『恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす』
何とも洒落た歌ではありませんか。
これは、古くからの名作「都々逸」のひとつです。
都々逸(どどいつ)とは、主に男女の恋愛の情を、
雅ことばを用いず、口語をもって作ったもので、
江戸末期の寄席芸人、都々逸坊扇歌によって広められました。
普通は、七・七・七・五の4句から成り立っていますが、
五字冠りと呼ばれる五・七・七・七・五という形式もあります。
『草と寝て 露に濡れてる 果報をもって 何が不足で 虫は鳴く』
特に、叶わぬ恋の切なさを詠んだものや、
いわゆる口説き文句として詠まれたものが多く、
大衆的で、かわいげがあって、親しみやすいので、
俳句や川柳、あるいは短歌とはまた違った趣があります。
『惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里』
『ついておいでよ この提灯に
けして(消して)苦労(暗う)は させぬから』
『何がなんでも 添わねばならぬ 添うて苦労が してみたい』
そんなことをいいながら、いざ結婚生活となると、
今度はほとんどが不平不満を詠んだものになって、
こればかりは、いまも昔もさほど変わりません。
『苦労する身は 何いとわねど 苦労し甲斐の あるように』
『あのときあなたに 会いさえせねば わたしゃ苦労の 味知らず』
『どうせ互いの 身は錆び刀 切るに切られぬ くされ縁』
私のお気に入りは、次の都々逸です。
『目から火の出る 世帯はしても 火事さえ出さなきゃ 水入らず』
何と微笑ましい情景でしょう。
しつこくない頓知の利いたいい回しが素敵で、
この世知辛いご時世には、なおさら爽快な響きを残します。
どうでしょう。
みなさんも、都々逸に挑戦してみませんか。
楽しい作品をお待ちしております。
by スグル