本城雅人『嗤うエース』 | 町田ロッテと野球散策

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いやぁ、野球って、本当にいいものですね。


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 町田を歩く。町田に住んで六年になるが、朝の町田界隈を歩く機会は驚くほど乏しい。個人商店が意外に多い町田の商店街であるが、時間も時間である、開店していない店が殆どだ。そんな中、ちょっとびっくりする光景に出会う、。いきなりラジオ体操を始める女性を見かけた。ただ、その動きは我々の知るラジオ体操とはちょっと違う。何を始めているのだろうこの人は。しかしよく聞くとBGMが聞こえるのである。それは、ラジオ体操第二だった。


 この日はかなりの時間を小田急線に揺られる仕事だったので、読書も進む。


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 本城雅人『嗤うエース』は、野球好きとしては衝撃的かつ刺激的な小説だった。あの「黒い霧事件」は生まれる前の話なので勿論詳らかには知らない。ただ野球賭博の背景を知る毎に、戦後のプロ野球が日本社会とともに歩んだ歴史の暗黒を知る事にもなる。これは現代においてプロ野球に熱狂する我々は知っておいていいだろう。発端は和歌山の貧しい漁師の町だった。戦後の国民娯楽でもある野球は、裏社会の存在も手伝って野球賭博という「黒い娯楽」も生んでしまったのである。この書で、その背景も含めて野球賭博を詳しく知る事になる。野球に熱をうかされた者が通る、一つの悲劇でもある。時代は「黒い霧」以降であるが、その漁師町から出た才能のある投手はその家庭環境と投球内容から「八百長」の嫌疑を受けるのである。野球記者出身の著者が描く渾身の一話は、現代の野球好きをとんでもない世界に連れて行ってくれたものである。結末の残り二ページで知る事になる真相は本当に素晴らしかった。野球の暗部だけでなく、それ以上に野球の素晴らしさを教えてくれたこのヒーローに、喝采。


 現代の野球において熱中してしまっている私を、一つの報せが襲う。明日行われるマリーンズの新入団選手発表会の観覧に空きが出たとのことで、午後五時からマリーンズ公式サイトで先着申し込みを受けるというのである。私は仕事中にも関わらず、四時五十九分にアクセスしてしまう。ただメールアドレスの入力に手間取っていたら、悲しい結末が訪れる。
 「お申込みの席は、ご用意できませんでした」
 五時三分のことである。まさに「秒殺」、肩を落としてしまう。仕事中なのに。仕方がないので、今年もインターネットで観覧することにしたい。