[短編」[創作][小説][R18]ブログという名の証明書、特別編 西尾良子の恋前編 | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

 

 

 

東京から由美が住む神奈川県大井町へ遊びに来た西尾とさゆりの

女性二人は祐一の隠れた才能に驚き、心底羨ましい旦那と感じた。

その後、祐一自慢の料理を食べ満足して帰路に着いた。

 

結婚して2年目の春、朝早くからキャベツの収穫に向かった祐一に

対し由美は洗濯物を干していた、家の掃除、ナナの世話、主婦には

やる事が多い。薄くメイクして髪の毛を整え家を出たのは朝8時の事

誰にも会わないのになぜ化粧するのか、元々顔立ちがいい由美は

化粧しなくても十分キレイ、だが毎日化粧するそれは主婦となり母と

なった現在でも変わる事は無い。人に聞かれれば祐一の為にと言う

が由美は自分の為に化粧をしているのだ。ナナや夫が”キレイなお

かぁさん”と言われれば嬉しい筈結果、笑顔が家に溢れるからだ。

 

由美が自転車に乗って畑が見える場所まで走ってくると突然急ブレ

ーキをかけ自転車を止めた。”だれよあの女”視線の先には祐一郎

と親し気に話しながらキャベツの収穫する女性の姿があった。

ポケットからオペラグラスを取り出し覗いてみると知った顔の女性だ

オペラグラスのレンズ側からは一瞬だけ由美の瞳が大きく開いた。

「あの女!」思わず呟いた。

畑にいたのは昨晩帰ったはずの西尾良子、しかもどこからみても農業

人のいで立ち、服装に由美は奥歯を噛みしめ地面を蹴って悔しがる。

 

「なにあの恰好まるで農家夫婦みたいじゃない」自分よりお似合いと思

え嫉妬から哀しく寂しい気持ちへ感情は移行した。本当はこの場から

逃げ出したい、泣いて走り去りたい、だけど自分は今ママであり妻なの

だ。逃げる訳には行かない由美は奮い立って涙を拭うと再び自転車に

乗った。

 

「なんで西尾先輩が此処にいるんですか」

「ああ由美が大変だろうと手伝いに来て・・・」

「あなたは黙って」

「部長って暇なんですか、わざわざこんな田舎にまで来なくても」

「あら由美さん、ジェラシーかしら。妬いてばかりいると祐一さんから

 愛想尽かされるわよ」

「オほほ、御心配なく。二人の間には強い絆で繋がってますの」

 

最もらしい事を祐一に言った西尾だが由美にはここへ来た本当の理由

がわかっていた。祐一をなんとか自分のものにしようとしているのだ。

 

「あらやだ、青虫がいるわ祐一さん。」青虫見つけたら踏みつぶして欲

しいと祐一から言われていたがどうしても可哀想で踏めない、そこで祐

一は代わりに踏みつぶしてみる。

「キャベツに巣くう青虫は可哀想じゃなくて自分に似てるから踏めない

 のではないかしら」

「わたくしが青虫と?それは光栄ですわ、いずれ可憐に羽ばたく蝶へ

 と美しく変わるのですからね」

”こいつは青虫だ、祐一と言う無垢なキャベツに取り憑こうとする害虫

 わたしが駆除しなければならない”と由美は考えた。

由美は全力で青虫を踏みつぶした、何度も何度も。

踏みつぶした後、由美は西尾へ視線を移し勝ち誇ったように嗤った。

だが西尾も負けてはいない、由美を睨むとお互いの視線は交差する。

 

「西尾さん帰りにキャベツ持っていってください」

「有り難いんですがわたくし電車で帰らなければならないので後日届

 けて貰えませんか」

由美はなんてズウズウしい女、自宅へ届けさせ毒牙に掛けるつもりだ

と思うと黙っていられなかった。

「夫はこうみえて多忙なんでそのような暇ありませんのよ、ですからわ

 たしがご自宅まで車で送って差し上げますわ、西尾さん」

「まぁ暇じゃないんだけどそんなには・・・」祐一は呟いたが無視された。

「まぁ由美さんでもいいわ、交通費浮くしね」

 

