『ラストサマー』(原題:I Know What You Did Last Summer)は1997年公開のアメリカ製作のホラー・スリラー映画です。


脚本は『スクリーム』で知られるケヴィン・ウィリアムソン。原作はロイス・ダンカンの同名小説であり、監督のジム・ギレスピーにとって劇映画デビュー作となっています。


物語の舞台はアメリカのとある沿岸の町。主人公はジュリーたち高校生4人組。


彼らは独立記念日の夜、車で人をひいてしまい、その罪を隠すため遺体を海に沈め、「この秘密は絶対誰にも話さない」と誓います。


しかし、その一年後に「去年の夏、何をしたか知っているぞ」と書かれた不気味な手紙が届き、彼らの日常が崩れ去っていきます。


以降、何者かによって次々と恐怖が襲いかかり、若者たちは自らの過去と対峙することになるのです。


“かぎ爪の男”の正体や動機、四人の葛藤や罪悪感、そして極限状態での友情と恋愛などが絶妙に絡み合い、スピード感ある展開で一気にクライマックスへと突き進みます。


本作は全米で大ヒットし、シリーズ化もされました。



感想

『ラストサマー』をはじめて観たときのこと、いまだに鮮烈に覚えています。


90年代後半の「青春×ホラー」といえばやっぱりこれ。


実際「青春映画」と「スラッシャーホラー」のいいとこ取りって感じで、若者たちのキラキラ(というよりはドロドロ)した人間関係と罪悪感、不安感がうまく描かれているんですよね。


冒頭の「事故」のシーンは意外と衝撃的で、「隠そう」と決断する彼らの未熟さに共感しつつ、「絶対バレる!」とツッコまずにはいられない。


けれど人間、いざとなるとこんな行動に出てしまうのかも、なんてリアルな恐怖も感じます。 


一年後、脅迫めいた手紙が届きだし、説明のつかない出来事が連続しはじめてからの流れは、正統派ホラーの醍醐味。


誰を信じていいかわからない緊張感。人と人との間に生まれる疑心暗鬼。


ジュリーたちの心がどんどん追い詰められていく様子には、どこか自分の学生時代の失敗や後悔も重なる気がして、自然に自分ごととして観てしまいました。


何より印象的なのが“かぎ爪の男”のヴィジュアルと存在感。


殺人鬼なのに超能力じみた恐ろしさではなく、「もしかしたら本当にこんな人がいるかも」と思わせるリアルな空気が漂っていて、妙に背筋が寒くなります。


派手なゴア表現ではなく、ひたすらじわじわと恐怖が忍び寄る感じ。


寡黙に追い詰めてくる敵のタイプ、90年代ホラーでは珍しかったかもしれません。


ストーリー展開も意外とスピーディでテンポがよく、B級ど真ん中っぽいノリと、どこか懐かしい学園ドラマのバランスが絶妙。


ジェニファー・ラブ・ヒューイット演じるジュリーは、事件で止まったままの心を抱えたヒロインとしてとても魅力的。


今見ても「青春ホラーのアイコン」というべき存在感ですし、サラ・ミシェル・ゲラーも本作の成功で一気にスターの仲間入りしたのも納得です。


細部まで見ると「ここは無理があるな」とか「展開が強引じゃないか?」みたいなツッコミどころももちろんあります。


でも、そこも含めて非常に“90年代らしい”味わい。思春期特有のドラマ、仲間を守るための葛藤、取り返しのつかない過ちと、それを抱えて生きるしかないもどかしさ――ちょっと切ないテーマも感じさせてくれる作品です。


また、終盤のクレーンを使ったバトルは、「え、そんなに都合よく助かる!?」というツッコミもありつつ、やっぱり盛り上がっちゃう。


ラストで「また同じような脅迫が…」と安直に“継続”を匂わせるパターンは、現代の目で見ればベタ過ぎるけど当時は新鮮でドキドキしたものです。


本作がヒットしたからこそ、“ティーンホラー”というジャンルが一気に盛り上がり、『スクリーム』や続編たちも次々に公開されていきました。


ホラーとしてだけでなく、その時代の熱気や空気感までも体感できる――そういう意味で、今観ても「古さ」ではなく「懐かしさ」として楽しめる1本だと思います。


ホラー入門としても、キャスト目当てで観るのも、また人間の葛藤や罪に興味がある人にもおすすめです。


2025年8月現在

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