高校2年の春、体育着の着替えで菜摘子は自分の胸を見て
相も変わらず成長のない胸、それに引き換え沙織の胸は豊か
なDカップ、思わず見惚れてしまう。
「なにっ見つめて?」
「いいなぁと思って」
「なっちゃんの胸は人より成長が遅いだけよ、気にする事ない」
2年になり沙織は成績が落ち込みBクラスに下がった。
沙織に引き換え菜摘子は頑張りBクラスに上がったのでクラス
メイトと今年はなっていた。雅代はというと昨年と同じCクラスで
今年は雅代が会いに来るようになった。
「あ、栄養が胸に流れ込んだ馬鹿がきた」
「ひどいよ沙織さん、それは」
「いいのなっちゃん、モデルになる女って性悪ばっかだし」
雅代は成績が上がらないもののなぜかCカップだった胸が異常
発達しEカップとなってしまったのである。
季節は桜舞う春から熱い夏へそして今は秋の長雨、教室から窓
ガラスに流れゆく雨粒を見て菜摘子は決心した。検事を目指す
沙織、弁護士に夢を抱く雅代共に自分とは違い夢に向かって突
き進んでいる。
「わたしはやっぱり全Aカップ女性の為に頑張りたい」
「五条さん、独り言は小さな声で言ってね、今は授業中だから」
教師が問題を解説しクラスメイトは静聴して聞き入っていた、そこ
で菜摘子が大きな声で宣言するかのような声で叫んだから教室内
は笑いの渦中、その軸に当たる中心点が菜摘子だった。
授業合間の短い休み時間、菜摘子のもとへ沙織が微笑みながら
近寄ってきた。
「Aカップ女性の為に検事になる決心がついたのね」
「あんた馬鹿でしょ?Aカップ女性の被害者がどれだけいるという
の?弁護士になるに決まってるじゃない」
「いいえ検事にも弁護士にもならない。」
「うそ・・・」
雅代は明らかにショックを受け肩を落としたが沙織は平然として
いる、まるで予測していたように。
「では何になるの」
「進学し遺伝子工学を学んで研究者になりたい」
「そんな専門職より弁護士のほうが儲かるよ」
「ホルスタインの雅代にはわからない、わたしはなっちゃんの気持
ちわかるよ。」
「ホルタインてそれじゃわたしが乳牛みたいじゃない」
「決めた、なっちゃんが進学するならわたしも医学部に入るわ」
「沙織あんた検事はどうするの」
「雅代と戦うよりなっちゃんの傍にいるほうが楽しいから」
沙織が進路を変えて女医を目指すと言った事に菜摘子は複雑な
心境になってしまう。そんな簡単に検事を諦めて良いのだろうか
他人のプライバシーをいくら考えてもどうしようもない、だが菜摘
子は自分の事のように考えてしまう性格なのだ、性分なのだ。
自宅の部屋で菜摘子が思い悩んでいる時、モデルをしている沙
織の公式HPにある掲示板では炎上が起きていた。原因は以前
菜摘子を庇い他校の生徒を脅した件であった。一度(ひとたび)
元ヤンキーというレッテルを張られると待ってましたとばかりに
アンチ達が正当性を確信したように攻撃してくるのだ。
"中身ブス”
”頼むから死んでくれ”
”ファンを裏切って騙し続けた事に謝れ”
”悪行を続けた癖になぜ平然と公に顔を晒せる、図太い神経”
”業界から消えてくれ”
30人以上が書き込みしてるように思えるが実際は二人で複数
のアカウントを持ち多数の人間が書き込んでいるように見せる。
勿論ファンではないから裏切られたことはない。ニュースで誹謗
中傷で攻撃し逮捕されたと放送されるが実は軽い悪口しか言っ
てなかったりする。炎上するように書き込みした真の犯人は警察
でも特定できなかったりする。奴らはプロであり報酬を貰い請け
負っているからその後ターゲットが自殺しようが反省は皆無。
しかしそんなアンチのコメントなど沙織にとってはどうでも良い事
悪評などで心が折れる程ミナミの魔女は弱くはないのだ。だが
