ホイール組に詳しいブログなどで「スポークはハブの接線に沿うて伸びる角度が最も効率が良い」というのは、トラス構造計算で見てきたように「駆動力が100%張力に変換されるのは、スポークがハブの接線にあるときだけ」であるからです。
ですがメーカーが販売している自転車用ホイールのスポークの伸び方を観察すると、必ずしもハブの接線に沿っているわけではないことに気が付きます。むしろ接線に沿っているホイールのほうが少数のように見受けられます。
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ホイールが単純なトラス構造であるならあ、スポークが接線から離れれば離れるほど駆動性能は低下するはずです。しかし、接線組ではないホイールで、多くのサイクリストが走り、特に不満も出ず、自転車レースともなれば非常な高速度で駆け抜けてゆきます。
これはなぜでしょうか。
一般にスポークがハブの接線に沿う組み方をすると重量が増加したり、剛性が低下するからと言われます。(実際にそのとおりです)
駆動性能の低下と、剛性の確保や軽量化はトレードに値する性能なのでしょうか。
コンマ数秒で勝敗が決る自転車レースの世界で、数%でも駆動性能が低下することを許容するのでしょうか。
極端な例としてラジアル組のホイールを取り上げましょう。ラジアル組とは、スポークがハブからリムまで放射状に伸びて他のスポークと交差しない組み方のことです。
ラジアル組はハブの中心、スポークのハブ上固定点とリム上固定点が一直線に並んでいます。これをトラス構造で解釈するとどうなるでしょうか。

先立って説明に使ったトラスを再度取り上げることにします。
梁Aの先端に10kgのオモリをぶら下げるとします。アームBにはトルクが作用して、それを支えます。アームBの中心角が90度と0度のときはこんなイメージになります。梁Aも回転軸を中心に自由に回転できるようになっており、アームBの付け根にモーターがついていてトルクを発生できるようになっている……そういう構造です。
もしモーターが何もトルクを発生していないとすれば、ストーンと落っこちてしまいます。
10kgの重りを支えるために
・アームBに必要なトルク
・ワイヤーに作用するべき張力の大きさ
以上の2者が、どのように変化をするか見てみましょう。図には、アームBとワイヤーのみ描いていますが、ちゃんとアームAがあるのだ、という風に見てください。

ハブの半径を30mm、リムの直径を300mmとして、リムに10kgのオモリをぶら下げます。
計算はワイヤーがハブの接線になっている角度から開始して、徐々にハブを水平に近づけてゆくときのワイヤー張力、駆動トルクを表にします。

中心角が84°付近でスポーク角は90°となって接線に沿います。その時のワイヤー張力は99kgfあれば十分で、トルクも3[kgf m]ほどあれば事足ります。
そこから中心角がゼロに近づくにつれてワイヤー張力、必要トルクともに飛躍的に大きくなり、中心角1°ではワイヤー張力5200kgf、トルクでは8140[kgm]という非常に大きな力が必要になってしまいます。
中心角が0°になったとき、張力は無限大、必要なトルクも無限大になります。(もちろん、そのようなことはできないので、一切支えることは不可能ということです)


現実では、張力によってワイヤーが伸びるので、ハブが先に回りはじめ、リムとの位置関係がずれます。それによって先の中心角が0°ではなく、もう少し大きい角度になり、それによってワイヤー張力が無限大などという非現実的な状況は回避されます。
ラジアル組のホイールでも、これと同じことが起きて駆動力を伝えられるのです、というのが現状多く見られる意見になります。実際にラジアル組の後輪を作って「思ったよりちゃんと走る」という感想をブログにて書いている方もいらっしゃいます。
さて、この説はどこまで信用して良いのでしょうか。
