はここが原点だった」と改めて感動できる作品なので、これから観る、久しぶりに観直すという方にも自信を持っておすすめできます。