こんにちは!
京都ペレット町家ヒノコのスタッフNです。
そろそろ梅雨も終わりに近づき、各地で大雨が降っています。梅雨末期の大雨、というのはこの時期特有の気象ではありますが、それにしてもこの数年の雨は降り方が尋常ではありませんね・・・。
被災された地域の方々には、心よりお見舞い申し上げます。
さて、大雨で土砂災害が起こるたびに聞かれる森林の話題として、「人工林+手入れ不足」の弊害があります。
「広葉樹が減って、根の張りが浅い人工林(ここでは主にスギ・ヒノキなどの針葉樹中心の森の意味で、人工林と言っています)ばかりになり、且つ手入れが行き届いていないから、土壌を保持する力が弱くて災害につながりやすい。」というもの。
今回はこの論自体の是非ではなく、そもそも、健全な森林のおかげで災害が起きにくい、というのは一体どういうことか、ちょこっと書いてみようと思います。
森林の水土保全機能
森林には様々な「多面的機能」があるとされています。
これはいうなれば、森林が持つ「酸素や有機物の生産」「木材や林産物の生産」「様々な生物の住処であること」「二酸化炭素削減」「大気浄化」・・・など、人々のくらしを支えたり、地球の生態系バランス維持に欠かせない、様々な機能のことをさします。
この中に、「水源涵養機能(すいげんかんようきのう)」「土砂災害防止機能」というのも含まれ、この機能が主に、災害防止に役立つ機能として知られるものです。
水源涵養機能って?
健全な森林(ここでは、①森林が成立してからある程度の年数が経過し、②様々な樹種が過密すぎず、バランスよく育っている森林、とごく簡単に定義して書きます)において、木々の足元には下草や低木が生育し、土の上には木々の葉や枯れ枝などがたくさん落ちています。
この落葉落枝は、微生物やミミズなどの土壌生物によって分解されていき、森林の土はフカフカの、小さな穴(土壌孔隙)がたくさんある状態になります。
雨が降ると、雨粒は森の木々や下草に遮られながら、地面にたどり着きます。
地面にたどり着いた雨水は、土壌孔隙のあるフカフカの土に染み込んでいきます。
土壌孔隙があることによって、土がスポンジのような役割を果たすので、雨水は土に蓄えられながらゆっくりゆっくりと土中を移動していき、河川などに流れ出したり、湧き水となって出てきます。
そのおかげで、雨が降ってもすぐに斜面が川のようになってしまったり、河川が氾濫したりすることも少なく、逆に雨が降っていない時に川や湧き水が枯れてしまうことも、めったなことではありません。
また、水が土壌を移動する過程で、不純物などがろ過されて、土壌中のミネラルが溶け出した美味しい水へと変わっていきます。
これらが、森林の「水源涵養機能」。
つまり、雨の有無にかかわらず、森林に水を貯え、河川に流れる水の量が常にある程度一定になるようにコントロールして、且つその過程で天然の浄水を行っているのです。
土砂災害防止機能って?
水源涵養機能と並んで重要視されるのが、「土砂災害防止機能」。
これも健全な森林において、というのを前提に書きます。
森林の木々の根が、土の中に張り巡らされていることによって、その根がネットのような役割を果たし、しっかりと土壌をつなぎとめています。また、根を深く地中に伸ばす樹種も生育していることで、その地中深く伸ばされた根は杭のような役割を果たし、根のネットの支えになります。
このことによって、大雨が降ったり暴風が吹いたりしたときに、土が流されてしまうことや木が根こそぎ倒されることを防いでいるのです。
これが、森林の「土砂災害防止機能」。
けれども、近年の大雨のは尋常ではない雨量が一時に降ることが多いため、森林の土砂災害防止機能の限界を超えてしまうことが多々あります。
それが人工林であったとしても、広葉樹も生える天然林だったとしても、限界を超えてしまえばやっぱり災害は起こります。
※水源涵養機能も土砂災害防止機能も、健全な森林を前提に説明しましたが、手入れの行き届かない人工林にその機能が全くない、というものではありません。
人工林=悪という論調も最近ちらほら聞かれますが、そんなことはない、と私は考えています。
治山治水
昔から、「水を治める者は国を治める」「山を治める者は国を治める」などと言いますが、その言葉の通り、健全な山=森の環境を保つことは、国土保全、つまり災害を減らすという観点において非常に大切なことだったのです。
「最後の一言」で終わらない(笑)筆者徒然
さて、最後に。
主に戦後から高度経済成長期にかけて、多くの山が「開発」という名のもとに切り開かれてきました。
最近では、太陽光発電のメガソーラー建設のために、多くの木が伐採され、切り開かれる山も多くあります。
そこにはもちろん、人々がもっと良い暮らしができるようにとか、環境への配慮を、との思いも込められていたことでしょうが、そもそも豊かな土壌をはぐくむのも、安全でおいしい水を飲めるのも、それ以外にもたくさんある恩恵を生み出すのも、豊かで健全な森があってのこと。
じゃあ、太陽光発電をやめて石油を使うのか、木を切ることは悪なのか、とかいうことではなく、これからの環境やより良い暮らしのあり方を考えるなら、もっと根本的なところから、本当に大切なのは何かを考えてみませんか?と未熟ながら思うのです。
小難しいことをいろいろ書きましたが、理屈抜きに木々がたくさんあるところは気持ちのいいところ。
ぜひこの夏も、森の緑を堪能してみてくださいね。