高知県出身、電子工学科を卒業したという異色の作家である山本一力さんの作品。
主人は山本一力氏の作品を殆ど読んでいるのですが、
私はと言えば、横で眺めているだけでなかなか手に取るまでいかなかったのです。
図書館でたまたま手にとって1・2ページ捲ってみると、これがまた面白い。
さっそく借りてきて読み始めました。
冒頭から面白い!と感じられる本も珍しいのですが
最後まで面白さが半減することなく読み終えることができました。
東京深川に店を構える履き物屋の老舗、桔梗屋の主である太兵衛と
賭場の貸元である霊巌寺の猪之吉は書を習っている場所で偶然に出会うのです。
大店を構える太兵衛のこと、人を見る目は確か。
大店の主と渡世人。
今の時代なら大会社の社長と○○組の組長とのつき合い...
それほど驚くこともないでしょうが江戸時代ではありえないことだったのでしょうか。
しかし太兵衛と猪之吉との肚を割った付き合いが始まりました。
そんな折、油問屋を営む鎌倉屋鉦左衛門により、
桔梗屋を乗っ取ろうとする悪企みが密かに進められていました。
悪党等の動きを感じ取った猪之吉が陰から太兵衛を守っていきます。
が、重い病を患ってしまった跡取りのない太兵衛が桔梗屋の後見を託したのは
なんと、あろうことか渡世人の猪之吉でした。
太兵衛が亡くなり、当然のことに桔梗屋をめぐって
鎌倉屋と鎌倉屋から乗っ取りを依頼された一味と、
猪之吉らとの闘いが始まったのです。
一筋縄ではいかない相手に桔梗屋の女将や手代を始め一丸となって
鎌倉屋一味と命をかけた闘いが繰り広げられていきます。
このような乗っ取りはいつの世にもあり得ることなんでしょう。
悪党もなかなかいなくなりません。
それどころか時代が進んで、どんどん巧妙になってきているようです。
本物の渡世人は素人さんには決して悪さをしないものです(だそうです)
いや、誰でも悪いことはしちゃいけないのですが
世の中のバランスというものが悪をも作り上げてしまうのでしょうか。
ただ、渡世人であろうとなんであろうと、人情がある・わかる人は素晴らしい。
人情があるかぎり、人を陥れたり殺めたりすることはないでしょうから・・・
殺伐とした世の中で忘れ去られてきたものを思い出させてくれるような作品でした。

