【作品情報】
監 督 マリオ・ヴァン・ピープルズ
出 演 ニコラス・ケイジ、トム・サイズモア、トーマス・ジェーン、竹野内豊、マット・ランター、ジェームス・レマー、ブライアン・プレスリー、他
上映時間 128分
ジャンル 戦争もの>実話
原 題 「USS Indianapolis: Men of Courage」
【あらすじ】
1945年、太平洋戦争末期。
沖縄でカミカゼ攻撃による損傷を受けたアメリカ海軍の重巡洋艦インディアナポリスは、現地や真珠湾での修理が不可能と判断され、アメリカ本国へ回航の上、修理を施される。
アメリカ軍上層部は、長引く対日戦争の早期終結の切り札として、日本の民間人の犠牲も考慮したうえで、原子爆弾の使用を決定する。
航空機での原爆の長距離移動は困難とされ、アメリカ本国からB29爆撃隊の駐留するテニアン島まで高速の出る軍艦で移送される事となる。
その役割を本国で修理中であったインディアナポリスが担う事となる。
原爆移送は極秘任務とされ、護衛艦の付かない単艦行動を強いられる。
艦長であるチャールズ・B・マクベイ3世(ニコラス・ケイジ)は、これを了承し、重巡インディアナポリスは重要任務を帯びて単艦テニアン島を目指す。
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今作においても、邦題のそぐわなさがまず鼻につきますな^^;
「パシフィック・ウォー」は直訳で「太平洋戦争」
これでインディアナポリスが太平洋戦争中、各地を転戦して活躍した物語なら、この題名でもいいけど、実際は原爆移送任務の後、イ58に雷撃されて沈没してからがメインテーマなこの映画。
「重巡インディアナポリス号の悲劇」とか…
あんまり安直すぎてダメなら、せめて、乗組員が生還に向けて努力をしてる事が判る題名にしたらいいのにね。
「南海からの生還!」とか?
この映画の功罪は、「沈没後、水上に生き残った多くの乗組員がサメにやられた」と映画的に誇張して脚色された為に、観た者の多くにそこが事実として認識されてしまっている事。
実際は、サメに餌食になった乗組員もいるのは確かながら、ほとんどは7/30の沈没から8/2の発見、8/5の救助完了と救助に時間がかかってしまった事と体力低下によるものが、沈没時は生存していたほとんどの乗組員を死に至らしめた。
映画「八甲田山」でも表現されている体温低下による幻覚症状やサメの海域に居るというストレスからの気力の消耗などが主な原因と言われている。
7/30の沈没時に生存者約900名いたのが、8/5までに救助されたのは316名となっていた。
しかし、日本海軍の損耗艦でも多くが南方海域で沈没し、生存者が「鱶(ふか)の餌食になった」話は少なからずあるけれど(永遠の0でも描かれてましたな)、ここまで大騒ぎすることは無いんやけどね^^;
日本人が不感症過ぎるのか…
アメリカ人が過敏過ぎるのか^^;
そういう演出過剰な部分のせいか、映画的には、何を見せたいのか…何を訴えたいのかが少し解り辛い^^;
基本的には、名誉回復されたマクベイ中佐の話や死の危険を乗り越えて生還した乗組員、志半ばで散った乗組員の話でイイと思うんやけど…インパクトがどこに置かれているのか、イマイチわかんない^^;
そこは映画の商業的な「盛り上がり」を意識しすぎて作られたせいかなとか思う。
おかげで考証とか中途半端^^;
まずオープニングの対空戦闘シーン。
ある程度の部分は、指揮官がいて対空指揮をするのは理解できるけど、艦長が自ら対空戦闘の指揮を執るのはちと首をひねる。
特にこの時期のアメリカ艦船は、対空装備のレーダー射撃化が進んでいるので、声を張り上げての指揮、また艦橋内で指揮する光景自体があんまり考えられないと思うんやけど…どうやろうね?
それから、アメリカ映画ではいつも疑問視される日本人像^^;
2016年制作の今作ですら、日本人は潜水艦内で火を焚いて祈祷している…どこかシャーマニズム的な要素を持つスピリチュアルな人種に見せている^^;
実際、祈っている士官の後ろにご丁寧に先祖の霊まで出現して話しかける^^;
欧米人にとって、異教徒である日本人は、理解出来ない神秘的な要素を持つ人種にしておきたいんやろうね^^;
しかし未だにああいう表現しかできんところが、アメリカ映画の商業主義なところね^^;
日本人はこうでなければならない…そういうイメージを裏切ると、観客に受けない…そこばかり考えて、考証的なところがおざなりになる^^;
映画を観る者、特に欧米人にとって、そこを映画的誇張と理解できる範囲ならイイんやけどね^^;
特に最近は、多くの人に見せる映画が描いている事が真実よりも正しいと思い込む人が多いからね^^;
さて、本編中ところどころでその艦体を見せてくれるインディアナポリス。
実物の軍艦やけど、本物のインディアナポリスではもちろんない^^
航行シーンはCG合成と思うけど、実物の圧倒的な迫力は見て取れる。
本物の重巡インディアナポリスは、話の通り、沈没して現物がないし、同型艦のポートランドも終戦直後の解体されて、もちろん既に亡く・・・
代役となりがちな、世界における第2次世界大戦時の艦船の保存記念艦は、全部で13隻。
(日本も記念艦は多いけど、旧帝国海軍軍艦は横須賀の三笠だけ)
そのうちアメリカが記念艦として保存しているのは、なんと10隻にも及ぶんやけど…アメリカ広し多しと言えども、重巡洋艦の記念保存艦はセーラム1隻のみ。
あとはほとんどが戦艦か航空母艦。
じゃあセーラムが「戦艦シュペー号の最後」以来の映画出演かと思いきや…何故か、違う代役になっていく。
重巡セーラム(やっぱりこっちの方が同じ艦種なだけのスケール感も併せてまだ似てるw)
実際の重巡インディアナポリス(1945年の修理時)
映画「パシフィック・ウォー」で「インディアナポリス」役を「演じた」戦艦「アラバマ」。
重巡洋艦インディアナポリスの役どころは、記念艦として保存されている戦艦マサチューセッツか戦艦アラバマが使われたように思う。(後で調べを進めたら、どうやらアラバマが使われたらしい^^)
インディアナポリスは、重巡で20.3cmの砲口を持つけど、下記の写真では明らかに立派過ぎる主砲の砲口の大きさが丸わかり^^;
写真から見ても大人の頭よりも大きい戦艦クラスの40cm級の砲口であることが判る^^
戦艦アラバマと重巡インディアナポリスでは、砲塔は3連装で同じながら、見た目で違いが判別可能。
明らかに砲同士の間隔が違うんよねw
インディアナポリスと同型艦である重巡ポートランドの主砲(砲同士の間隔に注視)
代役とはいえ、実物の軍艦が登場する(現役とか航行出来たらもっといいけど)のは、ありがたい話ですな^^
少し前までアイオワやミズーリが生射撃を見せてくれてたと思うと、旧帝国海軍軍艦の現役時代の雄姿も眼前にしたかったなと思うね…