[短編小説][創作] Cotton Road(綿の道) | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

列車をあまり乗らないわたしが所要で大都会の駅で帰宅するた

めに列車を待っているとショートヘアが良く似合う小顔のモデル

とも思える綺麗な女性がわたしに向かって近寄って来る。女性

が向かって歩く場合、わたしの背後に待ち人がいる又は文句を

言う可能性が大概ある。しかし女性はわたしの顔を見つめ立ち

止まった、想定外の行動でわたしは意表を突かれた想いである

白く小さな手のひらを広げ差し出した。

 

 

「切符落としましたよ」

そこで確認するとズボンのポケットに入れた切符がない。

「あ、すみません。ありがとうございます」

拾て頂き感謝なのだが良く落ちた切符を見つけたものだ。お礼

として食事をご馳走しようと考えたが断られる場合もある。しかし

誘ってみた。都会の駅は人が世話しなく歩く雑踏の中、何を急

いでいるのかわからない。多くの人が同じ方向に歩く様はアリの

行列、わたしと彼女の二人だけが動く中アリの行列は停止した

様に思える。

「拾って貰ったお礼に食事に行きませんか」

「う~ん、そこの立ち食いソバだったらいいわ」

駅のホームにある立ち食いソバでならいいと言う。わたしとしては

ファミリーレストランでゆっくり会話したかったが彼女にも都合が

あるのだろう、強引に誘うことは出来なかった。立ち食いソバでは

早く出来るのが利点ではあるが人の入店が多ければ順番待ちを

しなければならずその間、会話することも出来た。

 

「今日はこの町で撮影会でもあるのかしら?」

「え?なんで」

「よくオートサロンでモデルの子達を撮影してますよね」

「いやいやあくまでメインは車の撮影ですよ」

「知ってるのよ、一人の子を何度も撮影したじゃない」

「・・・」

「それでね、あの人どこに行くんだろうと思っていたら切符落とし

 たじゃない、それで拾ったのよ」

どうやら彼女は切符発券機でわたしを見つけそこで切符を落と

したのを見たらしい。すこしはわたしに興味があるから何処へ行

くのか見ていたのだとわたしは考えた。

 

「実はね自宅に電話でおめでとうございます、あなたは当選した

 と言われてね、行ってきたんですよ」

「ああ、それ行っちゃダメよ」

「そうなの?」

「良いお金貰えるからアルバイトした事あるんだよね」

「ひょっとして契約しちゃったの」

「・・・」

「あそこに行くと契約しなくちゃ事務所から出れないと思わせる

 脅迫するようなもんなんだよね」

「契約しちゃったよ、詐欺みたいなもんだ」

「仕方ないよ、あいつら合法すれすれで商売してるから警察も

 取り締まれないのよ」

「可哀想だから今度一緒にご飯食べようよ、作ってあげる」

 

奈落に落とす邪神があれば拾い上げてくれる女神がいるという

ことだろうか、円らな瞳で微笑む彼女が天上から救いに現れた

女神にしかわたしには思えなかった。女神のような彼女がご飯

を作ってくれるという、それ即ち彼女の部屋に誘われていると同

じ。だとすれば素晴らしいプロポーションをした彼女を堪能でき

る、そう思えばズボンの中心部は盛り上がりテントを張った。

しかし世の中そううまくはいかないもので後日彼女からの電話

で彼女の部屋ではなく彼女の実家へ行くことになった。

 

「あのね実家ではカレー屋さんをしているの、結構有名なんだよ」

「なんて名前なの」

てっきり彼女手作り料理とばかり考えていたわたしには残念無念

といったところだがまだ出会ったばかりで友人にもなっていない。

そう考えれば手料理を作って貰えるなどと考えたわたしが甘すぎ

た訳で彼女を責める言葉など出せる訳がない。

 

「インドネシアカレーCOtton Lineっていうのよ」

「聞いたことあるよ、シナモンを混ぜたナンのようなパンが出るそ

 うだね、チキンカレーもおいしいって評判だよ」

「来てくれたら思い出に写真撮ろうかな」

「なんの想い出かな」

「わたしね、自宅のレストランで好きな人の顔に付いたカレーの糟

 を舐めてあげたいなと思っていたの。好きな人が来てくれた思

 い出かな、えへっ」

 

新内閣の不甲斐なさに業を煮やした元総理大臣の田中角栄氏が

戻り裏から政府を動かしていた安倍定を隠居させ独裁者として大

統領を名乗った晩秋、わたしは険しい山の尾根にきていた。尾根

なのに水が流れる音が聞こえている。右側は峡谷となっているが

遥か下に見えるのは絹の糸としか思えない清流だった。溶岩が

流れ固まった赤黒の岩場を歩けば崩れやすく石灰岩と思える。

その道を案内する彼女は慣れたもので跳ねるように進んでいった

岩場の幅は僅か30センチ程で崩れやすく体重の掛け方を間違え

ると簡単に足が滑っていく、そんな危うい道を彼女は先に進んで

いく。あっと言う間に遥か彼方へ進んだ彼女は霞にしか見えない

くらい離れてしまった。地鳴りを伴う低い音、頬に当たる水滴に気

づき轟音と共に右手に現れたのは滝だった。見上げても滝の上

部は見えず30メートルはあるかと思えた。滝飛沫のせいで岩場

は崩れやすい岩は滑りやすくなって歩くのを躊躇ってしまう。陽

炎のような彼女が大きく手を振って早く来いと催促するので仕方

なく勇気を持って踏み出した、その時足は滑りわたしは峡谷へ落

ちて行く。落ちゆく間、山の岩肌が流れるように見えていた。

「う、わぁ~」

 

わたしは自宅の部屋でベッドから落ち衝撃で眼が醒めた。今まで

のことがすべて夢であった。今から考えるとショートヘアだった彼

女も変なことがあった、ホームにいた通行人が感所の存在を気づ

いていないように歩き去ったのである。ひょっとしたら彼女は幽霊

だったのかもしれない。

 

なぜなら切符を入れたズボンのポケットにはファスナーがついて

いたから切符が落ちる訳はなかったのだ。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません