これまでの記事で検討してきましたホイールの駆動についてまとめますと

 ・張力の変化による駆動力伝達(トラス構造)
 ・スポークの曲げによる駆動力伝達(両持ち/片持ち梁)

 の2つの組み合わせであり、下図のような状態にあることが判ります。リム側は完全固定と考えて駆動中も姿勢を変えません。そして理想的にはハブ側のスポーク固定端(フランジと羽目あっているところ)も固定端が望ましい。
 スポークは両端固定で曲げられる"両持ち梁"状態になっている、のが最もバネとしての作用が強くなります。


 以上をまとめてラジアル組ホイールで考えます。
 まず張力による伝達は、ホイール内にあるハブやリムの形状などで決定される、トラス構造の角度など幾何的な条件によって伝達できる駆動力が決定されて限界がある、という話でした。
 そこにスポークが曲げられ、たわみバネとして作用することで足りない分を補い、駆動力を伝達しています。

 

 スポークはフランジの穴に引っ掛けられて使われます。接触面には摩擦力が作用します。摩擦力には・静止摩擦力 ・動摩擦力 の2種類があります。 静止摩擦力はお互いに静止した状態に作用します。外力が静止摩擦力を上回ると滑りが生じて動摩擦力が作用することになります。

 一般に 静止摩擦力 > 動摩擦力 となります。

 

 これを踏まえ、ハブに駆動トルクが作用し始めてから、ホイール全体が安定状態に至るまでを図にしてみましょう。




 
(a) 駆動力が作用したときから、トラス構造としての伝達システムは作用しはじめます。スポークの張力が増加し、伸びが生じます。伸びが生じることでハブとリムに位相差が生じます。またスポークに係る剪断力によって曲げが生じ、発生するモーメントによって駆動力を伝えます。

(b) フランジ穴でのスポーク固定力を曲げによる駆動力が上回るまではスポークの両端は完全固定端となります。スポークには静止摩擦力が作用して固定されています。この状態は、スポークの首にかかるモーメントが静止摩擦力を上回るまで続きます。

(c) 曲げ駆動力が充分強くなれば滑りが生じ、曲がりは緩和されます。滑っている間は動摩擦力が作用します。両持ち梁が片持ち梁となり、スポークが滑るにつれて張力上昇が阻害されます。

(d) 滑りが停止し、再び静止摩擦状態に移行します。
 張力上昇とスポークの曲げ反力が再び増加に転じます。

 ホイールは、ハブに作用する駆動トルクと、地面からの反力(駆動力)が釣り合うまで、この(b)~(d)の状態を繰り返すのだろうと考えられます。

 そして駆動力がゼロになると、当初の状態に戻るように働きます。


 そして重要なことですが、曲げによる駆動力伝達は張力での伝達を補う役割を果たしますが、曲げバネとしてスポークが充分に強くなければ、駆動力を完全に伝達することができません。


 スポークが曲げに弱ければ、ある程度補ったところでホイールの状態変化が終了して、駆動力を100%伝えることは不可能になります。


 曲げに対して充分に強ければ、僅かな変化で駆動力をつたえられます。
 ですが、スポークを机に貼り付けて曲げてみてください。ほんの数十グラム程度の荷重で容易に曲がってしまいます。
 

 ただの針金にすぎないスポークに、自転車を推進するのに足りるバネ力があるのでしょうか。