由美にはきわめて小さい音量で出した西尾の舌打ちするのが聞こえ

た気がし勝ったと思った。自分は無事夫を護ることができたと優越感

に浸っていたが・・・でもいいと言った西尾に無性に腹が立った。

不愛想に言う由美に対し西尾は不愉快かといえばそうでもない、夫に

送って貰えず面白くない筈なのに微笑んでさえいる。

「乗った?じゃ行くよ」「お願いするわ」

「気をつけて行って来いよ、焦らなくていいからゆっくり帰ってこい」

 

助手席の西尾が運転する由美の表情を見ると前方しか見ておらず

先程から無言で西尾の方を一切見ようとしていない、その理由を西

尾は知っているが敢えて触れず空気を読まない発言をしてみた

「由美さん、怒ってるの?なぜかしら。」

「はぁ?べっつに、いつもこんな顔っすけど」

由美の美貌とヤンキー調の話し方がアンバランスで西尾は噴き出し

そうになるのを必死で堪えていた。車はその間、東名高速大井松田

ICが見えるところまで来た。

 

「この車で高速道って走れるの?」

「旦那はいつも走ってるから大丈夫っす」

今二人が乗ってるのは軽トラックだ、西尾は軽トラが高速道路を走れ

ることを知らず不安に思ったのである、インターチェンジからETCのお

かげで料金所は素通りし左カーブで由美は減速せず突入。

「きゃぁ~」車がコンクリートの道路塀に迫って由美が慌ててブレーキ

を踏んで難は逃れたが西尾は恐怖で悲鳴をあげてしまった。

「ちょっと、あなたここ走ったことあるんでしょ、大丈夫よね」

「いえ自分、走ったのは今日が初めてであります」

「・・・」由美の話し方を聞いてるとまだ怒ってるみたいだと思った西尾

は早いところ本当の事を話したほうが良さそうだと考えた。このままだ

といつ事故るか安心して助手席に座ってられない。

 

「由美さん、あなたは誤解してるようだけど祐一さんみたいなおじさん

 はタイプじゃないのよ、それにあの男と叔父と甥の関係でしょ、有り

 得ないわ。あなたが彼を平気なのが信じられない」

「祐一さんがおじさん?わたしの旦那様を・・・」

「ひぃ~」真横を向いて西尾を睨む由美は車線をはみ出し、そこに大

型トラックのウィング車がクラクションを鳴らし接触は免れた。

「ごめんなさい、わたしの言い方が悪かったわ。素敵なご主人よね」

「わかって貰えて嬉しいわ、あの社長と血縁関係かあまり考えたこと

 なかったけどそう言われてみればそうね」

「でもね祐ちゃんは人の嫌がることしないよ、もっと頼って欲しいのに

 なんでも自分でやっちゃうの、あの男は違ったよね」

「あの男はすぐ人にやらせたわね」

「だからね、わたしから積極的に動く必要があるのよ」

 

ここで由美は西尾の行動が疑問に思えて仕方ない、あたかも祐一に

攻まる態度でいたのだ。今日もそう、そこがわからなかった。

「実はねあなたに焼きもち妬かせたのはわたしも祐一さんのような誠

実なパートナーが欲しくなったの、独身のわたしが祐一さんに言い寄

ればきっとあなた方は誰かを斡旋しなくちゃいけないと思うでしょ」

「思わないよ、西尾さんはキレイじゃない。自分でなんとか出来ると

 誰もが思ってるよ」

 

西尾は社長に復讐し元恋人の無念を晴らした、今やっと雅之への想

いは断ち切る事ができた。だが西尾は若い頃に自分の顔で不満なパ

ーツである鼻を改造手術し完璧な美しさを手に入れたことで美女とし

てのプライドが邪魔しパートナーをみつけることが出来なかった。

その点天然美女の由美には顔に対するプライドがなく普通の女性と

自分を考えていた。

 

