ある旅人が、ひとのことばを話すライオンに出くわしました。
腹を空かせていたライオンは、旅人を捕らえて食べようとしました。
「どうぞお助けください」 旅人は命乞いをしました。
「ならば、私の考えていることを当ててみよ」 ライオンはいいました。
「当てることができたなら、お前を食わずに逃がしてやろう」
さて、この旅人が無事に逃げ帰るためには、
いったい何と答えればよいのでしょうか。
これは、非常に有名な『ライオンのパラドックス』で、
一説には、スフィンクスの謎に由来するといわれています。
パラドックスとは、逆説、逆理といった意味の語で、
外見上、同時に真でもあり、かつ偽でもある命題を指します。
また、ある目標を追おうとすればするほど、
かえって目標から遠ざかってしまったり、
あるいは、ある主義を貫こうとするがゆえに、
かえってその主義に反してしまったりする状況をいいます。
ところで、このようなパラドックスは、様々な物語に登場します。
韓国ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』の先週放送分にも、
パラドックスを利用したエピソードが盛り込まれていました。
以前にもここで紹介しましたが、このドラマのおもしろさは、
ひとえに、巧妙な人物描写と緻密に計算された脚本にあります。
ありがちな「シンデレラ・ストーリー」の中で見せる、
その独創性と論理性に、ただただ感服の至りです。
さて、話をもとに戻しましょう。
旅人は、しばらく考えたあと、こう答えました。
「あなたは私を食べようとしていますね」
もし、はずれているのなら、食べる気がないということになり、
もし、当たっているのなら、逃がしてやると約束しているので、
いずれにしても、ライオンは旅人を食べられないというわけです。
パラドックスには、人間の英知が凝縮されているのです。
by スグル