こんにちは、M&A会計士の澤村です。
たぶん、明日以降しばらくぽっかり心に穴が開いた状態になりそうなので、頭が真っ白になる前に、のれん償却の是非シリーズを終わらせたいと思います。
最後はずっと解答を先延ばしにしていました「のれんの定期償却をやめることで、のれん負けのリスクが薄れ、M&A(買収)を選択肢として前向きに捉える企業が増えるのではないか」というコメントに対する意見を述べたいと思います。
まずM&A会計士を名乗る私のスタンスですが、現代の日本経済の課題である後継者不在の中小企業を救うために、M&Aを前向きにとらえる企業が増えることが望まれることは、激しく同意しますし、強く望んでいます。
ただ、それはいくらでもいいから、売り手の希望する価格で買ってあげればいいという話では決してなくて、上場会社であれば、経済合理性のある取引である必要があるのが大前提と考えています。
そのうえで、のれん償却不要の方がM&Aを積極的にやりたくなるようになるんじゃないかという考えに対して、私はちょっとは増えるかもしれないが、起爆剤になるほどではないと考えてます。理由は、以下の5つです。
理由1:のれん償却の話は、買い手が上場会社とかファンドのケースに限られ、中小企業お買い手の大半である非上場の会社には、上場を検討している会社以外では、関係のない話であること
理由2:日本の上場会社であっても国際会計基準や米国会計基準を採用することは可能であり、のれん償却を真剣に避けたい会社は既にそうした会計基準を採用しており、のれん償却していない。
理由3:のれん償却不要を選択してもPPAで他の無形資産が認識されて償却負担は発生するので、期待されるほどのPLインパクトはない可能性があるうえ、買い手においてPPAとか減損とかの実務負担が大きい。
理由4:ROAの観点でみると、いつまでも総資産にのれんが乗っているのは、資産効率が悪いとみなされる側面もあるので、一概に上場会社がすべてのれん償却不要を希望しているわけでもない
理由5:償却不要となっても単なる会計処理だけの話で企業価値には何の影響もないので、会計的な処理がどうであれ、戦略的に必要であればのれん負けしようが買う買い手は買う
要は、のれん償却不要となったからと言って、その理由だけをきっかけにこれまで実施していなかったM&Aを積極化するという企業は、そんなに多くはないのでは?と考えています。
つまり、そもそものれん負けの原因が高すぎる価格であるならば、そんな価格で買うべきでなくもっと交渉すべきだし、そうじゃなくて買収直後はのれん負けしているけど将来の成長を見越したものであるというならば、正々堂々と買ってのれん償却による減益を受け入れて、のれん負けしないように買収した会社の収益向上に努めればよいと考えています。
そう簡単に言うなよと、事業家の方から怒られそうですが、会計上の費用が出るからって理由だけでそのM&A諦めるのですか?って言いたいです。本気で事業を拡大したいのであれば、そんなもの気にしてる場合じゃないでしょ?
現場で、のれん負けするから買えないというのは、価格が高くてペイしないことを断るための理由としているのが大半だと思います。逆にのれん負けしなくなったから、バンバン買収しますっていう買い手の方が要注意
それよりは、のれんの償却期間を柔軟に考えることと、税務上のれんの損金算入が認められるような改正の方がM&Aの活性化につながるというのが、私の考えです。
以上で、のれん償却の是非に関する連載を終わります。
さて、今夜は眠れないぜ!