[短編」[創作][小説]ブログという名の証明書3 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

由美と両親が見合い会場まで来る30分前、祐一は車中にて焦って

いた。自宅に停めている車の中でいくら待っても母親がこないのだ。

夕べ確かに母に伝えた、「明日行くんだから準備しといてくれ」と。

だが当日の朝、すなわち今日の朝にもう一度今日は見合いだからと

言うと母親は言った。

「なんで急に言うの、前もって言わないとわからないよ」

祐一は1週間前からいっておいたが年寄りというのは気持ちだけは若

いのか記憶する自信があるのかカレンダーに書き込みしていなかった。

「昨晩も言ったじゃないか」

「見合いの事とは思わなかった」

祐一が母親に言ったとき、母はわかっていると言った。

 

そして朝から母親は着る服を探し回る結果となってしまった。

祐一のは母はとりあえず片づければいいと考える性格だったので後の

事は考えず服でもなんでも格納してしまうのだ。後で見つける時のこと

を考え収納すれば楽に見つけられる筈なのだ。この上着にはあのスカ

ートがいいと母が考えても格納した場所にそのスカートが見つからな

い。時間はないのだから妥協すればいいのだがそんな考えは出ない。

農家の主婦は朝が早く5時には目覚めるが今の時刻はすでに7時半、

8時に出かけなければ約束の時間に間に合わない。

車の中で祐一がどんなに苛ついても母がこなければ出発出来ない。

 

母が車にやってきたのは8時半だった、すでに30分遅れている。

もし相手の女性がブログ友と知っていたら遅れる事を電話連絡しただ

ろう、だが祐一は知っていないのだから電話はかけなかった。いや掛

ける事が出来なかったのである。

 

待ち合わせ場所のホテルへ到着したのは約束の時間からすでに45分

経過してしまった。ホテルのサービスカウンターで聞くと先方はすでに

席で待っておられるらしい。急ぎ祐一と母は向かった。

 

「お待ちしておりました」とほほ笑む見合い相手の女性に対しご両親は

不愉快な表情が一見して理解できる。

「遅くなりまして申し訳ありません」祐一が謝罪すると堪忍袋の緒が切

れたように先方の母親が怒りを露わにした。

 

「お見合い相手の女性を待たせ遅れてくるなど言語道断、お見合いす

 る以前の問題ですよ!お帰りになって結構です」

「ママ折角お見えになられたんだ、少しくらいの遅れくらいいいじゃない

 か」

「そうよママ、わたしは気にしてないから」

「あなた、今日のあなたは少しおかしいですよ」

 

由美の母は夫の態度を疑問に感じていた、社長でも夫は常に時間に

厳しく待ち合わせ時間に間に合わないような人間ならば会う必要はな

いと常日頃から言ってる時間に厳しい人間だった。本来なら真っ先に

怒る筈なのに苦情を告げた妻を窘めたのだから妻が異様に思うのも

当然だった。

 

「どうか息子を責めないでください、遅れた原因はわたしですから」

「かぁさん、いいんだよ」

「伊藤さん本当に申し訳ありませんでした」

「ところで六芒輪さん、約束の経歴書は持ってきてくださいましたか」

「はい」

祐一は黒いバインダーを開くと中に挟んだ1枚の用紙を伊藤氏に手渡

した。ただ伊藤は手渡された経歴書をその場で破り捨てた。

「なにするんですか伊藤さん」

「すまない祐一さん、娘から経歴書で判断するなんて馬鹿げた行いと

 怒られてしまいましてね」

 

祐一はその言葉を聞き由美に視線を移した。ピンクのベージュの短い

ジャケットの下は黒いレースのワンピースが見える。胸元には撚れた

造化みたいな物がジャケットには不似合いだと感じた、だが見合い相

手の由美は見合い写真でみるより数段美しく可憐、目を合わせるのも

気が引ける。そんな風に思っていた祐一に由美は声をかけた。

 

「お会い致したく思っておりましたわ」

「叔父の話ではわたしをご存知だそうで、どうしてですか」

由美は真っすぐ祐一に対し視線を送るのだが祐一はその視線を流した

「今は話せません、ですがいずれおわかりになると思いますよ」

「それはどういうことです」

食事をしながら話している由美と祐一、だが祐一がふと母のほうを向く

と母は何やら”ゴソゴソ”している。

「かぁさん、何やってるんだよ」

「いや食べきれないから勿体ないだろう」

 

母親は持ってきたバッグの中からタッパーを取り出しだされた料理の

エビチリやポテトサラダ、牛のサーローイン肉などを詰めていたのだか

ら祐一は恥ずかしくて仕方がない。笑ってみる見合い相手だと思った

のであったが・・・

「おかぁさま、わたくしがお手伝いしましょう」

由美はそう言うと母のパッカーに料理を詰め込んいるではないか。

「祐一なに恥ずかしがっているんだい、おまえだって地元のレストラン

 じゃ持って帰ってくるじゃないか」

「ここはそういうレストランじゃないんだよ」

「そうなのかい」

「あはは、おかぁさん問題ないですよ。わたしが後で支配人に話して

 おきましょう」

 

伊藤夫妻は同席しているのが恥ずかしくなったのか席を立ちトイレへ

行くと離席した。まぁ支配人のところへ挨拶に行く用もあったのだろう。

ただここで事件が発生した。震源地を千葉沖とするM6,5の地震が

都内で発生した。テーブル上にあった大きな皿は料理共々下へ落下

ガラスのワイングラスは床で破裂するように割れ人が立っている事

も出来ない、床は大きく揺れる横揺れが発生。

 

「きゃぁーー」と悲鳴をあげる由美にいち早く反応したのは祐一だった

「祐一、テーブルの下にもぐるんだよ由美さんも早く」

母が大きな声で叫び二人はテーブルの下に入った。

ただ祐一は足がもつれ由美を押し倒す様な恰好で二人は倒れた。

”ドックン、ドックン、ドックン、ドックン」と二人の心臓音はお互いに聞こ

えるくらい大きな音を発した。

 

今祐一の目の前にはふくよかな由美の二つの胸がある。祐一の視線

に気が付いたのか由美の頬は真っ赤に染まった。服を着てはいても

二つの丘は地球の引力に負けていなかった。

「祐一さんあまり胸を見ないで」

「そんなこと言ったって・・・」

祐一が由実の胸元から上へ約5センチ視線を移すとそこには例の造花

がつけられてた。向かい合って座っていたときは気づかなかったがその

直径5センチくらいの花、花びらにはマジックで書かれた文字が見える。

”鬼?”

地震は10分くらいで終わりを迎え揺れは止まった。地震は二人の運命

を決めた、もし地震が起きなかったらどうなっただろう。

 

「この花はブーゲンビリアですかね」

祐一は花に詳しいほうではないがブーゲンビリアくらいは知っていた。

あえて思ってもみない花の種類を由美へ言ってみた。

「違いますよバラですよ」

”おにばら”・・・

「プっ!あっははは」

「何が可笑しいんですか、怖い目にあったというのに」

「だってさ、笑わずにいられないよ。由美さん、鬼バラでしょ」

「あ・・はい」

由美は不安げに祐一の顔を見つめると暖かい眼差しが由美の黒目

には映った。

 

「黙っていたことに怒ってない?」

「いやむしろ嬉しいくらいだよ、だっておれのブログ友さんがこんなに

 キレイな人でいつでも手が届く距離にいるんだから」

「えっち!セクハラで訴えるよ」

祐一が笑うと由実が微笑んで答えた。

 

二人が会話している間も祐一の母は何かを探していた。それは勿論

一生懸命料理を詰め込んだパッカーだった。母親の足下にあったパ

ッカーは水も漏れないタイプだったので料理は混ざり合ってしまった

ものの無事だった。伊藤夫妻が戻ってきたのはしばらく経ってからの

こと。

 

「大丈夫だったか」

「由美ちゃんなんともない?ケガしたんじゃないの」

「大丈夫よ、祐一さんが身を挺して守ってくれたわ」

「ねぇ祐一さん」

「いえまぁその」

 

由美の母親は由美の言葉遣いが変わったことにすぐ気が付いた。

先刻まで丁寧な言葉を話していたのに今はまるで長年の友人に

接するかのような話し方の由美に。

 

「へぇそれは良かったわね」

「なにはともあれ由美と祐一さんは親しくなった様で安心した」

「ではだな、由美は祐一さんのおかぁさんと少し話してきなさい。」

「君も一緒に話してきなさい」

「そしてわたしはここで男同士祐一さんと談話するとしよう」

由美は父の言葉に不快感を露わにする。

「おとうさん、わたしのお見合いでしょ。もっと祐一さんと話さなければ

 ならないことがたくさんあると思うのよ」

「もう必要ないだろ、だって由美は祐一さんと結婚するんだろ」

「え・・・そうかもしれないけど」

「由美ちゃん、そうなのか」

 

由美の心情を父に悟られた瞬間であり祐一が由実の気持ちを知った

瞬間でもある。由美は真っ赤になり俯いてしまった。ただ由美の父は

まだ祐一の気持ちを聞いてはいない、愛する娘のために父は自分に

出来ることをしようと考えていた。

 

「祐一さん、年が近いとはいえわたしは由美の父、あなたのことは祐

 一君と呼ばせて貰ってもいいかな」

「いいですよ」

「率直に聞くが祐一君は由美と結婚する気はあるのかね」

「伊藤さんわたしは娘さんには幸せになって欲しいと考えています、だ

 けどそれはわたしじゃない。わたしには由美さんを幸せには出来ま

 せん」

「それはどうして?収入かね」

「金も理由のひとつです」

「確かに金があれば余裕が生まれる、だけどねイコール幸せではない

 んだよ。いろんな幸せが世の中にはあるが金があれば選択肢が広

 がるだけのこと。生活の事ならわたしが援助しよう、仕事ならば斡旋

 することも可能だよ」

「わたしも男です、家の暮らしに手助けは不要」

「そう君が言うのはわかっていた、だけどね娘の由美に必要なのは

 君以外にはいないらしい」

 

二人が白熱する会話をしていた頃ホテルの談話室では和やかな女

同士の会話が続いていた。祐一の母親は家宛てに送ってくれた女性

のことを危惧しておりいまひとつ由美の受け入れは気乗りしなかった。

 

「由美さん、実はね祐一には4年も交際する女性がいるらしい」

母親は思い切って由美と由美の母に告白してしまった。

「それは本当ですか」と由美の母は驚いた。だが由美は動じない

それどころか由美は笑顔を見せた。

「おかぁさま、ニット帽を気に言って頂いてるそうですね」

「贈って良かったと思ってますわ」

「贈って?あれ、あなただったの」

「あ、はい」

 

微笑んで頷く由美を見て由美の母親は黙っていられなかった。

「由美ちゃん、あなた実の母親であるわたくしには何もくれないじゃ

 ない。」

「だってそりゃ好きな人のおかぁ様と母親じゃ違うわよ」

「おかぁさん、実のこどもなんてそんなもんですよ。祐一だってわた

 しには何もくれないし」

「悲しいもんですね母親なんて」

「でもねママ、祐一さんが何かくれるんじゃない?多分」

「たぶんねえ・・・じゃ期待してみようかしら」

「期待はずれだったりしてね」

 

話が一段落すると祐一の母親は厳しい話に変えてきた。

「由美ちゃん、祐一は貧乏だよ。あなたはそれでも我慢できる」

「おかぁさま、夫婦はお互いないものを補うものだとわたしは信じて

 います。それがお金であればわたしが稼いでみせます」

 

今、由美は先日先輩から秘書室へ誘われたことを思い出していた。

秘書室へ移動すれば給与は上がる、ただ秘書への道は由美を苦難

に陥れる道だ。勿論いまの由美には考えることが出来なかった。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません