わたしはたまたま気を惹かれたTVドラマ、家政夫という言葉が
気になり見て見ることにした。会社では出来る独身OLだが家事
が出来ず自宅のマンションは新築ながらまるでゴミ屋敷の様相
そこで妹が家政夫として中年おやじを差し向けたという話だった。
50才後半のわたしとしては家政夫の中年おやじが人ごとには
思えない、しかし20代の小娘にこき使われるというのも納得で
きるものではなく二人に恋愛感情など芽生える可能性などない
これは一体どうなるんだと1話から続けてみてみると・・・
なんと仕事として家政夫をしている中年は50才、妹から強引に
雇う羽目になったOLは28歳まるでわたしと数年前病死したマヤ
と同年代であるとわかりTVドラマが人ごとには思えなくなる。
私としても家事全般卒なくこなすのではあるが家政婦
比較するのも烏滸がましい程劣るもの、そしてマヤといえばドラマ
の女性とは違い料理に関してはわたしの上をいくのだった。
マヤが他界して8年と言う年月が過ぎ彼女のことも忘れいで日常
を過ごしていた。あのドラマはマヤとの思い出を彷彿させマヤと
いう女がいたことを記憶に蘇させるものだった。マヤの死後、母君
から愛用していたライターを遺品として頂き大事に保存しておくと
無用の長物に成りかねないと考えたわたしは使い続けている。一
時はどこかに紛失したと考えネットのオークションから限定ジッポ
の購入をしたり発火装置が破損しいたので部品を買い替えたりし
た。最も遺品として頂いたオリジナルは同一品を購入した後に見
つかり購入品は保存に至った訳である。こうして長く使い続けてい
るライターはチタンコートされた塗装も細かい傷がつきライターケー
スの端は紺色塗料が剥げはじめているのが現状だ。頂いた時点
では新品同然の美しかった外観だったので今の惨状をマヤが見た
ら怒るかもしれない、と思いながらも煙草に火をつけた。ドラマを見
たせいか天井に浮き出た大きな瞳がマヤの瞳と重なったのかもし
れずわたしは吐いたタバコの煙を天井に吐き捨てた、何をして天井
の見開いた左目は動ずることがなく黒目も何かを反射してるように
輝いていたのだが、この時異変がはじめて起こったと思える。
一瞬だけだが綺麗な瞳が閉じたような気がした。煙が沁みて目を
閉じるのは生身の人間ではよくある事だが壁に浮き出た瞳が動作
するのは信じ難いものでわたしは天井の瞳を見返した、するとなぜか瞳が以前より見開いている。思い違いかと一瞬思ったがそうで
はない事がすぐにわかる。何故なら黒目が移動し中央よりに変わったからでそのせいで瞳がわたしの顔を見つめている状態になって
いる。突然現れた瞳であるならば恐怖する心で視線をはずそうとするだろう、しかし数か月に及び見続けた瞳ならば多少動いても恐怖は生まれず動かない筈の瞳を再度動くか検証してみたくなるもので
わたしはしばらく瞳を見続けた。その時である天井から若い女性の
顔が髪の毛を下に垂らして現れたものだからわたしは度肝を抜か
れた。
「ばれちゃったね」
顔を見せただけでなく音声までも発した、そんな状況にあったら人
は冷静ではいられないものだ。まして天井に浮き出た左目だけでは
個人の特定など無理な話で呪いを掛けにきた悪霊とも考えてしまう。
「あら、そのライターってもしかしたら・・・」
天井から頭をつきだした女霊はライターが気になったようで部屋に
降りてわたしの傍へ近づいてくる。
「よせ、来るな。」
「何言ってるの?ねね見てこの胸!Dカップなんだよ、触ってみる」
目の前に現れた女霊は半透明でなく生身の女と同様に見えるがわたしには人間と幽霊が見分けがつかない時があり話をするどころ
か接触するのも可能な時があるのだ。女霊はブラウスの胸元を広
げると白い柔らかそうな盛丘が弾けるように動くのを視認した。確
かに豊かな胸を触れるかもしれないだがわたしの手を止めたのは
天井から抜き出て現れた女霊だと思える事実。
「おじさんに胸の写真を見せた時はCカップだったんだよね、なぜ
か膨らんでしまったんだよね」
わたしは胸の写真と言われ思い出したのが乳がんの為除去手術
しなければならなく記念の為病院で撮影してもらった写真だと言わ
れたのを思い出した。
「おまえマヤなのか?」
「そうだよおじさん」
