蝉は夏が終わると鳴くのをやめ死んで行く、生きてる内は泣き続けるのが生まれた宿命でもあるかのように。それに比べ人は生きている間はさまざまな事をしなければならない例え死が待っているのを知っていても寝ているだけでは済まないのだ。
血圧が人より高く200を越える50代の男性がいるとしよう。常に頭痛に悩まされ目を酷使したら頭痛が顕著に現れるがそんな時は目薬を差す、目薬指せば頭痛は抑えられるから目薬は常時持ち歩いている。会社では配送の仕事に就いているが乱視が強い近眼で年波のせいか老眼でもあるだから商品をよく間違え会社での評価は低い。同僚や後輩からダメな社員と思われるのも当然だ。そんな彼だが彼は人には言えない特異な能力を持っていてただ見えるのであれば人の役に立たないところだが霊を消すことが出来る、除霊や浄霊といったものではなく言葉通りに消去できる日本に数人しかいないと言われるDeleterなのだが公表していないし宣伝もしていないから一部の人間しか知らない。
ところが会社の定期健診を受け再診で心臓の左心房が異常に膨大していることを指摘され今のままでは心臓が爆発するので覚悟をしてほしいと宣告された。痛みは無く薬で治療することになり血管降圧の薬を呑むことになった。210あった血圧が130まで降下し安心したがその日から心霊的な夢をみなくなった。見ているかもしれないが記憶に残っていない、地震予知などの予知する夢も見なくなった。
「こんにちわ」
誰が来たのかと玄関に出ると見覚えのある20代後半だろうか綺麗な女性栄養士である。
「どうしたの?」
「料理を作りに来たんだよ」
「病院ではあまり料理は作らないって言ってたじゃない」
「そうだっけ?悪いな、チラシ作ったばかりなんだよ」
「見せてくれるかな」
彼女は以前から付き合いがあったわけでもなくわたしの病状
と高血圧から料理を作ってあげようと思ったようで今日来たのは3度目。今のままでは死ぬだろうと心配になったのかもしれない優しい女性だ。しかし料理を作って見てわかったのだがあまり料理が上手ではなくどちらかというとわたしのほうが美味い。
「それじゃご飯をよそってくれる?」
「見るだけじゃダメ、食べるというのか」
「食べなきゃどんな素材かわからんでしょ」
「そりゃそうか」
濡れて潤い薄く伸びる唇が開きちらしを吸いこむ。呑みこむと手で抑えるその仕草が可愛く思え見つめてしまう。眼の大きな女性は更に眼を大きく見開き話した。
「あらおいしい、でも魚介類もいれなくちゃダメね」
「ちらしの元使ってるんでしょ」
誰にでも出来るちらしの元さえ使えば自分にもできるだろうと余裕を持つがわたしはその彼女の余裕を打ち砕いた。
「そうさな酢は大さじ3、砂糖大さじ3塩は大匙1ってところか」
「ふ。ふーん、そうなんだ」
「血圧や頭痛はどうなの」
「頭痛はなくなったけど血圧は130くらいだな」
「まだちょっと高いね」
「頭痛はなくなったけど身体がふらつくんだよ」
「先日も足腰にちからが入らず自転車で倒れた」
「・・・」
チラシの話はいつの間にか飛ばされ推奨されたアボガド、心臓に良い食材だからと病院で栄養士である彼女から勧められたものだ。
「アボガドは食べている?」
「うん、サンドイッチにして食べているよ」
「サンドイッチか他には何を使っているの」
「バナナやリンゴを使っているかな」
「今度お泊りして一緒に朝に食べようかな」
「冗談だろ?予備の布団なんてないよ」
「ア、キャキャ」
帰り際わたしに背を向け彼女は目尻に皺を寄せていたのが鏡に映って見えた。
最近は薬を呑んでいるので血圧は130以下なのだが血圧が高い時心臓の膨大化のせいか人にはない能力がありそのひとつに雨を呼ぶ能力があった。晴れの天気予報がでていても雨になったものだが近頃は雨を願っても晴れ能力は消えてしまったようだ。不思議な能力はそれだけに留まらず心臓か大脳か能力の源は不明だが霊的な夢を見なくなったし部屋に霊を呼ぶ力もなくなったので霊を消す能力も消失したと思える。身体の退化即ちふらつきや眩暈など日々増加して
死への道が近くなっている。
お彼岸になり自宅の分と母の実家の分の献花する花をスーパーで買ったが線香を買うのを忘れてしまった。家の墓参りが終えた翌日に母の実家へ墓参りへいくことにした、母の実家は長男夫婦がおり手入れはきっちりされているが隣にある親族の墓は親が他界し娘だけ存命な為にろくに墓参りされてなくお線香をあげた跡も献花もないので
わたしは本堂で献花を買い墓にあげた。実はその家と私は奇妙な縁で繋がりわたしが5才に満たない頃飼っていた牛の生態を教えて貰ったことがあったのだ。家に戻るとそのこはおらずもっと幼い妹らしき女の子はいるものの教えてくれた女の子は額縁の写真にあった。
おわり
この物語はフィクションであり実在の
人物団体には一切関係ありません
