[短編」[創作][小説][R18]ブログという名の証明書、特別編 由美の耐え難き日々 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

ここ数日というもの家には小早川編集者が泊まり込んでいた。小説

の締め切りが近く祐一はパソコンと睨めっこ、だが考えても筋書きが

浮かばない。由美に文才はないので夫の手助けをすることが出来ず

お茶をだすのが関の山、まだ歩き出せない愛娘のナナの世話が由

美の唯一の癒しともいえた。ナナは手のかかる子ではない、夜泣き

もほとんどしないので夜は由美の自由時間ともいえた。だがここ最

近は泣いてばかりいる、まるで困っている祐一の気持ちを察する様

に泣き続けるナナ。一通り、セオリー通りにあれやこれと試行錯誤を

顧みるが全く異常はなし義母に相談し任せても一時は泣きやむがま

た思い出したように泣き始めほとほと困っていた。

 

「病院には連れて行ったのか?」

「うん、特に異常はないって」

「赤子って親の気持ちがわかるらしぞ、おれが困ってるのが原因か

 それとも由美の苦悩が原因かどっちかわからないが心当たりないか」

夫が困っているのは確か、でも・・・まさかと考えていた。そして自分を

見つめなおした時、別段悩んでいる事もない。ないと思っていたがひと

つだけ有った、それは由美の欲求不満。すでに1週間は夫に相手をし

て貰ってなかった。”でもまさかね”と考えた。それに祐一に対し言える

事ではない「あなたがわたしを放っておくから欲求不満なの」などと。

 

由美は先日スーパーへ買い物に行った時、野菜売り場でヘチマのよう

な大きく濃緑色したキュウリを見つけた。フマキラーの缶に近い太さで

思わず握ってしまうとイボイボがとても心地よく遂食べてしまいそうにな

ったところで店員さんの視線に気づいた。自分の心が見透かされた気

になり売り場を移動したが黒く光るぶっとい茄子に心を奪われた。それ

だけでは終わらずあたりを見回すと大根、山芋、赤裸々なサツマイモ

どれもが由美を惑わせた。人参を見て思ったのは猫ちゃんの・・・みた

い。由美はそれほど欲求不満に陥っていた。それでも自慰行為に及ぶ

ことはない、由美の身体は祐一によって助かったものでどれくらい幾年月過ぎて行こうと由美は忘れない。自分の身体は祐一の為の物だと考

えていたのだ。

知らない人は由美の事を可哀想な女性だと思っているが由美自身、悲痛な想いなど微塵もない。見返りを求めず相手に何かを与えたい、何か

してあげたいそれが二人の愛だからである。

 

「奧さん、お邪魔しました」

「やっと原稿出来たみたいでよかったですね」

「これも奧さんのおかげですよ、では失礼します」

由美が買ってきた品物を片づけてると小早川が帰って行った。どうやら

原稿は上がったようで内心ほっとした由美である。レジ袋のキュウリを

見つめ考えていたが今は片づけておこうと大事そうにシステムキッチン

の収納庫に入れた。祐一の部屋へお茶を持って行ってみると祐一は

机に頭を寝かせてダウンしている、どうやら精気を使い果たしたようだ。

「お疲れさまでした、頑張ったね」お茶を渡すと手が伸びた。

「ほんとうに疲れた、待たせて悪かったな、でももうちょっと待ってくれ」

由美は祐一が何を言っているのかわからなかった。

「やん、何を・・・」

「おまえのお尻触ると本当に癒される」

「しばらく寝るから。悪いんだけど起きるまで待ってくれるか、その代わり

 朝まで頑張るから」

赤面し祐一の言葉を聞いただけで芽花椰葉(ブロッコリー)は熱く燃えた由美。でも今は寝かせてあげようと部屋を静かに退出した。ナナの所へ

行くと相変わらず娘は泣き続けていた。

「ママねやっとパパの嵩蓮根(かされんこん)を嵌めて貰えるんだよ、い

 いでしょ」と試しに言ってみた。

まだろくに言葉を話せない娘に囁く言葉ではないが由美は囁いた。

するとどうやっても鳴き声は止まらなかったのにナナは涙のダムを閉じ

久しぶりに微笑んだ。子供は親が想像する以上にいろんなことを考え

感情を理解する力があるのだと由美は痛感した。”そうか子育てはこう

やってママも勉強していくんだね”と気づいた。

そしてママの苦悩に対し哀しんだ娘ナナがとても愛しくなった由美だった

 

翌朝は夫の嵩蓮根(かされんこん)を受け入れマヤは久々に清々しい朝 

の目覚めを感じる事が出来た由美はある事に挑戦してみようと考え先日買ってきた極太のキュウリを収納庫から出して凝視している。

”まだ寝ている筈よね、ちょっと試してみようかな”

買った以上勿体ないので夫の嵩蓮根(かされんこん)とどちらが気持ちいいか試してみようと考えたのである。だが手に触る感触は固くても所詮

野菜、繊維質で作られたもの故に折れる時は簡単。案の定、真朱色

(まそおいろ)した芽花椰花に受け入れ半分くらい差し込んでからポキリ

と折れてしまった。

「きゃー、どうしよどうしよ」キュウリの半分は肉腔の中にあるのだ。

こんな姿を祐一に見られるのは恥ずかしいしこのままにしておくとい

ずれ祐一に怒られるのは目に見えていた。指で取ろうとしても胡瓜に

届かず気持ちは焦る、馬鹿な真似するんじゃなかったと後悔しても遅

い。両足開いて足をバタバタしても出てくることはなかった。

「おまえ、何してるの」

「きゃぁああ!」見られてしまった、と由美は思った。

「なんでそんなところに胡瓜(きゅうり)が転がってるんだ?」

祐一が目線を下に向けると無残に折れた胡瓜が転がっていた。ここは

泣いて助けを求めるしかないと由美は考えた。

「あのね、胡瓜が取れなくなっちゃったの」

「はぁ、何やってるんだようちの嫁は」

「トイレで糞してくれば出るんじゃないか!馬鹿だろおまえ」

「トイレでう。こが出なかったらどうするのよ」

「トイレで力めば出るだろうよ、糞がでなくてもな」

「・・・やってみる」

すると精神的に疲れたのかため息をついてキッチンから出て行った。

「もうちょっと寝るからもう馬鹿な真似するなよな」

「ふんだ!ずっと待たせたのは誰よ」

 

由美がトイレで力んでいた頃祐一は部屋で腹を抱え大笑いしていた。

トイレからは聞こえないのだ。やがて由美は絶叫してトイレから出て

祐一の部屋へ走った。

「祐ちゃん、見てみてほら、これ!みてみて。取れたんだよ」

祐一の目の前には濡れて萎れた太い胡瓜、しかも湯気立っている。

「そんなもの見せなくていいから、捨ててきなよ」

胡瓜を見て一気に気持ち悪くなった祐一、彼にはわかっていた由美が

その胡瓜を手で取るためには便器の汚水に手を突っ込む必要がある

由美は便器の水に手を突っ込んだに違いない。

 

「ところでさ由美、手はちゃんと洗ってきたんだろうな」

「うんにゃ、まだだよ。取り急ぎ見てもらおうと思ったんだ」

「お前その手でドアノブ回したのか、おいゆみ」

「まぁそうなるね」

「あとでちゃんと掃除しておけ」

「なによ、ちゃんと見てくれてもいいじゃない」

由美はぶつぶつ文句を言いながらトイレへ向かった、祐一から掃除

をしろと言われたのでトイレを掃除する為に。だが祐一と由美はここ

で思考にズレを生じさせた。祐一はドアノブさえキレイにしてくれれば

良かったのである。ドアノブは結局祐一が消毒した。

このように世間では思いあってる二人、相手の考えがわかっていると

言われているが実はそうでもない。細かなところで意見の相違がある

それは人間同士致し方ない事なのだ。ただ話はこれで終わらない、

続きがあった。

 

祐一は由美の捨てた胡瓜の撮影をしてネットにアップさせた。祐一の

復讐はそれだけに終わらず自分のブログに妻の不潔さを書いた。

たまたま祐一のブログを見た由美の元後輩で現在は同僚のさゆりに

知られた。最近は生活環境や忙しさのせいでお互いブログを見る事

もなく相手が何を書いてるか知らなかった二人。

 

「先輩の旦那さんて酷い人ですね」

「あなたいきなり何言うの?わたしの愛する旦那様のことを」

「だって先輩、旦那さんのブログ記事知ってます?」

「知らないけどそんなにひどい記事なの」

そういえばここ半年ほど祐一のブログを見た事はなかったと由美は考

えた。自分自身も子育てや農作業でブログの更新もしていない。

そして祐一のブログを見てみると驚愕の記事が書いてある。初見は

驚きで声がでない、だが段々と怒りがこみあげてきた。

「なんなのこれ~!」

「ねっひどいですよね」

そこに書いてあったのは”僕の妻はトイレに入っても手を洗って出て

こない、彼女はそれが普通なようだ。みなさんは彼女の容姿に騙され

本質を見誤っている。先日も僕に内緒で太い胡瓜をスーパーで買って

隠していた、目的は自慰行為に使うため。そして使い終わると僕に食

べさせようと考えていたみたいだ。証拠写真をお見せしよう、これが

その写真である。あの女はどうしようもない淫乱である、ぼくは騙され

た。”由美は続けた、書き込みされたコメントを読んでみた。

「なになに、そんな女性と知らず憧れてました裏切られた気持ちです」

「次のコメントでは、えとあんな女別れちゃいましょうよ先生ならすぐ

 見つかると思いますよ」

由美は怒りでボールペンを握る手は震えていた。

「ゆ・う・いち、待ってろよこのままじゃ済まさない」

「先輩落ち着いて、きっと魔がさしたんですよ」

そして由美はコメント欄に書き込みをした、そう怒りをこめて。

「祐一さん、大変だったわね。ゴミ箱から胡瓜見つけるの大変だったで

 しょう?でもねあの胡瓜のほうが祐一さんの物より気持ちよかったの

 そんな胡瓜さんをあなたに食べさせるわけないじゃない、馬鹿なのあ

 なた。その胡瓜はわたしがおいしく食べようと思っていたのよ。それか

 らねあの晩、たしかあなたは私の手を舐めたでしょ?その時もトイレ

 から出た後洗ってなかったのよ、大変あなたの腔内はばい菌だらけ

 じゃないかしら」

 

この報復処置として由美は持参した弁当をゴミ箱に捨て写真を撮影

そしてブログに投降した、文章は以下の通り。

”菌に冒された夫が作ったお弁当など危なくて食べれないわ、今日か

ら会社のゴミ箱に捨てる。今夜も夫婦生活はない、あの夫祐一に手で

触られると思うと虫唾が走る。でもわたしは夫の様にせこい真似してプ

ライバシーを見せる真似はしない。それに比べてあいつは夜の営みを

自慢気に知り会いに話した。あなたの旦那さんがそんな事したら貴女

はどう思いますか。夫にしか見せない顔をわたしは見せられてしまっ

たのです”

 

その結果、由美のブログはたくさんのいいねをつけられた、すべて女

性からだった。こうして夫婦の戦いは幕をあけたのであるがいい迷惑

を被ったのは編集者である。なぜなら祐一は由美のブログのせいで

多くの女性読者を失う事になる。ここまで来る前にはその予兆となる

ものがあった、それは一つではないその中のひとつだけでも消してい

たなら今の争いは起こらなかったかもしれない。だが一度勃発した紛

争は和解することは厄介なのだ。

 

夫婦の営みが消え次に来るのは別居、そして離婚へ発展していく。

身内や友人、会社関係が仲介に入ると当人たちは意地を張り戦いは

悪化する。そこでどちらの見方にもならない状況を冷静に分析し判断

する第三者が必要となる。

 

由美と祐一は夜の生活が消え今別々に寝ている、別に寝るようにな

って1週間が過ぎた。寝付けない由美はなぜこんな事態になったのだ

ろうと考えていた。

「たしか自慰行為には怒っていなかった、それから先よね」

と記憶をたどっていくと手を洗ってない事を気にしていた。そして言った

”その手でドアあけた”とドアをあけることに必要なのはドアノブを回す

こと。由美は気づいた、祐一はドアノブを掃除しろと言ったのだ。それを

自分は間違った解釈をしてトイレを掃除してしまった。

手を伸ばせば届くところに祐一はいる、でもそこは遠い、由美は「祐~

ちゃん」と泣き呟いた。

 

祐一も眠れず由美と同様に回想していた。祐一も由美と同じく手打ち

を願っていた。でも祐一は由美と違いやってはならないことをした。

プライバシーの侵害である、後悔してもやってしまったことは正せない

だが謝る事は出来ると思ったが誤って済むことではないのだ。

原因を思い返してみると確かにドアノブを掃除しなかった由美に原因

がある、だが祐一が掃除すれば済んだことでもあった。さらに思い返

すと由美が困っている時自。分は口だけで親身に助けるべく行動しなか

ったことを思い出した。もし祐一があの時点でなんとかしてやれば由美

がトイレへ行く必要もなかった。祐一は由美が寝ている方向を見つめ

想いを馳せた。

 

自分の方割れ分身が相手であれば別れることは出来ない、今ふたり

が同じように考えたのは片割れであるから当然のこと。ふたりはいま

自分の過ちに気づいた、後はきっかけだけである。

 

その男が六芒輪家へ現れたのは嵐の夜だった。夜8時、祐一の家に

訪問者がやってきた。こんな日に誰だろうと出た祐一は驚いた。

それは長い間会っていなかった2歳年上の幼馴染だった。

「よぉ祐一、久しぶりだな」「柳生さん」

「あなたが由美さんですか、はじめまして」

柱の影から覗きこむように見ていた由美を見つけ柳生は声をかけた。

「こんばんは妻の由美です」

「柳生さん、会えて嬉しいんですがまたどうして?」

「ある人間からの依頼できみらの仲を取り持つためきたんだよ。」

「ある人間とは誰です」「それは言えない」

「あの柳生さんっておっしゃられましたよね、さっきからそこに女性が

 見えるきがするんですけど」

「ああそれはね他界した妻のマヤだ」「ひっ幽霊?」

”わたしのことが見えるとは驚いたわ”

 

マヤはとうり天が転生した人間である。摩耶夫人ともいい愛の女神。

柳生がある人間から依頼されたと言ったのは嘘だった、実はマヤが

柳生に頼んだのである。柳生もまた不動明王が人間に転生した姿。

柳生は二人のきっかけを作るためにここへやってきた。マヤは二人

の諍いを見て憂い再び結びつける為柳生に頼み現れたのだ。

 

神格ふたりのおかげで祐一と由美は元のさやに収まる事が出来た。

以降二人に別れはやってくることはない、神格の恵みを受けたから。

そして長かった由美の耐え難い生活は幕を閉じた。

 

「な、マヤ妙義山で祐一に手助けする為時間を止めただろ」

「さぁどうかしらね」マヤは不適に微笑み二人は消えた。

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません