映画『霊幻道士3 キョンシーの七不思議』は、香港映画の人気シリーズ「霊幻道士」の第3作目として1987年に公開されました。


舞台は19世紀の中国で、キョンシー映画らしい独特の闇夜や奇妙な雰囲気がたっぷり漂っています。


本作の監督はリッキー・ラウ、主演は「霊幻道士」シリーズの顔ともいえるラム・チェンインです。


本作では、インチキな悪霊退治で稼いでいる半人前道士ミン(リチャード・ン)が主人公として登場します。彼の相棒は幽霊のダイボウとサイボウ。一見コミカルな小悪党ですが、ある日、本物の悪霊に遭遇してしまうことからストーリーが動き始めます。


村では馬泥棒団や女妖術師率いる軍団が暗躍し、村人たちが困り果てているところへ、本物の道士リン(ラム・チェンイン)が現れ、壮絶なバトルへと発展します。


このシリーズの魅力である法術バトルはさらに磨きがかかり、銭剣や壺を使った霊の封印など、盛りだくさんの派手なアクションが展開。前作同様にコメディ要素や身体を張ったギャグも随所に盛り込まれています。


キョンシーの兄弟は、幽霊のような新しいキャラクター造形で登場する一方、グロテスクな描写やスプラッター的な演出も追加されており、恐怖と笑いのバランスがさらに独特になった印象です。



感想

まず、今作の空気感はまさに「懐かしい香港キョンシー映画そのもの」という感じです。始まりから不気味な静けさが漂っていて、怪しい音楽や映像の雰囲気だけでもしっかりと世界観に引き込まれてしまいました。


自分が子供のころに怖すぎて最後まで観られなかった記憶がよみがえるほどのインパクトです不安


今回はとにかくグロ描写が目立っていて、血と霊、強烈な悪霊バトルが前面に出ています。


正直、前作よりも「怖い」というより「気持ち悪い」シーンが多く、人によっては苦手かもしれません。


一方で、キョンシー兄弟のキャラは完全に幽霊っぽさ全開で、従来のキョンシー映画のイメージとはちょっと違います。バリエーションが広がったのは嬉しいですが、個人的には「昔ながらのキョンシーらしさ」ももう少し残してほしかったかな…という気もします。


道士リンのキャラは本作で妙に冷静かつ厳しい師匠として描かれていて、弟子が倒されてもまったく悲しまず、冷酷な態度が印象的でした。

「そう来るか!」と心の中でツッコミをいれてしまいましたが、彼の法術使いぶりにはさすがと唸りました。


銭剣がライトセーバーみたいに光ったり、壺で悪霊を吸い込んだり、まるで魔法使いのような面白い技の連続で、やっぱり霊幻道士シリーズはこうじゃなきゃ!と嬉しくなります。


でも、ギャグパートもしっかり健在。主人公ミンのインチキ悪霊退治はお約束の笑いを呼び、逃げ回る様子や村の自警団とのドタバタも、思わず「くだらないけど好き」と思わず笑ってしまうほどです爆笑


今回のラスボスである女妖術師とのラストバトルは、シリーズ随一の盛り上がり。大筆を使った撃退シーンなんて「今度はそう来たか!」と心躍ります。


この映画の魅力はやっぱり「香港コメディ×ホラー×カンフー」という独自の混沌で、アクションを求める人にも、キョンシーファンにも、ギャグ好きにもみんな何かしら刺さるものがあると感じます。


上映時間も90分台と、テンポも良いですし、シリーズファンも初見の方も、誰でも気楽に入りやすいところもポイントですね。


ややグロテスクだけど、昔ながらのコミカルな味わいもしっかりあって、「霊幻道士」の醍醐味をこれでもかと盛り込んだ快作です。古き良き香港映画の魅力を味わいたい人にはぜひお勧めしたい一本でした。