由貴の父親である大天狗に呼び出されて戸隠の山奥まで来た
祐一郎と由貴の二人は本殿まで来たわけだがそこには意外な
人物がいた。
「おかあさん、なんでここにいるの」
「祐一朗さんに話があってね、お父さんに頼んだのよ」
由貴の母万亀子(まきこ)が大天狗の隣に座っていたから由貴
は驚いてしまった。母常々お父さんのいるお山へは行くことは
出来ないと言っていた、それが今日は来ているのだ。
孤天狗はお盆にきゅうすと茶碗を載せ現れるとお茶を注ぎ各人
に置いた。
「つまらぬものですがお召し上がりください」
お茶受けとしてあずき色をした羊羹と黄金色した羊羹を置く。
小天狗と一括りに言われているが小天狗には種類があり狐の
頭を持つ孤天狗、虎の頭を持つ琥天狗、タヌキの頭を持つ狸
天狗がいるが大天狗の傍にはすべての小天狗が集まる。
小天狗は大天狗の世話係のみいるのではなく大天狗と至るま
での修行も兼ねている。大天狗さえ神仏に至るべく修行を怠ら
ず日々是れ修行なのだ。
「祐一朗さんのことは多少調べさせて頂きました、お母さまがお
られますね」
祐一郎は頷いた。
「そのお母さまを裏切ってこの山へ来る事を決断出来たのです
か、母ひとりであなたを高校まで通わせてくれたその母を」
「それは・・・」
祐一郎はいまだ迷っていた、母を残してはいけないし友人義孝
とも会えなくなるのは辛い。
「あなたが無駄に時間を費やしている間にも娘由貴の男性化は
進んでおります、平気な顔を見せているかもしれませんが常に
痛みはある筈です」
「お母さん、それは言わない約束では」
「由貴ちゃんそれは本当かい」
祐一郎と視線が交錯し由貴は迷いながらも頷いた。
「由貴、人は言わなくては理解して貰えない時があるのです」
「祐一朗さんここで決断しなさい、娘を抱く覚悟はありますか」
万亀子は祐一朗に決断することを迫った。
「由貴ちゃんと交わる覚悟はあります、でもここへ来る事にはもう
少し考えさせて貰えませんか」
「そうですか、だったら今晩由貴を女にしてください」
「ちょっと、おかあさん」
祐一郎と由貴は一瞬だけ見つめ合うとすぐに紅潮した頬を見ら
れまいと顔を俯かせた。
「本当に今晩、寝ろと?」
「そうです、心配には及びませんよ。翌朝以降自由にして構いま
せん。由貴もいいですね?反抗は認めません」
大天狗はお茶を飲み干すと今まで傍聴に徹していたがここでは
じめて口を開いた。
「君にはもうひとつの選択肢がある、それは結ばれた後に出来る
子供と由貴を残し従来の生活を続ける、その場合由貴は女とし
て大天狗を継承しなければならない」
母親と由貴の両方を得る事は許されずどちらかを選べと選択を
迫られている、祐一朗にとって究極の選択と思えた。
その晩、祐一朗は由貴と一緒に風呂へ入ることになった。
木製の引き戸を開けるとヒノキの香りが漂う、壁も床も木目が美
しい板そして長方形に作られた檜の風呂。足先を浴槽に入れて
みると足の指が赤く染まるほどの熱さに祐一朗はたじろいだ。
それでも我慢して身体を湯に沈めていくとなぜだか気持ちいい。
祐一郎が浴槽に浸かり癒されていると引き戸を開ける音がし
そちらを見ると前面だけタオルで隠し恥じらう由貴の姿がある。
由貴はタオルをゆっくりと腕に掛けると手のひらで両目を隠し
祐一郎の前に立つ。はじめて祐一郎が見た由貴の肢体は白く
真綿と言うより新雪の透き通るような白さだった。中学時代に
美術館でみたローマの白い彫刻女性像にそっくりと思えた。
当時は友人同士”こんな女はいない”と笑いあったものだが今
目の前に立っている。
浴槽から立ち上がった祐一朗の天を仰ぎそそり立つドカンを
見て由貴は顔を背けて下を向いた、祐一朗は由貴の顎を優
しく指で上げ唇と重ねた。唇が離れると今度は由貴が両手で
祐一郎の頬を挟むように持ち由貴は濡れた唇を祐一朗の口
へ押し付け唇の感触を味わうように口で舐めた。若い初体験
同士のふたりにはその手順など知る事ではない、愛しい相手
に欲望をぶつける本能のまま二人は唇を合わせた。触りたい
から触ってみる、舐めたいから舐める、食べたいから食べる
そこに相手からの強要は無く二人は相手の望むまま受け入
れた。大量の血液が流れ込み膨大となった硬いその半身を
祐一郎は堪らずに片手で抑え込むように握った。
「祐ちゃん、辛いの?」
「ああ、でも我慢するよ」
「ここで鎮めてあげる」
「浴槽でするのか?」
そういうと由貴は浴槽の中で足を開いた。透明度の高い湯の中
桃色のタニシが祐一朗の硬くて太いピンクの象さんを誘う。(い
ざなう)
”痛い”由貴は唇を思いきり伸ばして叫んだ。
タニシがジャンボタニシへと変貌したとき、お湯の中には赤く霧
と化すものが湯の中で漂うのを祐一朗は見た。由貴と祐一郎
の荒い吐息が重なった時、由貴は身体の奥に弾けるものを感じ
た。その瞬間、由貴の身体は全身を貫く痛みを感じ動けなくなる
その痛みは祐一朗の半身を受け入れた時に感じた痛みとは異
なるものだった。
「由貴ちゃん大丈夫かい」
「ちょっと動けないみたいだから、運んでくれるかな」
「風呂で少し待って、今穿いてくる」
「だめ、そのままで運んで」
裸で抱きあげて欲しいと頼まれ躊躇するものの、自分の所為で
由貴がこうなったのかもしれないと思った祐一朗は罪悪感もあり
由貴の願うまま抱きあげることにした。
しかし先刻まで愛した相手の身体、その柔らかい肉体が自分の
肌を通し体温が伝わってくるのを感じた祐一朗は血液が集まっ
て行くのを感じる。
「あれお尻になにか硬いものが当たっているよ祐ちゃん」
「これは何かな?なにかとても熱いの」
由貴はいやらしく微笑んだ。
「仕方ないだろ、目の前にエッチな肉体があるんだ」
「さっきは責められていたから今度はわたしが冒してあげる」
由貴から挑発する様に言われ祐一郎から笑みが零れた。
「冒すって、お姫様がいう言葉じゃないよ」
そして部屋に戻ったふたりは再戦となり熱い夜は更けて行った。
翌朝、数年ぶりとも思える清々しい目覚めで起き上がった由貴
は自分の腕に当たる髪の毛の感触に異変を感じた。今までは
針金の如き髪が今日は絹糸のように柔らかく細い刷毛なのだ
さらには癖が強かったものが素直な真っすぐの長い毛となり驚
嘆した。
「祐ちゃん大変、起きて、早く起きて」
「疲れているんだからもう少し寝かせてくれよ」
結局昨晩は早朝まで由貴にセガマレ祐一郎は身も心も果てそ
のせいでまだ眠っていた。
「起きないと枯れるまで絞り上げるよ」
意地悪く由貴が嗤うと祐一朗は大変だと思ったのか眼を開く。
「ねねっ、この髪の毛みて」
本人から違いがわかっても他人からみたら違いがわからない
よくある事で祐一朗からみた由貴の髪の毛は同じように見えた
ではあるが、一目で由貴の変貌を読みとった。
「そ、その顔どうしたの」
「え?顔がどうかした」
「昨晩よりも白く滑らかで瞳も大きくなったようだ」
「嘘?まじか」
由貴は自分の頬を手の指で擦ってみると確かに滑らか。手の甲
で眼に触れてみると柔らかな感触もある。
「まつ毛が伸びたから大きく見えるんだと思うよ」
まるで別人のように顔が変化した、厚くふくよかな顎は鋭角にな
り全体的に小顔、小鼻も大きかったのが小さく纏って首も細く、伸
びている。
「おはようございますお嬢様、昨晩はさそお疲れになった事でし
ょう、朝食の準備が整いました」
「ありがとう」
琥天狗はそれだけ言うとソソクサと部屋を出て行った。祐一朗は
ここで琥天狗の言ったお疲れになったとなぜ知っているのかと
考えた、なぜ知っているのか。
この屋敷にテーブルはなく武家社会のように各人にひとつづつ
食事台と呼ばれるものが置かれそのうえに料理が置かれる。
広い12畳の板張りの部屋に全員で朝食をとる。当然会話に隠
し事できず全員に聞こえるわけだ。
「由貴にちょっと言いたいけれどいいかしら」
「何のことかわからないけどいいわよ」
「浴槽を鮮血で汚して欲しくないのだけれど」
「血なんか流してないよ」
そこで祐一朗には思い当たることがあった。由貴の袖を引っ張り
「昨晩のこと思い出してみろよ、あのことだよ」
由貴は夕べのことを思い出しやっと母の言った意味を理解する。
だがなぜ母がそのことを知っているのか疑問に思えた。
「なんで昨晩のことをおかあさんが知っているの」
「何故って見てたからね、言ってなかったかなこの屋敷にはすべて
のお部屋に監視カメラあるって」
「聞いてないわよ」
「お嬢様、昨晩は目の保養を頂き感謝いたしております」
「・・・まさか、おかあさん、」
「みんなで見ていたのよ」
由貴はこの本殿に住まう者達のアダルト女優になった事を知った
祐一郎は勿論男優として映像に映ったことになる。一部のシーン
ではなく最初から最後まで一部始終、あんなことやこんな事、人
には話せないことまで見られたことになる。穴があったら入りたい
祐一郎だったが由貴は違った。顔面蒼白となった由貴には怒りし
かない。
「祐ちゃんのあそこまで見たというの」
「ええ勿論よ、あなたがそれを美味しそうに食べる姿もね」
祐一郎はてっきり自分の裸体を見られて怒ったのかと思っていた
がそうではなく祐一郎当人の密かなる一物まで見られた事に怒
ったと知った。
「うちはねビデオがあるのよ」
「オホホ、まさか録画したなんて悪趣味な事はしてないよね」
「全部,撮っちゃった。」
「ブルーレイってすごいのよね、1枚で全部入ってる」
「ここに持ってきて」
「いやよ、持って来たら壊すでしょ?山を降りたら見直すの」
「1枚壊しても徒労になるよ、ハードディスクのファイルを削除し
ないとコピーされるぞ」
「そうか、ビデオレコーダー自体壊せばいいんだね」
ハンマーでビデオを壊す前に由貴を取り押さえる事に成功した。
母から脅迫じみた条件をだされ由貴は止む無くビデオレコーダ
ーの破壊を諦めたのである。
「あの動画、いくらの値段がつくかしらね」
「オークションに流すって言うの?」
「ハッタリよレコーダー壊したらコピーできないよね、祐ちゃん」
壊れたHDDからファイル再生するソフトがあると聞いたことがあ
る祐一郎は不可能ではないと知っていた。だが母万亀子は上を
行く。
「だって外付けハードディスクにコピーしてあるもの」
母とは思えぬ悪魔の所業に祐一朗は舌を巻いた。
さらにそのHDDには鍵がアリ他人からアクセスできない様にして
あるという。近年HDDは小型化されそのおかげでHDDは見つけ
る事は出来ないと万亀子は告げた。
「でもおかあさんにネットのオークションなど出来ないでしょ」
「おれはそうとは思えないんだけど、」
以前バイクの部品を嫁に頼んで買って貰ったと大天狗から聞い
た祐一郎はその購入方法がオークションではと思えた。
”恐るべし母上”
つづく
この物語はフィクションであり実在の
人物団体には一切関係ありません