■黒柴ひなた、黒柴あおい、赤柴そら

自己紹介3、僕らは喧嘩もするけど仲良しさ

 

■父と3兄弟の歴史

父、犬を飼う~ 犬嫌いだった男が、柴犬3匹と暮らすに至った物語

 

 

ふと夏の日のカブトムシを思い出した。

 

まだ娘が幼稚園に通っていた頃、カブトムシの幼虫を育てていた。ある朝、少し小さめの雄のカブトムシが姿を現した。

 

興奮を隠し切れずに見つめる娘と同じように私も現れた雄のカブトムシを見つめていた。そして少し安堵していた。さなぎの状態で死んでしまう事も多いのを知っていたし、やっぱり雄のカブトムシを見たかったからだ。

 

ある日、小さな虫かごの中で暮らすカブトムシを虫かごから部屋の中に出してやった。カブトムシも広くなったと気づいたのか、すぐに羽を広げた飛び立った。

見つめる私たちは「おー!」と驚きの声をあげながら家の中を飛び回るカブトムシを追いかけた。

 

ある程度飛び回ったところでカブトムシは飛ぶのをやめた。外じゃないと気づいたのだろうか。私はすぐにカブトムシを捕まえて虫かごの中に戻した。

その後、虫かごから出すことはなかった。

 

しばらくしてカブトムシは死んだ。

 

私はカブトムシの死骸を土の上に捨てた。ゴミではなくせめてアリや他の生き物の糧となってほしいと思ったわけではない。なんとなく土に返すべきだと思っただけだった。

 

一度だけ飛び立ったカブトムシ。

 

もっと遠くに飛べると思って羽ばたいたのだろうか。

こんなすぐに壁にぶつかってしまうとは思ってもいなかっただろう。

そしてその一度の飛行で虫かご暮らしに戻ってしまったのだ。

 

あの小さな雄のカブトムシはもっと遠くまで飛んで樹液や雌を探したかったはずだ。それが虫の本能だから。

本能を少しも実行できずに死んでいったあのカブトムシをなぜか突然思い出してしまった。

 

もう冬も近い寒い日だというのに。

 

 

父が更新

 まだ犬がいなかった頃の話です。