前の記事で、図のようなトラスの先端に重りを吊り下げたときに、アームBにどれだけのトルクをかけなければならないか、その時のワイヤー張力がどれだけ必要かを検討しました。

 この図の(b)はリム-スポーク-ハブが一直線にならんだ、いわゆるラジアル組を示しています。

 「ラジアル組ホイールは駆動には向かない、後輪に採用することはない」

 「NDS側がラジアル組になっているホイールはDS側だけで駆動力を伝えている」

 というのは、先ほど見たように(b)の状態では、駆動トルクを無限大にしてもオモリを保持することができない(駆動力を伝えられないから)です

 

 ですが「ほんとに?ラジアル組で組んだけど走れたよ?」という意見に対して、従来は「ラジアル組ホイールでも、駆動力が加わるとハブとリムに位相差が発生する。そのときスポークに角度がつくので、それで駆動するのです」と説明されてきました。

 

 この説明の妥当性を検証してみたいと思います。

 

 計算の事例として、先ほどのモデルの中でハブとリムが5度ずれたと仮定して、再度計算してみましょう。

 

 まず、ハブとリムが5度ずれるためには、スポークが伸びなければなりません。スポークはバネと同じですから、スポークに掛かる張力が計算できます。

 増加した張力の大きさから、ハブを回すトルクの大きさが計算できます。

 ついでに増えた張力がリムを引っ張る力も計算できるはずです。

 まず、変形前のホイールを次のようにします。
 ハブの半径を30mm 、 リムの半径を 300mm
 ラジアル組では、最短距離でハブとリムを結ぶので、スポーク長270mm
 スポークはステンレス製で、ニップルやフランジ部分の変形を考慮して、ばね定数を1000[N/mm] とします(100kgの荷重で1mm伸びる。スポーク単体なら2000N/mm程度になる)

 ハブの5度回転を実現するためには、スポークは0.13ミリ伸びなければなりません。スポークはバネですから、0.13[mm]x1000[N/mm]=130[N]だけ張力が増加します。
 ハブに作用したモーメントはハブの円周に沿って力を作用させますから、スポークと駆動力Fは直交しません。今回の例ではスポーク角度174.5°から
 Fsin174.5°=130 [N]
 F=130÷0.096=1356[N]
 ハブに入力しなければならないトルクはτ=40.7[Nm]になります。(ハブ半径が0.03m)


 さて130[N]増加した張力は、反対側のスポーク端でリムを横方向(回転方向)に押すことで推進力を生み出します。
 スポークがリムに入射する角度は当初のラジアル線から 0.55°ズレています。
 リム接線方向成分は 130 sin(0.55)=1.25[N] 


 

 

 つまり、なにが起きているかといえば、ハブに40.7[Nm]のトルクを作用して、リムが出力する駆動力が1.25[N]です。もし半径300mmの円盤に40.7[Nm]のトルクを作用させたら、135「N]の出力が得られるはずです。それに対してトラス構造であると仮定して計算すると1.25[N]、期待される出力の0.9%しかない、ということになります。これではまったくホイールとしての様を為していません。


 以上が

「ホイールはトラス構造であるがゆえに、スポークの張力変化のみで駆動力を伝達する」

「張力変化以外に駆動力の伝達があったとしても、無視できる」

 という論を採用して計算した結果になります。

 

 40.7[Nm]というのは、1mの棒の先端におおよそ4kgの力を作用させています。それで出力が1.25[N]しかない、つまり図のようにハブ(半径30mm)とリム(半径300mm)に重りをぶらさげて釣り合うのだということです。

 ラジアル組ホイールでは、図のような状態で本当にバランスするのでしょうか?