「結局のところ誰か紹介しろってことね、西尾さんのお眼鏡に叶う人

 を見つけるのは難易度が高そう」

「そうかなぁ、収入は気にしないし学歴も関係ないわでも年齢だけは

 30代じゃなきゃいや。」

「夫に相談してみる、わたしには心当たりないもの」

「ごめんなさい、期待してるわ」

 

由美は夜7時大井町の家まで帰宅すると早速祐一に相談してみた。

「あのね西尾さんが誰か紹介して欲しいんだって、彼女は独身だもん」

「おれの知り会いって言ったって編集の人しかいないぞ、条件のいい

 男に知り合いはいないしな」

「条件悪くても構わないんだって、収入なら西尾さんは高給取りだし

でもね年齢だけは譲れないらしくて30代のみだって」

ここで祐一は30代と聞きSNSで知り合った作家になったばかりの男を

思い出した、会った事は無いので顔は知らないが確か彼も独身だった

年齢は37才、名前は河北將之(かわきたまさゆき)。

「いないこともないな」

「ほんとう?紹介してあげてよ」

「とりあえず彼に話してみるよ、由美は西尾さんの電話番号知ってる?」

「うんスマホのアドレス帳に登録してあるよ」

「それじゃ彼が承諾したら由美から西尾さんに伝えてくれよ」

 

夕食後部屋で川上に電話したがつながらず留守番電話に切り替わっ

たので電話を切った。風呂へ入ろうと考えた祐一は由美に風呂洗い

をしたのか聞こうとしたが声をだすのをやめた。”今日は疲れたと言っ

ていたから休ませてやろう”。以前由美からどんなに疲れてても風呂

掃除はするから洗ってなかったら洗わずに呼んでほしいと頼まれて

いた。浴槽が洗ってなかったら洗いながら身体も洗えばいいと考えた

のである。由美は片づけ上手で箪笥のどこに下着が入れてあるかす

ぐわかるようにしまってある。母と違っていい嫁だと思いながら下着を

箪笥から取り出して浴室のガラス製折り畳みドアをスライドさせて開

けると祐一はわが目を疑うことに遭遇した。

 

「おまえなんて恰好で風呂洗いしてるんだ」

由美は白のシースルーパンティー、シースルーブラジャーの下着姿

で尻を揺らしながらデッキブラシでタイルを磨いていた。さらにパンティ

ーには穴があいていた。

「祐ちゃん、どうこれ萌えるでしょ」

由美の行動、これはどう見ても誘ってる行為だと祐一には思えた。祐

一は精力旺盛なほうだ、それでも1年中発情してるわけではない。

「萌えるって・・・昨晩頑張ったじゃないか、今日は寝るよ。だから風呂

 入るから出て行ってくれない?」

 

昨晩は遊びに来た西尾のせいで由美は嫉妬し淫らに悶えた、祐一の

背中には由美の爪が刺さった生々しい傷跡が痕跡として残っている。

「一緒に入ろうよ、ね、洗わせてあげるから」

「洗ってあげるの間違いじゃないのか、普通の奥さんならそう言うと思

 うが由美はそうじゃないんだな」

祐一は由美と今まで何度も一緒に風呂へ入ったこともある、当然由美

の身体も洗った、だが自慢の黒髪だけは洗ったことがない。男として

一度女の長い髪を洗ってみたいと考えていた。

「今日はね髪の毛洗おうと思ってるの、洗ってくれるかな。出来ればシ

 ャンプーだけじゃなくコンディショニングもしてくれると嬉しいな」

「いいけど、その下着を脱がないと入れないだろ」

「このままで平気なの、これはねそう言う下着なんだよ」

そう言う下着って言われ想像するのが穴が開いた椅子を常備した個

室浴場である。そこで働く女性従事者が身に着ける専用の下着。

”どこで売ってるんだ、そんな下着”そう考えるのが自然だ。

 

結局一緒にはいることになった二人、祐一が長い黒髪を手の指で洗う

と由美は身をクネラセ捩り喘ぐ。それが本気なのか演技なのかは問題

ではない、過程はともかくその結果祐一は昨晩に続き今晩も由美を貫

いたのであった。

そもそも由美の白い肢体は弧を描き盛り上がる豊かな胸に丸く緩やか

なカーブを描く体の線と細い腰、豊穣し実った熟りんごのような尻。

か細く長い脚を目にした男は惹き込まれ祐一も例外ではなかった。

 

翌朝爽やかな顔で起きる由美と対照的なのが祐一である。精を吸い

尽くされたような青白い顔で辛そうに目覚めた。いつもなら6時には

起きている祐一だが昨晩は貪欲な由美の肉体に敗北し今朝起きた

のが8時のことだった。朝なら河北がいるかと思い電話するとコール

の後電話は繋がった。

「もしもし河北ですが祐一さんですか」

携帯に電話帳にて登録してあるので相手が誰かすぐ理解した。

「おはよう河北君、小説はどう・・いや河北君て独身だよね。今つきあ

 ってる女性はいるの」

「はぁ?いないですがそれが何か」朝早くから何を言ってるんだと思った

「知り会いの女性から誰か紹介して欲しいと相談され37歳の河北君

 なら丁度いいと思ってね、女性は34才なんだ。」

「有り難いお話ですがぼくも若くないんで結婚を視野につきあわないと

 いけないと考えてるんですがそれでもいいんですか」

「とりあえず会ってみなよ、会ってから相手が断る可能性だってあるし

 さ会わない前から考えたって仕方ないよ」

 

まだ駆け出しの小説家の河北は収入が低い、確かにマイナスポイント

だがそれで自分の全てが評価されるわけではない。河北は前向きだっ

た、ここが祐一とは違うところだろう。

「相手はどんな女性なんですか」

「断っておくが美人だよ、会社では管理職を務める才女の未婚。相手

 に望むことは30代の独身男性で出来ればクリエイターの仕事する

 人だってさ」

「収入とか学歴の希望はないんですか」

「ないよ、彼女は高給取りだからお金は自分が持ってるからなんだって」

河北は熟慮のうえ一度会ってみる決断をした。

「では祐一先生よろしくおねがいします」

「ありがとう、相手に君の氏名と連絡先伝えることになるけどいいよね」

「構いませんよ、感謝します」

 

祐一は由美に相手の河北が承諾したと伝えると早速由美は西尾の携

帯にメールを送信した。そして夜西尾は自宅でメールを読んだ。

”由美さんからメール、そうか相手が見つかったのね。職業は小説家

37才独身・・・名前はと。”名前を見たところで西尾は文字をじっと見つ

めている感極まった表情で見つめる名前そしてじんわりと瞳が潤んだ。

名前は河北(河北) 將之(まさゆき)

「これってまさゆきって読むのよね、嘘でしょうこんな偶然あるの」

他界した元恋人、雅之のことは決別した筈だった。だがいま彼への想

い、彼と過ごした時間が蘇った。勿論相手と会うことを由美へ返信。

この日、西尾良子は彼雅之の微笑む顔、優しい眼差しがスライド写真

のように切り替わっていく。だが彼の表情は泣き顔から心配するような

笑顔に変わったとき西尾は幻聴を聞いた。

「良子会ってきなよ、幸せになれよ」

 

西尾の頭の中で彼にそう言われた気がした。それはまるで残された西

尾を常に心配し見守り続け非情になりながらも内側では哀しみを残す

西尾、そして彼はその姿を見て哀しんだと今西尾は気づくことができた

「雅之さん今までありがとう、そしてさようなら」

雅之との最後の別れ、本当に本当の最後、西尾良子が泣き続ける。

それは哀しみかそれとも感謝のありがとうかそれはわからない。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません