こんにちは、M&A会計士の澤村です。
前も似たようなこと書いてたかもしれないけれど、日本においてもDCFが一般化し、その評価にあたってのディスクレーマーも一般化した形に定まりつつあります。
評価者はその計画の妥当性は検討せず、そのまま依拠し、責任は負いませんよってパターンです。
と、いいながら、そのバリュエーションレポートを入手した取締役会は、
「その評価額は、第三者によってお墨付きを得ているんだよ」
って使い方がされています。
外から見ると、評価者と、依頼者の間の責任の押し付け合っているように見えるかもしれません。
そうした事態を生んでいる背景として、事業計画に対して責任を負うという考え方が浸透していないためじゃないでしょうか?
そもそも論として、DCFによる評価は、そのベースとなる事業計画について、計画をたてた人が
その計画についてコミットしている状況において、初めて意味があります。
事業計画なんて、まさに、鉛筆ナメナメしたら、いくらでもバラ色の計画が書けるわけで
それに基づいてDCFをやれば、いくらでも高い数字が算出できます。
それじゃ意味がないので、意味のある事業計画とするためには、事業計画責任者が
文字通り、その計画に責任を負うことが大前提にあります。
つまり、その計画が実現できなかったら、責任とって辞めますよってことです。
責任を負わすことで、非現実的な計画にならないようけん制が働き、意味のある計画となるわけです。
ですから、DCFによる第三者評価に意味を持たせるには、
事業計画については、事業計画責任者が責任を負い、それに基づく評価には、第三者が責任を負う
という構造である必要があるのですが、現実のところどうなんでしょう?
まず、この事業計画責任者って誰か?って問題があります。
買収対象の会社の社長でしょうか?計画を作ったコンサルティング会社でしょうか?
買い手から送り込まれた新社長でしょうか?
実際のところ、このあたりが曖昧になっていることが多いんですよね。
一義的には、その計画を実行する立場にある人。当然のことながら、実行する人が計画を立てるのが大前提
そして次は、その買収の最終意思決定者。会社法上で言うと、買い手の取締役会になるはずです。
ところが、計画を立てた人と実行する人が一致していないケースも多いですし
バカみたいな金額ののれん減損を出した責任をとって、取締役の誰かが辞めたって話をほとんど聞かないし、株主代表訴訟で役員が損害賠償責任を負ったっていう判例もほとんど聞かない。
DDの段階で、この事業計画を精緻に見ているかというと、会社によってかなり温度差がある。
ひどいのになると、DDで問題が出てきても時価純資産に影響するかもしれないけど、
DCFには関係ないやって感じで、DDレポートするら見ようとしないこともある。
もちろん、買い手にとって、それほど財務内容にインパクトのないサイズのディールだったら
力の入れ方に差をつけるのは、経済合理性があるので問題は少ないのでしょうが
やはり「のれん」の金額がでかくなる案件については、このあたりをもっと意識すべきだと思う。
こうした前提を理解せず、形だけDCFによる評価をしても何の意味もないわけです。
IFRS適用で、「のれん」の償却がなくなると、「のれん」への意識が下がってしまいがちですが、
規則償却でなく、いきなり減損って形になるので、逆に言うとこれまで以上に、M&Aの成否が表に出てきます。
権威ある第三者評価があるからって、それを鵜呑みにするんでなく、失敗したら責任を負うのだという意識を持った意思決定が求められます。
このあたりの考え方を整理した本としては、前にも紹介したかもしれませんが、これがオススメです
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まあ、問題になる事例は、そのあたりはわかった上での確信犯と推測されるケースが多いのですが・・・