[短編小説] 不可解な日常 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
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あんたはなんでこんな処にいるんだ」

「さぁ、わからないわ」

言葉で会話しているのではない、思念を飛ばして二人は会話している。見た人は二人が絆で結ばれていると思っているだろうがそうではない。

そもそも二人の間に繋がりはなく知り会ってもいない関係なのだ。

「君がわたしの歌ばかり聴いているからじゃないかな、傍にいて嬉しいでしょ」

「う・・・・む、微妙だ」

いかに美人とはいえ死者の霊魂が同じ部屋にいて喜ぶ人間がどこにいるのか。

「そもそもなんで初対面の相手だというのになんでタメ口なんだ?」

「いいじゃない4つしか違わないんだから」

「いやそういう問題じゃないとおれは思うんだよ」

「大体さ普通はね死んだら成仏し天国へ行くものだよね、なんで成仏しない」

「仕方ないじゃないさ、このおかしな人形から出れなくなったの」

 

彼女は不審ともいえる事故死をしてニュースの一面を飾った有名人であるが彼女が死後、気づくとカーテンを閉め切った薄暗い部屋に呆然と立ち尽くしていた。見覚えのない部屋、彼女自身なぜこの小汚い部屋の隅にいるのか自分でも不可解に思っていた。どこの家、誰の住処かわからない場所で突然いかつい男が現れたものだから彼女はどこかに隠れようと考えた、「隠れなくちゃ」と思ったら部屋に

置かれていたマネキンに吸い込まれてしまったのである。

 

「なんか最近マネキンの顔が変化し若い頃のあんたに似てきたのだけど」

「なんで若い頃のわたしの顔知っているの」

「そりゃネットで画像検索すれば出てくるから」

「うわっ、きも~い」

「んっ!」

「ひとつ聞きたい事があるの」

「え、なに」

「なんでわたしが没してからDVD買い集めたの」

「ライブに行った事がないからだよ」

「見に来れば良かったじゃない」

「一度行こうと思ったんだ、それで豪華客船の抽選ライブに申し込みした」

「それで?」

「見事に抽選漏れ、落としただろ」

「わたしを責められても、選んだのはスタッフだもの」

「それで落とされたから根に持って2度と行くものかと思った訳だ、暗い男ね」

「・・・やかましいわ」

「あんたがここにいるせいで夢の中にあんたが現れて困っている、頼むから出て行ってくれないかな」

「わたしの夢?どんなの」

「あんたがライブ終了後におれの職場にきたとか、高架を走る電車に二人で乗るのやらあんたら親子が深夜おれの家に訪問するとかな」

「なんだぜんぜん艶っぽくないんだ、つまらないな」

「そんな事言われても困るよ、おれとしてもベッドの夢を見たいが夢は自由にならぬからな」

「君と一緒のベッドで?ないないそれは」

あくまで思念で話すだけなので彼女の表情はわからないし怒っているのか笑っているかもわからないので淡々とした会話しか出来なかった。もし彼女の表情が見えたのであれば冗談交じりの否定か全否定の区別はつくだろうが言葉だけでは100%の否定にしか思えなかったのである。

 

彼女は男に言ってない、実は家の中を自由に動き廻り男が調理する横で見ていること、焼いた卵焼きを自分に一口でいいから食べさせてと身振りをしたことなど。

知らぬが仏、知らなければ幸せということはある。これからも彼女は言わないだろう。男にとって彼女は何も言葉を発しない人形でしかないのだから。

 

おわり

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません