暑い夏は、どうしても食欲が減退しがちです。
食べたくならないからと、いい加減な食事をしていると、
今度は、体力そのものが落ちてくるという悪循環に陥ります。
いわゆる「夏ばて」です。
夏でも食べやすくて、栄養価が高いものといえば、
まっ先に思いつくのが冷や奴、つまり豆腐ではないでしょうか。
胃腸にやさしく、免疫機能を高める効果もあるので、
夏ばてのときには、まさに打ってつけというわけです。
ところで、豆腐は水に浸してやわらかくした豆をすりつぶし、
できた豆汁(ご)を搾り、豆乳を苦汁(にがり)で固めて作ります。
搾ったあとに出る豆腐殻、いわゆる「おから」もよく食べられます。
おからのことを、主に関東では「卯の花」といいます。
白くてまとまって咲く卯の花ように見えることからそう呼ばれます。
一方、関西では昔「きらず」といいました。
豆腐はたいていの場合、切って料理して食べますが、
おからは切る必要がないところからこう呼ばれました。
したがって、これを漢字で書くと「切らず」となります。
わざわざこういい換えたのには理由があって、
豆腐殻の「殻」が「空」と通ずるのを嫌ったからだといわれています。
この他にも、不吉な意味や連想を持つ語を忌み嫌って、
その代わりに用いられる「忌みことば」はたくさんあります。
すり鉢のことを「当たり鉢」とか、硯箱のことを「当たり箱」と、
「する」が「摩る」と通ずるのを嫌って、「当たる」にいい換えます。
さらには、するめのことを「当たりめ」ともいいます。
水際に生える葦(あし)という植物がありますが、
これも、「あし」は「悪し」の意味に通ずるというので、
同じ「葦」という字を書いて「よし」とも読ませるのです。
葦で囲ってある小屋のことを「よしず張り」といいます。
くだものの梨も、「無し」に通ずるというので「ありの実」といいます。
誰が最初に使い始めたのかは定かではありませんが、
おそらく「忌みことば」は、一種の流行語だったのでしょう。
いまも昔も、ことばの変化というのは実に興味深いものです。
by スグル