[短編小説?][創作] 情欲の掟(格差社会の婚姻) | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

山で滑落した妻香那江は厳太郎の友人、さらに娘が好意を寄せ

る男性波島彰人にオンブされ下山の途中だが厳太郎は妻の姿

を見ていると嫉妬の炎に焼かれてしまう。1年前山で滑落した時

波島に救助されその時足を痛め現在の香那江の様に波島から

オンブされた。そのときに感じた気持ちよさは快感に近く相手が

男ながら”もっと抱いて”と思ってしまった、企業の社長をする厳

太郎はこれまでの人生で男に好意を抱いたことなどない普通の

男性として女性に対してだけ欲情してきた。波島の背中から降ろ

されると波島への恋心は消え同時に足の痛みもなくなった。厳太

郎はその時波島を想った心を妻の香那江を見て思い出してしま

った。少しでも傍にいたいそれが波島を娘に紹介した理由でもあ

る。

 

香那江は彰人の背中で抱かれ心地よさを感じた、それは幼かっ

た自分をおぶさる父の背中を思い出す。なぜかはわからないが

波島の背中に乗ると気持ちが良い、まるで裸で抱き合っている

時の感覚さえ思い出してしまう。香那江は快楽によって骨折した

足の痛みは感じなくなていた。香那江とは対照的な感情が湧き

出しはじめたのが娘の華憐である。はじめは痛がっている母を

心配し自分で波島にオンブしてと頼んだが、頼んでみたが次第に

母の苦痛に歪む顔は変化しマッサージ機で癒された顔に変わっ

ているものだから華憐としては面白くない。

”あたしだって波島くんにおぶさった事ないのに”

嫉妬など華憐は知らず胸に蟠る黒い心、怒りをはじめて知った。

 

波島彰人は出会い関わる人々を魅了してしまう、性格が良いとか

顔が良い格好いいと思えるからえはなく人間の本能から魅了させ

てしまうようだ。東条厳太郎が娘と交際を望んだ理由は自分が救

助されたのもひとつの理由かもしれないが魅了されたのが大部分

を占める。痛みが消えたと考えた厳太郎は妻をおぶさるのを変わ

ったのは波島の疲労を考えただけではなく嫉妬したからであった。

「彰人さんどうもありがとう」

「波島さんだ、慣れ慣れしい」

「あたしだって波島くんなのよ、それを名前で呼ぶなんて」

もう波島の背中から降りても大丈夫なのに降りようとしない母を

見て苛つき文句を言おうとしたが父の厳太郎が交代したことで

華憐の捌け口がなくなった。波島に後ろから抱きたいが疲労困憊

で波島の膝は震えている、そんな波島におんぶしてとは言えず華

憐は葛藤した。そんな時波島から肩を貸して欲しいと頼まれ狭い

肩幅の華憐の肩に波島の太く逞しい腕が載りなで肩を男の腕が

掴んだ。闇で包まれた山の中、ライトが照らすのは登山道で人に

光が届く暇はないが華憐の左手小指のシミは消えた。

 

あれ程、波島を嫌悪していた香那江だったが山で救助されたのも

有り娘と波島の結婚を意識していくようになる。波島の書いたコラ

ムが気になり山岳雑誌2015年6月から2016年5月までの1年

分知り会いを通して手に入れ時間がある時読むようになった。とい

うのも香那江は専業主婦ではない、グループ企業のなかにホテル

業があり司法書士の資格を持つ香那江に厳太郎はホテルを任せ

た。だがビジネスホテルと言わぬばかりのサービスに評判はあま

り高いものではなく経営は他の者に任せ一線から退き主に事務的

なことをしている。経営不振にはならないが進化がないそれが今ま

での観光地ホテルだった。最低限のサービス、見合う料金体勢か

らくる宿泊料金の安さが売りだったホテルだが経営会議で香那江

がサービス向上を売りにする新戦略を進言したことでホテル外観

は今までと変わらないが部屋の内装、料理長やフロント係の入れ

替えをすることでサービスは変遷の時を迎えた。ホテルは時代に

沿うホテルへと変わったのは香那江に変化が現れたからでその変

化を与えたのは波島かもしれない。

 

波島は華憐に喜怒哀楽を教えた。哀だけで思秋期を過ごし暗く内

気だった少女を明るく前向きに変え母の香那江には楽いわば愉し

みと喜びを。家に閉じこもる娘には結婚さえ望みはなく過行く月日

に楽しみはなかった、それが波島と出会い住居を探す楽しさ、家具

選びの愉しさ、近い将来くるであろう娘が着るウェディングドレス選

び夢だとばかり諦めていた初孫の存在、同窓会で同級生が孫

面倒が大変だと嘆いていたが自分には縁がないと諦め聞くだけだ

った。だが自分にも孫の面倒をみる苦労を味わうことができる可能

性は0ではなくなったのだ。そうなると自分の描く夢に向かって香

那江は突き進む、その踏み出した一歩目がマンションの購入だっ

た。厳太郎は登山することによって喜怒哀楽を既に理解していた

が妻がマンションを買うといいはじめた事により夢ではないが計画

が持ちあがった、それが結婚祝いのプレゼントである。まだ結婚

るかわからないし妻が買うであろうマンションも無駄になるかも

れない、人は無駄だと言うだろうが自分が満足すれば無駄では

い、そしていつ結婚するかはわからないということは選択する

間は充分にあると厳太郎は思った。

 

東条家にはキッチンが2部屋存在しシステムキッチンも2台設置

されている。香那江はほとんど料理しないために相互互換でどち

らのキッチンも使用人が使って良いことになっている。詩織はメイ

ド長としてメイドへの指示管理を任されキッチンで夕食の為に今

晩のメニューを他の使用人に説明していると雇う側にいる東条香

那江がコーヒーカップを持って現れた。詩織がまだ東条家に入っ

たばかりの頃は奥様である香那江に取りに来るのが遅いとよく

怒られたものだった。

「奥様、すぐ部屋まで伺いましたものを態々お越し頂く必要は

 ございません」

「いいのよこの程度、わたくしでも孫の面倒くらいみたいわ」

「お嬢様に出来たのですか?」

「まだなんですけれどね」

貫禄威厳に溢れた香那江、切れ長の瞳から鋭く光る眼力など

それは以前と変わらないが時折微笑む笑顔を見せ明るい表情

は昔にはなかったこと。

「ご多忙とお見受け致しますが経営は順調らしいですね」

「アハハ、もう順調どころかお客様が多すぎてお金の使い道に

 困った程、高い出費だと思ったマンション購入だけどお金が

 倍になって返ってきたわ」

「奥様は変わられましたからそのお陰で成果が出ていると存じて

 おります」

「ところで華憐はバレンタインデーにチョコを贈ったようだけど3月

 のホワイトデーに何か頂いたのかしら」

「至福の表情で戻って来られ指に見た事ないような指輪をしてお

 られましたので多分指輪を頂いたのかと存知ます」

「あら・・・そうなの」

 

指輪やネックレスは相手を拘束するといった意味でもある。詩織

から詳しく聞いたところ天然石を削りだした物で手作りらしい。娘

である華憐のことは公にしていない為結婚となっても式をあげる

事はできない、いまだ身体のシミは残り対人恐怖症も残る華憐

にはまだ見知らぬ人に合わせるのは無理とも香那江は考えた。

だが華憐にあった酷い顔のシミは薄くなり遠目からは気づかな

い程に改善しいつ花嫁衣裳を着ても違和感は感じないだろう。

母の香那江は二人を結婚させようと考えている、その為の新居

は手配した、家財道具は詩織が選び出資したのは厳太郎だった。

本来ならば波島の両親と相談するところだが今の華憐を面どお

しさせる訳にはいかず事後報告するしかない。しかし結婚するの

は二人の意思、二人に相談するのは必需だった。香那江が家で

身勝手に計画を進めようとしていた頃、厳太郎は馴染み深い

自動車ディーラーで営業マンと相談していた。

「結婚する友人に車をプレゼントしたいが君は何を進めるかね」

「結婚するならやはりSLCといったスポーツカーがよろしいかと」

「う~んそれも悪くないんだけど高級過ぎては・・・」

「うちの車は400万以上しますからどうしても値がはります」

「希望はコンパクトでありながらパワーがある、安過ぎず高すぎな

 い車はないかな」

「見た目で高級感がなければ高いくるまでも構わないのですね」

「うむ、そうなんだよ」

「・・・あります、ご希望通りの車が但し1000万しますよ」

「それで構わない、但し納車時には国産と変わらないロープライ

 スだと答えてくれ。値段は言わずロープライスと言い張るように」

 

9月下旬雲ひとつない快晴、例年にない木枯らしが吹きつける中

真珠色するベンツ560GEが軽井沢にある教会に駐車されていた。

扉から出て現れたのは正装する波島と煌びやかなウェディングドレ

で着飾った華憐の二人は格差を乗り越え40歳と25歳という年

の差さえ凌駕し二人で歩むべき人生がこれから始まろうとしている

ふたりに花びらを降り掛けたのは詩織や華憐務める職場の女性達。花びらの中で喜ぶ二人の幸福(しあわせ)に呼ばれたのか風に紛れ飛んできたのは純白の羽根、鴨か白鳥かわからないが白く柔

らかな水鳥の羽根に二人は包まれ祝福された気分となる。呪によ

って全身シミが浮き出ていた肌は波島と出会うことによって薄くなり

今日式を挙げたことで華憐の顔からシミは消え醜いアヒルの子は

美しい白鳥へと変貌を遂げた。

 

そして

今、耐え難き棘の道を歩んできた華憐の幸せが始まる。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません