ネタバレあり
映画『13日の金曜日 PART2』は、1981年に公開されたアメリカのホラー映画で、前作「13日の金曜日」の続編にあたります。
本作の舞台は、前作のクリスタル湖連続殺人事件から5年後です。
事件の舞台となったクリスタル湖で、新たにキャンプ指導員の訓練所が開設され、若者たちが集まります。参加者の一人であるリーダーのポールとその恋人ジニーを中心に、10名前後の若者たちが登場します。
前作の生き残りであるアリスも序盤に登場しますが、再びジェイソン・ボーヒーズによって命を奪われてしまいます。
伝説と化したジェイソンと母との物語は若者たちの間で噂話として語られていましたが、時を同じくして、再び恐ろしい殺人事件が始まります。
ジェイソンは森の奥の、母親のミイラ化した頭部を祭壇のように祀った小屋を根城にしており、湖畔の若者たちを次々と襲います。
事件は夜を迎えるたびに激しさを増し、若者たちは各自の事情で離脱や行動を分けられる中、ジェイソンの殺意に晒されていきます。
クライマックスでは、ジニーがジェイソンの母親になりすますことで彼を一時的に惑わせますが、最終的に再び襲われ、助けに入ったポールとともに命からがら逃れます。
しかし、ラストでは“安全”を取り戻したかに見えた瞬間、再度ジェイソンによる急襲があるという衝撃的な余韻を残して物語は幕を閉じます。
本作でのジェイソンは、後の作品で見られるホッケーマスクではなく、白い麻袋を頭に被ったいでたちで登場します。
感想
まず、本作最大の特徴は、前作から本格的に“ジェイソン・ボーヒーズ”というキャラクターがシリーズの主人公的存在として描かれるようになった点です。
シリーズ第1作では母親による連続殺人が描かれ、ジェイソン自身は伝説や恐怖の象徴として語られる存在でしたが、本作からジェイソンが実体となり、観客の前に本格的に立ち現れます。
その造形はまだ洗練されていないものの、生身で執拗に襲いかかる生々しさがホラー映画ならではの緊張感を高めていました。
ストーリー展開は前作と同様、若者たちが一人また一人と不可解かつ衝撃的な最期を迎えていきます。
その過程で、登場人物たちは、それぞれに個性的な魅力や短いながらも存在感を発揮する場面があり、単なる“肉付け”要員とはひと味違った印象を受けました。
車椅子の青年や動物好きの少女、好奇心旺盛なカップルなど、多様なタイプの若者たちが、それぞれ異なるシチュエーションで命を落とす描写は、本作のバラエティやサスペンス性を支えています。
ジニーという女性キャラクターはシリーズの中でも印象的で、心理学の知識を駆使してジェイソンの動機や心情に迫ろうとする姿勢が新鮮でした。
ラストでの“母親なりすまし”の作戦には、知恵と勇気の両面が表れていて、単なる犠牲者的描写に留まらない女性像の描写には好感が持てました。
ジェイソンとの直接対決は緊張感があり、このシリーズの中でも特に印象強いクライマックスだと感じます。
なお、前作の事件の“後始末”や連続殺人事件の連鎖を演出する序盤パートは、全体の尺をやや圧迫してしまっている面もあります。
ただし、あえて前作の出来事を再確認させることで、シリーズを通した恐怖の普遍性やジェイソン神話の強化につながっているとも受け取れました。
ジェイソンのビジュアル面では、今作では特徴的なホッケーマスクは未登場で、麻袋を頭部に被った未完成な姿です。その不気味さ、不安定さがリアルな恐怖を生んでいたと思います。
逆に、この泥臭いビジュアルだからこそ、ジェイソンという怪物が後に「進化」していく過程への期待感も刺激されました。
殺害シーンの残酷さや多彩さは、スプラッターホラーとしての見どころでもあります。
ただし、現代の感覚から見るとグロテスクさよりも演出上の工夫や映像表現の“懐かしさ”がやや目立つかもしれません。とはいえ、すべての犠牲シーンで“どこから、どんなふうに襲われるのか”という緊迫感やショック効果がしっかり作られており、観る者を飽きさせませんでした。
また、ラストの“どんでん返し”はシリーズのお約束にもなっており、一度ホッとさせてから再び深い恐怖へ引きずり込む演出は、王道でありながら何度観てもそのインパクトは健在です。
本作では犬が無事に帰ってくることで視聴者を安心させ、そこから矢継ぎ早のジェイソン襲来が効果的に作用していました。
全体として、『13日の金曜日 PART2』はスプラッター映画およびサバイバルホラーのフォーマットを確立し、以降のジェイソン映画の原型をしっかりと打ち立てた重要な一作だと感じます。
過不足ない恐怖演出、多彩なキャラクター、そしてラストの衝撃、ホラー映画好きのみならず、サスペンス・スリラーのファンにも一度は鑑賞してほしい作品です。