沙織は掲示板を見ながら微笑みあたかもひどい事を書かれた
と心が痛んでいるように装うところが性悪女の技であった。
「沙織あんた随分と書かれているけど平気なの?」
雅代は心配して聞いてみた、手を貸してやろうとも考えたのだ。
しかし雅代の心配に対し沙織はといえばまったく気にしていな
い様子に唖然としてしまった。
「沙織さんは進学するんですよね、モデルは続けるんですか」
「もう辞めちゃった」
「本当ですか?勿体ない」
「だってモデル続けてたら勉強が進まないもの」
「わたしのことより雅代は弁護士になるんだよね、バイクの免許
取る暇ないでしょ」
「えへへ、もう取得しちゃった」
雅代はそういうと財布から免許証を二人に見せた、大型二輪に
1と記入されている。
「それで今日ね、納車されるの」
「おお、凄いじゃんわたしも乗せてよ」
「沙織は駄目、あんたにバイク乗せると必ず壊すらしいじゃん」
「それに沙織、あんた免許無いでしょ?言っておきますけど1年
は後ろに人を載せられないからね」
「なんでわたしは駄目、なっちゃんも免許ないでしょ」
実は菜摘子、半強制的に雅代に教習所へ同行させられ中型2輪
を取得していたのである。バイクの振動によって胸が大きくなると
言いくるめられたがそんな訳はなく無駄に免許を取得となった。
数日過ぎた教室内では最近雅代が休み続けていると話題になる
「雅代さん、最近休んでるけどどうしたのだろう」
「知らないのなっちゃん、雅代は方向指示器つけないトラックに
突っ込んで入院してるそうだよ」
「え、ひどいの?」
「昏睡状態だから面会謝絶らしいよ」
「うん。病院へ行ったんだけど会わせて貰えなかった」
沙織は口には出していないが相手のトラック運転手を許せず今夜
にでも片をつけようと決めていた。例えトラックの運転手を痛めつけ
てもまだ意識が戻らぬ雅代の前に引き連り謝罪させてもそれは意
味がない、それでも沙織の心は止まらない。
「危ない事はしないで、沙織さん」
「なんのこと?」
知らぬふりをしていた沙織だったが心臓に矢が刺さった想いだった。
「それならいいけど・・・」
深夜心霊スポットとして知られる山の神社に一組の若者たちがいた
木々が覆わるように参道に垂れ伸びる枝、その隙間を縫って石段
を戦々恐々として登って行く男女3人のグループ。いち早くこの神社
の異様な空気の重さに気づいたのはあずみという女性だった。
「ここやばいよ、もう帰ろう」
「なんだあずみもう根をあげたのかよ、今来たばかりじゃねぇか」
「こんなにすごい場所とは知らなかった、さっきから肩が重いんだ
けどやめようぜ義男」
石段をもう少しで登り終えようとしたとき、突如真っ赤なワンピースを
着る三つ編みにする少女がいた。しかも少女はゆらりゆらりと歩いて
いる、背中を見せていた少女はゆっくりと振り返った時、本殿の照明
が顔を照らし出した時、若者たちは奇声をあげ一目散に逃げて行った
「顔が半分・・・」
「アーッㇵッㇵ、アァッハッは」
若者達が逃げかえると女の嗤い声が神社の境内を揺るがすように響いていた。
「神様その不気味な嗤い声をやめて貰えませんか」
「久しぶりに来たかと思えばその第一声が侮辱の言葉とは無礼な」
「ですが呪いのビデオに出てくる悪霊の声そのものでしたから怖いで
すよ」"私の顔が半分なんだっていうのよ”
ここは菜摘子の地元にある豊穣の女神を祀る神社、赤い服の少女は
参拝に訪れた菜摘子だった。毎夜騒がしく訪れる心霊マニア達を追い払う為女神は菜摘子を出汁に使ったというわけだ。
「神様、何かしませんでした?」
「我が人間につまらぬ脅かしをするわけなかろう」
「深夜真っ赤な服を着る女が一人いたら驚くであろう、女のこ(おのこ)
おまえに驚いて逃げたのだろう」
「わたし・・・」
「そもそもなぜおまえは赤い服なのだ」
「神様は大抵赤を好むと思いまして神聖な色かと」
「愚か者よ大抵は白じゃ、白装束というものを知らんのか」
菜摘子は気づいたように手を叩いた。
赤いワンピースでも白装束や白いワンピースでも深夜一人でいたら
誰も人とは思わない、菜摘子は一般常識に欠如していた。
「さて、おのこよお主は一体こんな丑三つ時に何を願う?」
「それを言う前にまずはこれをお納めください」
菜摘子は持参して来た一本の瓶を手渡した、祈願にきた前回何も
持参しなかったら女神様からひどく叱咤された経験を踏まえたのだ。
「気が利くようになったな」
酒がメッポウ好きな神々は期待を膨らませ一口飲んでみる、そうここ
最近貢物の酒がなく酒に飢えていたせいで我慢できなかったのだ。
”ブッ”「なんじゃこれは」
「ワインですよ」
「ただのブドウジュースではないか」
「神様、ご存知ありませんか20歳にならないとお酒は買えないので
すよ?ノンアルコールワインです」
「・・・」
豊穣(デカパイ)の神はこれはイジメなのかと考えた、だが以前菜摘
子に対し己はどのような理由があろうと結果、菜摘子の希望には沿えなく自分を信じてやってきた菜摘子を裏切った、その気持ちを今
デカパイの神は気づくことができた。これは報復なのか?と考える神
だが菜摘子にはそんな気持ちはさらさらなく自分に出来る事を考えた
だけである。
神仏を信仰する者にとって一般的に神に報復という行為は天罰となって返る、信仰者にそんな気持ちは無くても神の気持ちは違う。
だがしかし、デカパイの神には以前願いを叶えられなかったという負い目、それ即ち女神としての品位を下げるものであり次こそなんとか
願いを成就しなければという想いがデカパイの神にはあった。
”ノンアルコールワインだと?そんなものがあるのか”
”まぁよいか”
「しかしおまえ、以前より少し胸が膨らんだのではないか」
「そんなことは・・・ありますかね」
「おまえはなぜ女の胸が膨らむと思う?」
「愛情と幸せをいかに獲得したかで膨らむのでは」
てっきり子供を生むために膨らむと答えると想像していた女神だった
が答えを聞き予想を超える妄想力に失笑してしまった。
「コホン、よいか女の胸は悪意で出来ているのだ、欲望、妬み、騙す
搾り取る、誤魔化すなどその気持ちの大きさで大きく膨らむ」
「では芸能界のグラビアアイドルや女優は悪意の塊ですね」
「そ、そういうことだな」
「女神様の大きな胸も悪意の成果だと?」
菜摘子の大きな胸に対する憧れを鎮めるために考えた思いつきだ
ったがその矛先が自分に向かうと思っていなかったデカパイ女神
落ち着いて考えてみれば豊胸の話題に触れた時点で十分胸の大
きな女神に辿り着くのは当然のこと。そこでただ無礼者と怒っただ
けで菜摘子の心を掴むことはできないと思った女神は思慮する。
「おまえ、いや名前をなんといったか」
「忘れたんですか、菜摘子です」
そう言われデカパイ女神は確かに以前名前を聞いた気がした、確
かに祈願に来る人間は多数いる、いやいたと言う方が正しい。
大勢の参拝客の中の一人だけ名前を覚えるなど無理がっ、それは
いい訳でしかない。
菜摘子の登場と前後してこの神社に参拝に来る人はめっきり減っ
たその結果この神社は錆びれ最早廃神社寸前となり果てた。
菜摘子が悪い訳ではないただ見方を変えればその原因が菜摘子
とも言え菜摘子の名前を忘れたのは女神にとって痛恨である。
「話が逸れたようだがおまえいや菜摘子の願いは何だ」
「・・・」
女神は話題を元に戻し質問への回答を避けたのだった。
「実はですね友人の女の子が事故で入院しまして今も生死の境
