[短編小説] 除夜の鐘 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

百八つの煩悩かねを打ち払うのが鐘打ちであるが寺が正統で神社

が邪道であるということはない、神社は神道で寺は仏教の違いから

作法の違いはあるが目指すものはひとつしかない。

 

神社の役は108つの鐘を調べる為にみかんを1つづつ配り現在い

くつめなのか調べる、しかし鐘を打った人がみかんを貰ってくれないと今いくつ鐘を打ったのかわからなくなってしまう。例えば赤穂

浪士で名高い大石内蔵助を含む赤穂四十七士が打ち手がすくないからと同情し打ったとしても彼等は死者、無論ミカンは不要なわけで今いくつ叩いたのかわからなくなる。

 

「拙者がひとつ打ち鳴らしてしんぜよう」

「気持ちは有り難いのですがその心遣いだけで」

 

地域から廃神社の決定が出された神社で総代となった今西権三郎(

いまにし ごんざぶろう)は大晦日の夜たったひとりで鐘をつく人

現れるのを待っていたが廃神社に来る人は現れる訳もなく雪降る中凍り付きそうになるのを耐え乍ら鐘つき堂でひとり佇んでいると声を欠ける人が現れたのだ。

 

だが東京の泉岳寺で死んだ大石がなぜ今西が住む静岡県の山中にある神社に現れたのだろうか?霊だとて万能ではない移動の時間が掛からないだけで場所を特定する必要がある。ましてナビの発達

た現代では地図を購入する人が少なく本屋でも地図は販売し

った。知られていないが無類のそば好きは一度戸隠の手打ちそばを

食べてみたいと生前から思っていたが死後、食べようとしても江戸時代の古い地図では現代で通用する訳もなく路頭に迷っていたが道

人に訊ねても死霊の言葉を理解できる人間は一握りしかいない為、また姿を認識しても逃げる為に山中を彷徨うしかなかった。山

の中で困り果てた大石、登山道の脇で座り込んでいた甲冑姿の大石に気づく人は意外と多いが大抵の人は知らない振りをする。

 

今西権三郎は登山が好きで中部やアルプスの山々など良く登って

いる。戸隠などは3度ほど登っていてこの日は登山客があまり選ば

ないルートから登っていた。あまり登山者が通らないルートなのに下って行く人とすれ違いのが多い、しかも若くてきれいな女性が多

った。だがよく見ると服のデザインはマチマチで一貫性がない、デザインが違うのはメーカーが違うから当たり前だが流行するデザ

インには基礎ともなる基本的なデザインの構築はどのメーカーの共

通のものなのだがその基礎成るデザインに統一性がないのだ。

 

今西には世間でいうところの霊能力があり霊をみることが出来る、

だから登山道で霊に合うことができるし滑落で死んだ女性とも話を

する事が出来るが普通の霊能者と違うことが出来る、それが神仏を

見る能力である。しかし神仏と言っても実体化出来ないのであれば

を見るのと変わらないのだが。

 

「どうしたんですか」

「蕎麦を食べに来たんだが蕎麦屋が見つからなくてのう」

「蕎麦屋はもっと下山しなければありませんよ」

「すまんな」

 

これが大石内蔵助と今西権三郎との出会いである。大石は恩を忘

れる事が出来ずいつか恩返しする刻(とき)を探していた。恩返し

来ると思った大石ではあるが今西から断られてしまい違う方法を

索することにした。

 

除夜の鐘は午後11時45分から衝きはじめるが5分経っても誰も来ず10分経っても誰もくる気配もない午前0時を回っても状況は

同じあった。廃神社に決まったので誰も衝きに来る筈はないと知

ってはいたが性格的に今西は辛抱強い、身も凍る寒さの中で20分

も誰もこないのに待ち続けるのは尋常な事ではなかった。時刻は0

時48分、午前1時を迎えるまでに108つ鐘を衝かなければならない。”もう駄目かもしれない”

今西の心中に諦める心が騒めくが一旦決めたことなので午前1時で待ち引き上げようと考えた。諦めかけた0時50分事態は変わっ

た。大きなマスクをする長い黒髪の女性が現れたのである、その女

性は鐘つき堂を真っすぐに歩くと鐘を衝き始めた。

 

「ありがとう」

 

つい思わず今西の口から出てしまったが女性は会釈するだけで無言

のまま何を話す事もなくそそくさと鐘つき堂から立ち去ってしまっ

た。女性が立ち去ると和服姿の頭が大きな老人と着物を綺麗に着

こなした30くらいの女性が鐘つき堂に現れた。鐘を衝き終わると湘南ゴールドを取り去って行った。

 

老人達が去るといつの間にか長い列が出来ているのに驚いた。時

間も1時まで数分しかなく老人達で終わりだと思っていたがこの人

だと108まで十分だ、惜しむらくはあと数時間早ければ良かった。除夜の鐘は連続して衝けず打った後パーシャル期間、鐘の揺れ

収まる時間が必要でその為にはひとり30秒程度は必要なのだ。

しかし残り5分だというのに驚くべきことだが既に80人は鐘を衝

終えてるし湘南ゴールドも二十数個しかない、彼等は人間とは思

ず霊なのかと考えたが霊に湘南ゴールドを持って行くことが出来

とは思えない、持つことが可能ならば大石にも出来た筈だから

だ。”まぁいいか”

彼らが何者でも今西はとりあえず人間だと思うことにした。

 

午前1時になり十数人残っている筈なので1時を回ったが打って貰

おうと鐘をつく列を今西が見て見ると誰もいないことを不思議に思った、段ボールには湘南ゴールドもひとつも残っていない。

 

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”福禄寿殿時刻が遅かったのではありませぬか”

”天照様、突撃隊長の韋駄天に合わせてのう”

”また韋駄天のせいですか”

”いいじゃありせんか、天照様が時刻を止め108つ鐘を衝いたので       

すから”

”でその韋駄天はどこに”

”下界で口裂け女再び話題になったそうで下界へ”

”そうですか?今度お説教が必要かも知れませんね”

 

本殿では今西が持参した酒と肴で宴会の最中だった。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません