こんにちは、男児M&A会計士の澤村です。

のれんの会計処理シリーズ。皆様お待ちかね、アナハイムエレクトロクス社におけるのれんとPPAについてです。

アナハイムエレクトロニクス社(以下、アナハイム)というのは、機動戦士ガンダムに出てくる「スプーンから宇宙戦艦まで」を製造する軍産複合体です。同社は、正史、すなわち一年戦争でジオンが連邦に負けた世界線においては、史上初のモビルスーツの開発に成功し、その後ジオンを代表する主力MSとなったザクやゲルググなどの数々の名機を製造したジオニック社や、そのライバルでドムやギャンなどを製造したツィマッド社などのジオン系の企業を買収しています。

これらのジオン系企業は、一年戦争終了後、主力取引先であるジオン公国からの受注が大幅に減少したことから財政的には非常に厳しい状況に追い込まれていたものの、その高い軍事技術力から非常に多額の対価が支払われたといいます。つまり、多額の「のれん」が発生していた状況といえるので、今回はそののれんについて、のれんのもう一つの大きなテーマであるPPAを絡めて解説したいと思います。

これまで買収対価と、取得した純資産の差額を「のれん」として、説明してきましたが、実はこれは簡便的な説明でして、正確に言うと買収対価と取得した純資産の差額から、PPAで識別可能資産として認識した無形固定資産を控除したものが「のれん」になります。
要は、純資産との差額をそのまま「のれん」にするのではなく、できるだけその内訳を無形資産として識別して、その識別しきれなかった差額を「のれん」にするという考えです。識別して認識する無形資産の例としては「商標権」や「顧客リスト」、「技術・ノウハウ」などがあります。

PPAというのは、PEN PINEAPPLE APPLEの略でして、アップル社の価値は、APPLEだけでなくて、PENやPINEAPPLEにも区分して評価しすべきと、ピコ太郎が提唱した概念
なわけなく、Purchase Price Allocationの略でして、買収後に純資産との差額をこうした無形固定資産に割り当てる会計処理のことを言います。

まあ、普通M&Aの価格交渉において、具体的にこの商標権がいくらで、技術がいくらでという積み上げで計算することはほぼないので、買収後1年以内に様々な見積もりに基づいて後付けで割り当てていくことが必要となります。

このPPAは、日本の会計基準でも国際会計基準でも必要とされる会計処理ですが、のれん償却を不要とする国際会計基準を採用する企業のほうが、ガチ目に実施されている印象を持ちます。
というのも、個別に認識した無形固定資産は、数年かけて償却することが求められるので、ずっと未償却でのれんがBSに残るよりは、できるだけ無形固定資産として認識してBSから消していきたいという意向が働くともいわれています。

で、これを一年戦争後にジオン系企業を買収したアナハイムの決算であてはめますと

「商標権」は、結構価値あるかと思います。特にジオニック社の「ザク」は、MSを代表する名前ですし、後のグリプス戦役時の主力MSとなる「ハイザック」に名称が継承されていることを考えると無形資産として認識されたものかと思われます。ただ、ツィマッド社買収においては、ドムは、名称を引き継いだ機体が見受けられないことや、ギャンに関しては第二期主力MSとしてゲルググに負けたことを考えるとあまり認識されていないかもしれません。

「顧客リスト」に関しては、取引先であるジオン公国が敗れたことを考えると価値を見るのは両社とも難しいでしょうね。
「技術・ノウハウ」は、どちらも高く評価されたものかと思われます。生産効率は下がる結果となったものの、あれだけのMSやMAの試作機を短期間で多数生み出してきた自由な発想と実現力には目を見張るものがあります。ただ、少なからずの技術者がアクシズへ逃亡したことや、その事実が判明した時点で減損の議論が出てきたかもしれません。

こうした技術・ノウハウの中でも「サイコミュ技術」は、別途識別すべき無形資産かもしれません。ただ、ジオンにおいてニュータイプ研究は「フラナガン機関」が主体として行われていたため、ジオニック社等の買収対価に含まれていたのかは不明です。仮に認識されていたとしても、グリプス戦役時のサイコガンダムなど強化人間をベースにしたMSが思ったほどの戦果をあげれなかったことを考えると、その時点で減損が議論されていたかもしれません。

って、書いていくとキリがないのでお遊びはここまで。
ちなみに、ジークアクス世界線ではアナハイム社は存在しているもののジオニック社等の買収は行われていないので、これらの議論は不要となります。


さて、エヴァガンダムももうすぐ終わりですね。

おじさんたちのお祭りが終わってしまうようで、ちょっと悲しいです。

前回があんな形になってしまったので、エンド予想が大喜利状態ですが、果たしてどうなるのでしょうか?

こんにちは、M&A会計士の澤村です。

 

前回、のれん償却年数は投資回収期間でというお話をしたかと思いますが、この回収期間に非常に大きな影響を与える事項があります。それは、

 

のれん償却が、税務上損金になるか?

