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目に映ったのは安っぽい白い壁紙。
左右に少し視野を広げてみる。
全体が白い。
天井も壁も見慣れた白だ。
私がベッドで寝ているだろうことは間違いないように思う。
ぼんやりとした明るさのせいで、夜が明けたのだと感じた。
今まで寝ていて目が覚めたのだ・・と思ったのは間違いじゃないだろう。
私の寝室にはベッド以外には整理箪笥が一棹あるのみ。
寝室だけに拘ったのではない。
本来なら家の中から物を排除したいと常々思っていた。
しかし生活していく上で全てを排除するなんていうことは無理なので寝室だけでも・・と
できるだけベッドもシンプルなデザインにした。
だから、本当は箪笥は置きたくなかったのだ。
しかし、限られた広さの中では箪笥一棹置くことくらい妥協しなければならなかった。
これが下級国民の哀しさだ。
じゃぁ、だだっ広い何もない家に一人で住んでみるか?と言われれば
私にはその方が我慢できないのだから、下級国民だろうが何だろうが
今の状況を受け入れた上で、あれこれ工夫すれば良いことだと思った。
然程不満はないのだし・・・
それに・・・今の私は日々何事もなく過ごせたならそれでいい。
・・・まぁ、そんなことはどうでもいい。
この部屋には窓が一か所しかない。
どういう訳か開けていない筈のカーテンが開いている・・・ようだ。
そのせいで明るさを認識したのだろうと思った。
無意識のうちに起きて開けたのだろうか?
記憶がない。
窓の外はどんよりとしている・・・様に見える。
「今日は天気が悪いのか?」と思ったが、どうもそうではないような気がする。
ベッドの中にいても空は見える。鳥が飛んでいる様子も見える・・・はず。
が、今日はそれが感じられない。
聞こえてこない。
何か変だ。
起き上がろうとした。
が、身動きが取れない。
どうしたのだろう?・・・私。
視界には、あるはずの箪笥が見えない。
私、処分したのだったか・・・?
・・・かもしれない。
捨てるときは後先考えずに処分してしまって後悔することが多いのだ。
何をするにもやり過ぎ傾向にある自分自身に呆れてため息が出る。
ふと気が付いた。
天井のど真ん中にあるはずのLED照明器具が見当たらない。
もの凄く不安になった。
寝ている間に何があったのだろう?
それにしても、私の寝ているベッド、随分狭くはないか?
何よりも身動きできない自分に苛立ちを感じる。
窓の外で何かが動いた気配がした。
誰かが近くにいるのなら助けを呼ぼうと思った。
だ・だれか・・・
あぁ・・・声が出ない。
不安ばかりが膨らんで自分の存在(カタチ)を確認できない。
この白い空間は部屋ではないのか?
窓は確かに窓ではあるが、小さい。
記憶の中にある見覚えのある小窓だ。
どうも私は棺の中にいるようだ。
やっと自分の存在(カタチ)が見えた・・・何故か不安が消えた。
「あぁ・・私は死んでしまったのか」
「最期まで、私の想いを誰にも伝えられなかったなぁ」
「でも・・・いっか・・・」
-------------------- by macaroon -------------------

