お久しぶりです。M&A会計士の澤村です。
M&Aで発生するのれんの会計処理に関して、償却不要とする案が検討されている旨日経に載って界隈で話題となっているので、たまにはM&A会計士らしく取り上げてみようかと思います。
そもそも「のれん」とは、という話からさせていただくと、買収対価と買収対象会社の純資産の差額のことを言います(100%取得の場合)。簡単に言えば、対象会社が持っている資産の価値よりも、高い値段で買えば、その上乗せした分のことです。
こののれんは、日本の会計基準では20年以内の効果のおよぶ期間で償却することが求められています。例えばのれんが100億円で、償却期間が10年だとしたら100÷10=10億円を毎年費用として計上してねという話です。
で、今回話題になっているのが、この償却するの無しにしない?という議論でして、根拠としてはこの処理が日本だけの話で、国際会計基準では償却不要とされているためです。
結構昔から何度も議論されているテーマなので、正直何をいまさら感があるネタなのですが、私見を改めて書こうかと思います。
M&A業界の人は企業が積極的にM&Aを実施するにあたって足かせになっているので、償却不要にすべきだ!という意見の人が多いのですが、M&A会計士としては償却不要にするのは反対です。
何でかっていうと、この償却がないと、買収価格に歯止めがなくなっちゃうことが大きいからです。
償却しなければ、M&Aをすればするほど、増益になっていくので、買収対価がいくらであろうが、あたかも企業グループの利益が成長しているように錯覚するんですよね。
これって、凄く危険だと思うんです。市場の強い成長プレッシャーにさらされる経営者としては、M&Aですぐに利益成長するならば、打ち出の小槌みたいにつかっちゃうリスクがあるんです。
具体的に説明しますと
当期利益100億円のA社があったとしましょう。この会社が、当期利益10億円のB社をM&Aでのれんは120億円を付けて買収したとします。
のれんの償却が例えば10年で必要とされた場合、A社グループ全体の利益(いわゆる連結利益)は、A社の100億円+B社の10億円-のれん償却12億円(120÷10年)での98億円となります。のれんの償却が足を引っ張って、全体では減益になってしまいましたね。これをいわゆる「のれん負け」といいます。
これがのれん償却不要だったとしましょう。
この場合のグループ利益はA社の100億円+B社の10億円=110億円、10%も増益になってますね。
A社経営陣としては、のれんの償却があると減益になるのに、不要とすると増益なので、のれん償却不要の方がM&Aを積極的にやりたくなるように見えますよね。
ただ、これってホントにこれがA社の株主のためになっているの?って、話です。
ちょっと、長くなりそうなので、後編はまた後日書こうかと思います。