を彷徨っています、神様の御力で助けて欲しくお願いに上がり
ました」
「わたしは以前も申した通り愛と豊穣の女神、人間の生死を司る
事は出来ぬのだ。」
「そうですよね、でも他に頼るところはないのです」
「だが、まったく無理な話でもないし、ばらく時間を要するだろうが
善処してやろう」
「感謝致します」
どんな難問を出題されるか内心冷や冷やだった女神はほっと胸を
撫で下ろした、口では善処すると相手を安心させる言霊は言わな
かったが愛と美のデカパイ女神にとっては容易な事だった。菜摘
子は助けてとしか言わなかった、それは命が繋がれば良いとの
事で下半身不随となったところで祈願は成される。
「友人の事より菜摘子、おまえには願いはないのか」
「わたしは自分の力で胸を大きくして見せます、その為大学へ進
学し薬を開発しようと考えてます」
「おおっ、見上げたその心根、我は深く感銘を受けた」
百日続けて参拝しようと考えていた菜摘子の1日目は終わった。
その三日後、沙織から雅代の意識が戻ったと聞かされ翌明後、菜
摘子と沙織の二人は雅代の面会に病院まで訪れている。
「良かった、本当に助かって良かったよ」
「わたしの為に泣いてくれて嬉しい、なっちゃん」
「いやわたしなんて何も出来なかったから。それより沙織さんは雅
代の敵討ちに行くんだって大変だったのよ」
「ええ、マジなの」
大阪で頭を張っていた時代、雅代と沙織は何度も衝突していた。
雅代にとって沙織は敵だと今まで思っていたがそれは自分の思い
違いで本当は親友なのかもしれないと感じていた。
「沙織、あんたって本当はいいやつだったんだな」
「雅代あんた喧嘩売ってるのか、いい奴だったって過去形じゃねぇ
か?わたしゃ昔からいい奴なんだよ今も昔もな」
「おっと、沙織あんた初めてなっちゃんの前で地が出たな」
「あっ」
流れていた空気が突然止まると沙織の額から汗が沸き出ている。
「違うのよ、なっちゃん今の発言は雅代に言わされたの。わたしっ
てあんな暴言、いうタイプじゃないの知ってるよね」
「うん平気だよ、どんな話し方したって沙織さんは沙織さん」
「あっはは。なっちゃんそれ沙織のフォローになってないよ」
この時雅代は進路を変える決断をした。
桜が舞い始める3月、季節はずれの大雪が首都圏を襲った。
そんな折3人の卒業式が行われ3人は無事高校卒業となる。
真っ白に都会のビル、道路を覆い尽くす雪景色の中制服を来た
女子高生3人が歩いて行く、色とりどり長靴を穿いて歩く3人。
だがその中に三つ編みをした女子高生の姿は無く変わりに長い
ストレートヘアーの娘がいた、それが菜摘子だった。
4月になり3人はそれぞれの道を歩き始め、菜摘子は遺伝子を
並ぶ為理学部へ沙織は医師を目指し医学部へ、となる筈が試験
で落とされ進学浪人となる、そして雅代は警部補の白バイ警官と
なる為上級公務員の試験を目指していた。
更に3年の月日が流れ沙織は医学部の生徒となっている、菜摘
子はといえば世界中を渡り歩きさまざまな遺伝子の採種をする。
雅代はようやく公務員試験に合格したようだ。
ネパールの山中で菜摘子は念願だったサスクワッチの毛髪を手に
入れる事が出来たのは記録的な豪雨の続く9月上旬のことだった
足早に日本へ帰国しさっそく大学の研究室へと向かった。大抵は
試薬を動物実験に投与するのだが菜摘子の作る薬は豊胸へと至
るもので人間に投与しなければ効果がわからないものだった。
「沙織さんお久しぶり、遂にサスクワッチの遺伝子を手に入れたの
これで薬が完成するよ」
「やったね凄いじゃない、なっちゃん」
「ではこれからは研究成果を積み上げるということね」
「だけど人体実験は駄目よ」
