浅葱色にきらめく水面 | ザ・マシンガンズの必殺技(絶望日記)

ザ・マシンガンズの必殺技(絶望日記)

 心にうつりゆく よしなしごと

町や街を歩いていると、鼻をくすぐる芳香。

匂いの方へ目を向けると、目に鮮やな花々。

あらゆる感覚を刺激され、思わず足を止めます。

寒さに耐えて、可憐に咲きました。

つられて、顔もほころびます。

すると、不思議なことに、急に寒さが和らいだような気がしてきます。

そして、ひとに優しく接したくなります。

手紙を書こうかと思い立ちます。


その場を去ろうと踏み出した足が、さっきより軽くなっています。



春の問題

             辻征夫


また春になってしまった
これが何回めの春であるのか
ぼくにはわからない
人類出現前の春もまた
春だったのだろうか
原始時代には ひとは
これが春だなんて知らずに
(ただ要するにいまなのだと思って)
そこらにやたらに咲く春の花を
ぼんやり 原始的な眼つきで
眺めていたりしたのだろうか
微風にひらひら舞い落ちる小さな花
あるいはドサっと頭上に落下する巨大な花
ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
どだいおれに恐竜なんかが
殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
などと原始語でつぶやき
石斧や 棍棒などにちらと眼をやり
膝をかかえてかんがえこむ
そんな男もいただろうか
でもしかたがないやがんばらなくちゃと
かれがまた洞窟の外の花々に眼をもどすと―

おどろくべし!
そのちょっとした瞬間に
日はすでにどっぷりと暮れ
鼻先まで ぶあつい闇と
亡霊のマンモスなどが
鬼気迫るように
迫っていたのだ
髯や鬚の
原始時代の
原始人よ
不安や
いろんな種類の
おっかなさに
よくぞ耐えてこんにちまで
生きてきたなと誉めてやりたいが
きみは
すなわちぼくで
ぼくはきみなので
自画自賛はつつしみたい



うららかな春の日に。

心にはどんな花が咲きましたか。


                                     by スグル