[短編小説][創作]  特異能力 描く者 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

                

 

わたしの名前はカスミ、パートで介護施設に働く40代の主婦。

デイリーケア”野バラの園”での仕事は送迎用のバンに同乗し

高齢者を迎えに行くことから仕事がはじまります。何軒かの家

を訪問し野バラの園へ戻るとやらなけれいけないのばまず体

温測定、日本が未知のウィルスにより多くの死者を出したここ

北の大地は過去の経験を踏まえ体温測定とアルコール消毒を

する決まりとなりマスクしないものは入園拒否が絶対のルール

になったのです。

 

わたしがお客様、お客様とは当園を利用される高齢者の方々で

あります。そのお客様を連れて戻ると元気な笑顔で声をかけて

くれる筈の菜波がいつもと違い落ち込んでいました。

菜波とは介護士の若い女性でこの園に紹介したのはわたしで

菜波が近所に住んでいた事もありわたしが実家暮らしのころか

ら菜波とは親しくしていたのでした。名波もわたしを姉のように慕

ってくれわたしも実の妹のようになんでも相談にのってあげて

ました。

「どうかしたの?元気ないね」

「あ、カスミ姉さんおかえりなさい」

「なんでもないっす」

元ヤンキー、やんちゃしてたと今では言うが元ヤンというほうが

菜波には当てはまる。普段は礼儀正しい介護士として評判な名

波ではあるが窮地に立たされたときだけヤンキー言葉が出てくる

まだ慣れない見習い勤務時、目つきが悪くほとんど笑わなかった

菜波に注意し説教したからこそ性格が丸くなってくれたものです。

 

「あんたの言う事ならなんでも信じてあげるから言ってみて」

「実は・・・友達と廃線見に行ってからおかしなものが部屋に現れ

 るようになってここ数日寝てないんっす」

「ああ、そっちか」

わたしも以前は霊章に悩まされた時があって家族ともども悩まさ

れた時がありました。霊視はできるもののわたしに対処できる訳

もなく知り会いの霊能者さんがやってくれると言うので半信半疑

で任せそのおかげで霊章から解放されました。ですから名波の

力になれる自信はありませんでした。

 

「毎日、夜になると白髪頭の老婆が寝ているわたしの腹部にのり

 真黒な瞳から目玉がジワリと落ちてくるんですよ」

「やばいじゃんそれは」

「でもどうしていいかわからねぇので」

わたしには知り会いに霊能者がおります、彼女は浄霊を出来る

数少ない霊能者のうちの一人。早速電話連絡して浄霊を依頼し

てみると浄霊は値が張ると言われましたが今はそんな事を言っ

てられません。

 

数日後、知り合いの霊能者からわたしに連絡がきました。うまく

いったと思っていたのですがそうではなかったのでした。

「あれはわたしにはどうにもならないわ、ごめんなさいお金はい

 らないから手を引かせて欲しい」

「浄霊すればいいんですよね」

「悪霊ならね大概浄化できるけどあれは悪霊なんてなまやさしい

 ものじゃなかった。妖魔のたぐいなのよ」

「では彼女を諦めなさいと?」

「・・・」

霊能者の知人は無言の後、思いもしなかった人物を頼りなさいと

言いました。

「あなたの友達に霊道を作ったといった人がいるでしょ」

「あははは、冗談を言うおじさんですね」

「でもあの人にそんな力あるとは思えませんよ」

「わたくしもね冗談を言ってるのじゃないの、あの人は確かに霊

 道を繋げた。霊視したからこそわたしには見えた、そして背後

 に現れた人物もね」

悪霊か守護霊でもみたのかとわたしは考えましたがその名前を

聞きわたしは驚愕しました。

「あの不動明王様が現れたのよ」

「本当ですか」

「間違いないわ、鰓はった顎と何でも見通すような涼しい眼」

 

かくしてわたしは名波をまもる為、遠く離れた地の男性友人に

連絡してみたのですがお金を払うというわたしの頼みに彼はい

い返事をしてくれずダメなのかと思っていました、会った事が

ないわたしに彼が不信感を抱くのも無理のない話だったのです

駄目なら”今の話はなかった事に”と言おうとしたら

「そういう仕事をしてないからお金はいらない、失敗しない自信

 などないからね。カニ喰わせて貰えるならやってみてもいい」

「でもね、相手は独身の若い女性でしょ、現地に行かないとど

 うも出来ないから。部屋にあげてもらえるの」

「大丈夫わたしが説得しますから」

 

菜波は25才の彼氏いない歴5年、欲求不満気味でしかも若い

男性より中高年が好きなおやじ趣味どちらかといえば綺麗な部

類に入る名波だが性格のきつさが災いし近寄る男はいない。

そんな女性が”魅力的な男性”としてだけ紹介を受けた50代の

会った事がない男、気にならないほうがおかしいというものだ。

美形なお姉さんと名波が慕うカスミから言われたので信じるな

というのが間違いかもしれない。だがカスミ自身も会った事がな

く顔も知らないブログだけの友人、加藤義正。カスミは部屋に招

き入れる為知らない顔の加藤を”魅力的な男性”とだけ伝えた。

冴えないおっさん、イケメン、ナイスガイ、キモイおやじなどと言っ

てしまうと部屋に入れないもしくは騙されたと思うだろうが魅力的

とだけ言えばあとは想像だけ、想像し連想するのは個々の自由。

 

こうして加藤と名乗るおっさんとカスミが白い清楚な名波の住む

賃貸マンションに訪れたのは台風一家が去った翌日の空が青く

澄んでいるいた土曜日の朝だった。1階ロビーで入室番号のつく

インターフォンを押すとすぐに開けるからという言葉が返る。

二人ともはじめて訪れたマンション、試行錯誤を繰りかえし部屋

の番号を探し歩いて迷いながらもやっと菜波の部屋へ到着した。

 

ドアを開けると。

「お待ちしてました」の声と共に現れた菜波の姿に二人は呆然と

なった。

「ちょっと菜波、なんて格好してるの?着替えてから出なさいよ」

「え?おかしいですか、お客様を迎える正装ですけど」

白いレースの下着姿、レース生地を通して胸の中心にある突起

物が透けて見えるし下半身は3角の薄いナイロン生地を穿く。

菜波は相手がどんな男かわからなかった、もしインターフォンの

画面から好みではない男性だとしたら厚手の服を着ようと考えて

いたのだが着なかったところをみると加藤は菜波の目に叶った

というところだろう。

「そんな損格好して加藤さんがその気になったらどうするの」

「わたしは別に平気ですよ」

「ぼくもきになりませんよ、だって投網越しにみえるワカメ林です」

そういえばこの加藤という男から以前性欲が消えて若い子を見て

も動揺しなくなったとカスミは聞いたことを思い出した。同時にカス

ミは小さく舌打ちする声を聞いた気がした。

 

儀式の準備から完了するまで1時間は最低でもかかるだろうと考

えどうやってこの男を攻略してやろうかと策を練りながらお茶を出

す準備をしている菜波。菜波にとって加藤はネギ背負って現れた

カモだったようだ。

「終わりましたよ」

加藤の告げた声に菜波の策がぼろぼろと崩れていくのを感じた。

菜波が寝室に戻ると壁紙には老婆の姿が浮き出ておりその姿は

まるで急速冷凍でもされたように動く途中で固まっている。加藤の

除霊は浄化でも取り除くことでもなく力の根源と霊体を同時に身

動き硬め静止画として拘束する能力だった。カスミはすべて納得

した、男の部屋に30数体の霊があるにも関わらず霊章が起こら

ない事に疑問を感じていたのだが霊そのものを緊縛できるのであ

れば心配はない、逆に金縛りをかけるようなものなのだ。

 

料金が発生する場合、受領したものには作業に対する責任がある

支払い側にとっては作業が完了した時点で請け負った者とは関係

が切れる、あくまで商売の関係にあり割り切る間柄ともいえる。

だが金品の受け渡しがない場合はその限りではない、ということは

以降友人関係が成立するかもしれないと菜波は考えた。ところが

カスミから成功報酬はカニということを言われ菜波は喪失感が起

こる。報酬があるということは契約なのである。

「菜波あんたがカニを奢りなさい」

「じゃちょっと着てきますね」

「なに、その恰好が正装じゃなかったの」

「姉さん、これはおうち限定の正装なんですよ」

菜波の言葉を聞き加藤は若い頃に通ったサービス付き浴場を思い

出さずにはいられなかった。あの店の場合、下着姿が営業服。

 

カニを食べながらも菜波は必要以上に加藤に寄り肩が触れ合う

くらいに寄っているせいで時折シャンプーの匂いが付近を舞い柔

らかな髪の毛が加藤の頬を叩く。席を離そうとする加藤の行為に

菜波は微笑みながら更に席を寄せて詰める。

「あの義正さん、名前で呼んでもいいですよね」

「え、あ、構いせんが」

名前で呼ばれたのは数十年ぶりだった加藤は鼓動が高鳴った

「悪霊は招き入れない限り家に入れないと聞きましたが?」

「そうですよ、招きいれなければね」

「だけどいつの間にか入ってきました」

「2通りの方法があるんですよ、ひとつは身内のふりしてドアを

 開けさせる、もうひとつは夢を見させ夢の中で開けさせる」

「そういえば誰かが来たと思ったのに開けてみたら誰もいなかっ

 た事がありました」

強くなればなるほど霊は自分でドアをあけて入ることができるが

現代の多種多様する施錠では鍵の構造を知らないとどんなに

強い霊でもあけることが出来ない、ただ一旦構造を理解してし

まうと施錠していても悪霊には役立たない。

役立たないといえば加藤の陰部は菜波のシャンプーと石鹸、

そして体臭が混じった香水さらには定期的に押し付けてくる

菜波の柔らかな二の腕のせいで久々に海綿体に血が流れ

込んでいた。捨てたと思った性欲ではあるがあろうことか復

活をとげたようで今の状況が加藤に堪えづらくなっている。

加藤を思いやりカスミは菜波を先に返す事にしていたようで

タクシーを呼んでいたようだ。タクシーが来てしまえば仕方

なく帰るしかなく、後ろ髪を引かれる思いで菜波はこの場を

後にした。

 

「加藤さん一度だけ抱いてあげれば良かったのに」

「遠距離恋愛はコリゴリですからね」

「そうなの?あの子頑張ったのに可哀想」

こうして3人は食堂を後にし別れた。

 

北の大地から戻り3週間が経過した彼岸入りした晴天の日

加藤の携帯には見慣れない番号からの着信で鳴り響く。

加藤は壁紙を絶対燃やしてはいけないと言い忘れていた。

相手は菜波からで御焚き上げしてもらったら再び老婆が現れた

そうだ。また北へ行く羽目になったと加藤から聞いたわたしカスミ

は彼には北の魔物が取り憑き苦悩する姿を想像するとなぜか失

笑してしまうのでした。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません