よしもとばなな『もしもし下北沢』 | 町田ロッテと野球散策

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いやぁ、野球って、本当にいいものですね。


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 この数か月、下北沢で仕事をする機会が多い。とても不思議な街である。

 とにかく、人が多い。小田急に乗ればあっという間に新宿、井の頭線に乗れば瞬時に渋谷。にもかかわらず人が集う下北沢。ところがこの街、道が狭い。先日も青い外交官ナンバーのベンツが入り込むも、進むのすら難儀してアジア系の運転手も困り顔。車すら拒絶する人の街、クラクションを鳴らせばたちまち白い目のオンパレードである。とにかくこの街の主役は、人だ。濃密な人と人との交わり、半世紀前には当たり前のようだった風景が、実はここにはいまだに息づいている。


 よしもとばななの『もしもし下北沢』は、タイトルで惹かれてしまった。そして、下北沢といういい意味で「人くさい」街をさらに好きになった。ここには、癒しがある。ややもすれば肩肘張って発狂しそうになる現代社会、むしろ人がなにものかに使われているかのような現代社会、進む時計の秒針の圧力を前になすすべなく押し潰されてしまいそうな現代社会。そこにちょっと待ったをかけ、「ま、いいじゃないか」と思わせてくれるのが下北沢の雰囲気は悲惨な家族の失い方をした母子を癒してくれるのである。空っぽになった人間は、やがて器を満たしはじめる。新たな水を、注ぐ。

 ここ、下北沢で。



 下北沢を舞台とした作品はいくつかある。映画であれば『ざわざわ下北沢』、小説ならばこの『もしもし下北沢』。そんな下北沢にはまだまだ楽しいお店がある。この小説でも多くの魅力的なお店が登場し、魅力的な店主が活躍する。私が未だ知らぬお店ばかりである。これからもどんどん開拓したいものである。そしてこの魅力的な街に魅せられた私は町田に住みながらもクリーニングは下北沢で出すというちょっと奇天烈なことをしている。

 『わざわざ下北沢』。お後がよろしくないようで。



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