 

です。

 

のれん償却が税務上損金になれば、その分税金による社外流出が減るわけですから、手元に残るお金は増えるわけで、当然投資回収も早くなります。

 

結論から言うと、税務上損金になるかどうかは、M&Aの手法次第です。

 

具体的に言えば、事業譲渡や非適格組織再編の場合は、損金算入できるが、それ以外の方法、例えば株式譲渡によるM&Aでは損金算入できません。

組織再編行為(合併や、株式交換、会社分割等)の税制適格云々の議論をすると非常に長くなっちゃうので、省略し、事業譲渡と株式譲渡に限定して説明します。

 

買い手単体でみた場合の買収の仕訳は、株式譲渡の場合は、支払った対価の額だけ現預金等が減少して子会社株式が認識されるだけなのに対して、事業譲渡の場合は支払った対価の額だけ現預金等が減少したうえで、買収した資産・負債の増加を認識するとともに、純資産(資産-負債)と支払った対価との差額である「のれん」も買い手で直接認識することになります。

 

買い手単体で直接認識している「のれん」は、税務上5年で損金算入が認められているため、事業譲渡ではのれんの損金算入が可能です。

一方、株式譲渡の場合は、単体ではあくまで子会社株式を持っているだけでのれんの認識はありません。あくまで、のれんが認識されるのは連結上のみです。税務は基本的に単体で計算するので、連結上ののれん償却は、算入されません。

 

このことは、投資回収期間のみならず、のれん負けの計算にも大きく影響します。

たとえば、営業利益5億円、当期利益3億円、資産負債ゼロの事業または会社を25億円で買収(すなわちのれん25億円)したケースで考えてみましょう。

のれんの償却を5年、実効税率40%として、株式譲渡の場合と事業譲渡の場合を比較してみましょう。

 

のれん25億円を5年で償却するのですから、年間5億円の償却費となります。この償却費は営業費用として処理されるところまでは、株式譲渡も事業譲渡も同じです。つまり、取得した営業利益5億円-のれん償却5億円=ゼロとなり、M&Aの連結営業利益へのインパクトはゼロです。

 

これが当期利益ベース、すなわち税引後ベースだとどうなるでしょう?

事業譲渡の場合、のれん償却の損金算入が認められるので、実効税率40%だとすると、5億円×40%=2億円の節税効果となります。なので、取得した当期利益3億円-のれん償却5億円+のれん償却税効果2億円=ゼロとなり、M&Aの当期利益へのインパクトはゼロで済みます。回収期間は、当期利益が丸々キャッシュインフローと仮定すると、のれん償却自体はキャッシュアウトがないので、25億円÷(取得した当期利益3億円+のれん節税効果2億円)=5年となります。

 

ところが、株式譲渡の場合、のれん償却の損金算入が認められません。なので、取得した当期利益3億円-のれん償却5億円=△2億円となり、完全にのれん負けしちゃいます。回収期間も25億円÷取得した当期利益3億円=8.33年とのれんの節税効果がない分長期化します。

 

このように、のれん償却が税務上損金算入できるかは、連結後の当期利益や投資回収期間の計算に大きく影響する要因になります。

 

 

こんにちは、M&A会計士の澤村です。

 

のれん償却の是非シリーズ、本日はのれん償却期間をどうするか(後編)です。

 

さて、のれんの償却期間は何年がいいのでしょうか?

 

結論から言うと、私の考えはその投資の想定回収期間です。

 

M&Aは一種の投資ですし、投資である以上投資した分は将来回収でき、かつ投資額以上の利益を得ることを期待して投資します。回収期間とは、その投資額と同額の累計リターンを得られる期間のことです。

たとえば、その投資が10億円で、毎年1億円の利益を生むとすれば、10億円÷1億円=10年で回収となりますよね。この場合の投資は、10年分の利益の先買いともいえるわけですから、のれんが発生したとすれば10年で償却するのが合理的ではないかと考えています。

投資額10億円の内訳が時価純資産7億円、のれん3億円だとすれば、3億円÷10年=3000万円の償却という計算です。

 

投資回収期間をもっとなじみの表現でいえば、PERですね。利益の何倍の株価をつけたかという意味です。利益の10倍つけた(PER10倍)なら10年、5倍(PER5倍)なら5年という計算になります。

 

買収対象の会社によっては、非事業用資産が多額にあるとか、有利子負債が大きいとかのBS状況の違いがありますので、正確に言えば単純なPERといよりは、EV/当期利益で計算するのが良いかと思います。

 

直近の利益は小さいけれど、将来の大きな成長を見込んでいる場合、PERだとバカ高い数字になってしまいます。そういったケースはDCFで評価しているかと思いますので、その割引率で計算すればよいと思います。

詳細な説明は割愛しますが、DCFの割引率は、いわばPERの逆数ですので、割引率が5%なら20倍で20年、10%なら10倍で10年といった具合です。

 

ただ、正直、ちょっと迷っているのが、この投資回収期間の計算に、時価純資産込みの投資額での計算でいいのか?という点です。

投資回収という意味では当然時価純資産分も込みであるべきなのですが、中小企業M&Aの株価算定でよく用いられる時価純資産+営業権法の存在と計算方法を考えると、のれん部分だけで何年回収になるのかを計算するのもありなのではとも迷っています。

 

時価純資産+営業権法でいう営業権は、ほぼのれんと同意語です。

 

で、中小企業M&Aの現場では、こののれんを利益の数年分で計算するといった実務慣行が一般的になっています。

コストアプローチとマーケットアプローチの折衷法的な評価方法で、バリュエーション的にロジカルなのかといわれると微妙なのですが、非常にわかりやすいので多くの中小企業M&Aで使われています。

 

ベースになる利益は、会計的に正しい営業利益から、中小企業特有の事象(例えばオーナーが思いのままに設定できる役員報酬や節税保険など)を控除したものを用いられることが一般的ですが、一部仲介会社ではEBITDAを用いるところなどもあります。

 

で、これを何年分とするかは、ある意味交渉次第なのですが、営業利益ベースで3~5年程度が多いのです。税引後になおすと5~8年程度ですね。5年の利益を上乗せしたのなら、同じく5年で償却するという考えも費用収益対応の考えからくるとありだなと。

 

みなさんは、どう思われますでしょうか?