「・・・もう打っちゃった」
「え、誰に?その人大丈夫なの」
「うん大丈夫みたいだよ、ちゃんと話せるし」
「まさか・・・それって」
ワクチン接種して1日目、菜摘子の胸は膨らみ始める
そして2日目に菜摘子の胸はGカップへと変貌した。
ここで終わりなら菜摘子の薬は革新的な薬になるだろう
だが3日目に菜摘子の肉体にも変化が始まってしまう
今までの肉体は無駄な脂肪が燃焼し新たに肉体が構築
それだけには終わらず全身から体毛が伸び始めている。
進化が終わった時にはウサギ人間と思える生き物が鏡
には映っていた。人間の身体そのままに白い体毛が生え
ているのでウサギ被りものとは比較にならない程リアル。
「なんなの、これ」
とてもじゃないが人前に姿を晒せる状態ではないことに
菜摘子は哀しんだ。顔だけ変わらなかったのであれば衣類
を着ることとで誤魔化せるものだろうが顔からも白い毛で覆
われているのだ。悪い事に尻尾にも神経がある事でズボン
は当然、スカートさえも履くと擦れて痛みを感じてしまうのだ
どんな姿になろうとも生き続ける上でどうしても出かけなけれ
ばならない所用というものがあり菜摘子は悩んだ。
「あ~どうしよう・・・振り込みしなければいけないし食べ物ない」
この研究室では生活を出来ず一度だけでも自宅へ戻らなけれ
ばならないのだ。この時点で菜摘子自身が歩く猥褻物との自覚
はなくただ体毛の多い人間程度にしか思っていなかったのだ。
一旦思い立った菜摘子の決意は揺るがないものがあった、考え
るのは自宅へ帰ってからにして無駄がないように計画する。
大学の研究室から出てとりあえず銀行のATMで預金を降ろす事
にしたのではあるがATMに並ぶ列で先程からいくつもの舐める
ようなイヤらしい視線を感じていたし背後に立つ若い男がやけに
寄せているような気もする。さらにその男から男性ホルモンの異
臭も菜摘子は感じ取っていた。局部を隠そうと考え水着用の巻
スカートだけをつけたのは誤りだったことに菜摘子自身も気づいて
いないのである。尻の山と深い谷から流れるラインは股間まで続
き歩くたびにちらりと見えるのはセクシーを通り過ぎて性犯罪だ。
銀行を出て街中を歩いているだけで視線を奪い取る肉体美。
「おいあれって着ぐるみなんだよな」
「シリコン技術って進化してるから仮装も凄いんだろ、意外と中身
は男だったしてな」
「中が男でもおれはいいよ」
今の菜摘子は日本人離れなどというレベルではなく高いヒップポ
イントと太ももから足首まで流れるスラリとするラインと長すぎる
足これでもかと言うほどの締まったウエストなど人間ばなれする
感もある。ただふくらぎから足首がやけに細くそこが着ぐるみで
は有り得ない細さをしていた。電車の中で沙織にラインを送った。
”えらいことになった”
”すまん今仕事”
”男は野獣にしかみえず”
”詳細は家で、勤務後むかう”
”承諾する”
帰宅した菜摘子が自宅で待っていると沙織が来たようでインター
ホンに沙織の姿が映し出された。沙織が菜摘子の部屋までエレ
ベーターで上がり菜摘子のマンションのドアを開けて、沙織は驚
きのあまり声が出ずお土産として買ってきたケーキの箱を落とし
ている。
「な、なにその姿」
「まさかとは思ったけどあの試薬自分で打ったのね」
そして沙織は菜摘子が送ってきたライン、男が野獣に見えると書
いてきたのを思い出した。
「その姿で街中を歩いてきたの」
「う・ん」
「なんで服、下着を着ないの」
「だって下着つけると尻尾が痛いんだもん」
「なっちゃん今の自分の姿ちゃんと理解している?」
「うさぎちゃんだよね」
これは自覚していないと思った沙織は菜摘子の胸部に視線を向
け体毛の隙間から見え隠れする薄紅色の乳首を見る。