女性にも性欲があるからとわたしの怒涛する陰部の写真が欲しい
と強請った事があった。さすがにそんな撮影は出来ず写真はあげて
いない。彼女は生前死んでも化けないから安心してとわたしに言っ
ていたというのになぜ8年たった今頃現れたというのか。
「なぜ今頃化けて出るんだよ」
「お化けじゃないよ、死んだ祖父が転生するのを拒否したからね
わたしが人間に生き返れたの」
「だからね、お嫁に貰ってね」
突然押し掛け女房に来られても困るというもので人間50年生きて
いれば女性として何が必要くらいは理解している。10代の乙女な
ら下着だけでなんとかなるが成人した女性ではそうはいかない。
寝間着も最低2種類、化粧道具に数種類のハンドバッグや貴金属
サンダルにパンプス、ヘアゴムにカメオなどのヘア小物、衣類だけ
でも頭痛がしてくるくらい種類があるのだ。
「う~ん、これがいいかな、ちょっと大きいけどまぁいいか」
「おまえ、どうしてそれを・・・」
マヤはわたしが趣味としてコレクションしていた女性用の下着を見
つけ出し手に触り選んでいた。
「ふむふむ、ここがブラとガードルで上がパンツか。上の小さな引
き出しの中は君のトランクスなのか・・・次はこれを穿こう」
箪笥の引き出しを開けながらマヤは一人で呟きフリーサイスの長
袖Tシャツを見つけては自分に切れるか自分の身体と合わせてい
る。
「今夜から泊まる気なのか、寝る部屋なんてないぞ」
「ん、ここにベッドがあるじゃん」
「ここで一緒に寝るというのか?恥じらいはないのか」
「抱いてほしいくらいだよ」
「・・・」
若い女性と就寝を共にしてもわたしに不安は無く何も思う事はな
い。性欲が失せたわたしには不安はない、あるとすれば寝ていて
熱く安眠を邪魔されることだけが嫌だった。だが女性に希望も夢も
失ったわたしと違い若いときから闘病生活が長く性生活というもの
が未経験であるマヤにとって期待はおおきなものだったかもしれ
ない。
朝目覚めるとなぜかわたしのパンツからは肉の棒が頭を出して
いたのに気が付いた。隣でベッドに横たわるマヤの顔は満足そう
で寝ながら舌舐めづりしていた。
今日はショッピングに行こうと言う彼女。彼女なりに生前一緒に
何も出来なかった事に対する穴埋めをしようといろいろ考えてい
るようで計画を練っていたのも頷けるものだがあの頃と違いわた
しには現在役目がある。そのひとつが神社の町代であり明日は
例大祭。例大祭には自治会長や消防隊員、公民館長や生産会
長など地域で役目ある顔役が集まるもので前日に準備をするの
が町代などの神社の役であり今年は防犯目的から前日に開けた
本殿の監視をする必要がありわたしは泊まり込みしなければな
らない。
「すまない午後から神社に行くんだ」
「夕方には帰ってくるんだよね」
「ごめん、今日は泊りこみなんだよ」
「新婚初日にこれか」
「ごめんな、皆本殿に泊るのは怖いっていうんだ」
例大祭の準備には十数人集まるが作業を終えればみな解散し
本殿の留守番ひとりだけがそのまま残り薄暗い本殿内でひとり
夜を越さねばならない。深くなる闇の中本殿で過ごすのも経験
そう考えたわたしは引き受ける事にしたのだ。
「わたしも泊まろうかな」
「・・・それはまずいだろう」
祭りに女性が来るのは問題ないが神社の正式な儀式には女性
が一人も参加することはない。神社というものは神を祀っており
主神というものが存在する。主神が天照大神の所為とも言われ
る。住み込みの神主が存在しない神社であるからその代行とし
てわたしが務めるのかもしれない。
「君ってさ以前公で婚約者と宣言したことあるよね、式はあげて
ないけど正式なわたしのご主人様でしょ」
「まぁそうだな」
「だったら新妻の紹介ということでわたしが玉座に入っても問題
ないわよね」
本殿で妻意外と遊戯するのは確かに問題かもしれないがマヤ
の言う通り本妻と過ごすには何の問題も起こらないかもしれな
い。
「とりあえず同行しなければ何もわからないじゃない?もしもよ
わたしが本殿に入ることが神の怒りとなるならばわたしは
神隠しや本殿に入るのを拒絶されるでしょう」
「そうだな、とりあえず行ってみるか」
マヤはわたしから見えないように嫌らしく微笑んだ。
Fin
この物語はフィクションであり実在する人物、団体
には一切関係ありません