前の記事で、ラジアル組ホイールをトラスだと考えて計算をすると下図の(a)のような状態で釣り合うのではないか、と話しておりました。
もちろん、そんなことはなくモーメントのつり合い計算の通り、ハブとリムの半径比で吊り下げるべきオモリの質量が決まります( 下図(b) )

これまでの記事で、ホイールを張力だけで駆動力を伝えるトラス構造であると考え、計算した結果として納得できない結果が得られてしまいました。
つまりスポークが張力の増減とは異なる駆動力の伝達システムが存在し、張力だけではなく曲げモーメントを伝達しているのではないか、と考えることができます。しかし、ここで幾つかの反論が存在します。
A)スポークは細い針金であって曲がりやすく、物体を動かすほどのモーメントを伝えるには弱すぎるのではないか
B)スポークはハブの穴で自由に回転できる。つまり曲げモーメントを伝達できない
これらの問いにたいして、実験を交えつつ考えてゆきましょう。

はじめの疑問はフランジ穴にスポークを通し、曲げ方向に力を加えても容易に滑って回転してしまうが故に「スポークの固定部は回転対偶である。スポークに曲げはかからない」という意味です。またスポークを手に持って曲げようとすると、たかだか直径2mmの針金ですから弱い力で簡単に曲がってしまいます。
しかしスポークには通常数十から100キログラムの張力が与えられています。つまりスポークの首はフランジ穴に大きな力で押し付けられています。これがスポークとフランジ間で摩擦力を発生させ、さらにフランジ穴の一部をへこませて溝を形成します。摩擦と溝による固定、これらが回転力にたいして抵抗する要因となりえます。
。

また、スポークの他端であるリムに固定されている箇所では、リム穴にニップルが勘合して大きな摩擦力が発生しています。

これらの要素から、実際のホイールでは
・リム側、ハブ側両方とも完全自由端である
・リム側は固定端で、ハブ側は回転端である
・リム側、ハブ側両方とも完全固定端である
この3つの状態のいずれかであると考えられます。
(両端とも自由端)
(片方だけ自由端、他端は固定端)
(両端とも固定端)
リム側とハブ側、両端とも摩擦力が外力よりも弱くて自由に回転可能な状態ではスポークはバネとして機能するだけで、駆動力の伝達は張力のみになります。
リム側とハブ側、どちらかの摩擦力が外力よりも強く、片方だけ回転可能な状態では片持ち梁のような状態になります。棒の一端を壁に固定し、自由な端に曲げ方向へ力をかけた状態になります。
リム側とハブ側、両端とも摩擦力が外力よりも強くて固定されている状態は、両持ち梁の状態になります。棒の両端を曲がらないように固定し、位置をずらす状態です。
片持ち梁と両持ち梁、両者を比較した場合は両持ち梁状態のほうが撓みバネとして強くなりますので、可能な限り両持ち状態を維持したほうが好ましいといえます。
以上から、ホイールの駆動について確認しますと
・張力の変化による駆動力伝達(トラス構造)
・スポークの曲げによる駆動力伝達(両持ち/片持ち梁)
の2つの組み合わせであると考えられます。
たとえば駆動力が作用して、両持ち梁状態のホイールは下図のような状態にあることが判ります。
さて、ここまでの議論では、ホイール内にあるトラス構造はハブやリムの形状などで決定される幾何的な条件によって伝達できる駆動力には限界がある、という結論になります。
そこにスポークが曲げられ、たわみバネとして作用することで足りない分を補い、駆動力を伝達していると考えたら良いのではないか、という内容が今回のブログ記事になります。
さて次の記事では駆動力が作用し始めてから安定状態に至るまでを図にしてみましょう。それによって「反応がいい(悪い)」「かかりが良い(悪い)」というのが何を意味するのか、がわかるのではないでしょうか。