「ダメだよそんな姿で歩いちゃ、歩くアダルトビデオだわ」
「そんなことないよ、体毛で胸だって隠してるし」
「いや見えてるよ、なっちゃん上から見るのと離れたところから見
たのでは見え方が違うのよ」
”しかし良い身体してやがる”
女の沙織からみても菜摘子の肉体は魅力的だった。ブラジャーを
する必要がない上向きの乳房それもGカップが肉体美を強調する
「ちょっと触ってもいいかな」
「沙織さんならいいよ」
柄も言わない至上の柔らかさに沙織は満足したように揉みしだく
「あ、やん」
菜摘子の耳たぶを甘噛みしたところで沙織は自我を取り戻した。
冷静になったところで菜摘子の肉体を観察してみると女性ホルモ
ンを噴出させているようだし感度も敏感みたいだ。股間から流れ
落ちていく液体がそれを物語っている。
その後遅れてやってきた雅代だったが菜摘子を見た感想は沙織
と似たようなリアクションを見せた。
「なにそのエッチなボディラインは・・・」
「モフモフだ、その尻尾さわってもいい?」
「絶対いや」
コーヒーを取りに行く菜摘子の後姿が尻を左右に振って不必要に
エロティックに見え二人は凝視してしまう。
「これからの生活だけどなっちゃんはどうするの」
「こんな姿じゃ大学へ行けないし困ったよね」
山奥で一人で生活という案も出たがこんな菜摘子の姿一人で住む
のは承知出来かねると沙織も雅代も意見は同じだった。
「雅代あんた確か家には個人ジェットあるとか昔言ってたよね」
「今でもあるけどそれがどうかした?」
「いやねわたしのいとこにフィンランド在住がいてね向こうで暮らし
たらどうかなと思って」
「妖精の国フィンランドか、悪くはないけどその従妹って安全なの」
「安全かと問われるとそこは保証出来かねるが金なら持ってるよ」
「問題外ね」
「だったら沙織に代替え案はあるの?」
「ない、申し訳ない程になにもない」
「フィンランドかぁ、行ってみたいな」
フィンランドにはトロールがいると聞き菜摘子は興味津々だった。
「なっちゃんがフィンランド行きたいのであれば反対するのも変じゃ
ない」
「雅代が言うのもわかるけどだったらパスポートどうするの、空港の
検疫はどうやるの?仮にそこを通過したとして移動手段は」
「そうなんだよな、人目に晒すのは避けたい」
二人が熱く語っているといつのまにか菜摘子の姿が消えている、
先に気づいたのが沙織で何かを探すようにキョロキョロしていた。
「何やってるの沙織」
「なっちゃんが消えた」
「なんでいないの?2秒くらい前には座っていたじゃない」
結局それ以来菜摘子の消息はわからないまま日々が過ぎた。
警察に捜索願をだそうとも考えたが今の菜摘子を見せる訳にも
いかず断念するしかない。雅代は菜摘子が自分の為に深夜百
日参りしていた事を菜摘子が消えた後、人づてに聞き心が熱く
燃えた。
それから2年の歳月が流れ沙織は今大学病院の研修医となり
忙しい日々をすごしていた。夜の10時、自宅のマンションへ戻
ると1通の国際便が届いている。みるとフィンランドからの便り
で差出人は"Natuko Rabitto"だった。
今までどれだけ探し歩いただろう、どれだけの知人に声をかけた
だろうか。だが手紙の差出人の名前を見た瞬間沙織の目からは
熱い涙が沸き出ている。
「なっちゃん、生きていたんだ」
文面にはいきなり消えた事に対する謝罪と今までの感謝が細かく
書かれており”今度遊びに来て”の文字で締めくくられていた。
「さぁわたしも頑張らなくちゃ」
そういうと沙織は一枚の写真を机の上に画鋲で飾った。
その写真には夫であるトロールと子供たち、笑う菜摘子がいた。
FIN
この物語はフィクションであり実在
人物団体には一切関係ありません。