[心霊][短編][創作] 霊章で行方不明になった人を探せ 続12 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

日本列島の南、東シナ海で熱帯性低気圧が発生その後発達して

台風となった。気象庁は非常に強い台風と注意を全国に促したが

何度目の非常に強い台風なのかと日本国民に危機感はなかった。

だが衛星写真では台風の目が過去最大、沖縄では降水量500ミリ

太い樹木をなぎ倒し甚大な被害を沖縄に与えた。そのスーパー台

風が今柳生のいる東京へ上陸しようとしていた。異常気象はまだ

続く西のシベリアからマイナス35度の寒冷前線が日本海を渡り関

東までも広がろうとする最中、冷たい空気と温かい空気がぶつかり

合うと上空で渦を巻き地上には雹(ヒョウ)を降らせ雷雲を生む。

 

柳生達がいる病院の上空では温かい空気は上昇し冷たい空気

は下降して今まさにぶつかり合おうとしていたところであった。

先程まで降っていた横殴りの雨は突然止み低温の病室内と外気の

温度差で窓ガラスは白く曇っている。

 

「マヤそちらの女性が蓮池愛美さん?」

「祥子さんの苦悩はすべてそこの逸美さんから始まった事なのです」

 

柳生は耕作の妻、祥子に会ったことがない。著名人だった逸美の事

も知らなかった、逸美と祥子の容姿がそっくりだということも知らなか

った。いつ、どこで、だれが、何を、どうした。いわゆる5W1Hを柳生は

マヤから聞かされていない。だがこの会議でキーポイントとなるのは

蓮池逸美と耕作の妻、祥子であるとなんとなく理解できた。

 

”カン、カン、カン”

「なんだこの音は」

「ヒョウが降ってきたようね」

柳生が窓際に行ってみると暗かった屋外が一瞬光った。雷である

遠くでは天空から光る糸筋のようなものも見える。

「まずいわね」

「大雨になるとでもいうのか」

 

マヤは大災害に危惧してるのではなかった、このような天気の後に

やってくる奴らがいるのだ。今から500年前にも今宵のような天気

だった、奴らのせいで多くの人が犠牲となったが人類の歴史上では

火山の大噴火として記録には残っている。

 

「邪悪(よこしま)なる者共がここへやってきます」

「なんだいそいつらは」

「人間がいうところの悪魔または日本の百鬼夜行でしょうか」

 

マヤには奴らがどういう目的でここに来るか、その理由を知っていた

人類の虐殺も目的のひとつだが主たる目的は蓮池逸美の確保であ

る。一体づつ浄化しすべてを浄化するまでまだ何十年もかかる。

会議をする今晩に対峙する予定ではなかった、マヤは焦った。

確かにこの会議には不動明王がいる。今の魂だけの存在では・・・

簡単に言えば7色のオーラを纏えるのは高僧、不動明王は7色を越

える12色を纏う、1色1色は霊体エネルギーなので多彩なオーラ程

エネルギーは多いのだ。現状の不動明王は5色のオーラである。

 

関東上空では漆黒の厚い雲が冷気と暖気が衝突し渦を巻き始める

小さな渦はやがて範囲を広げ大きな流れを作る。渦の中心に向かっ

て勢力を集め気圧が高まった大気は逃げ場を求め下方向へ膨らむ。

極限まで圧縮された大気は地上へ向かい一気に放出された。

発生したトルネード(竜巻)は路上駐車の乗用車、走行中のトラック、

レストランの廃棄物などを吸い込み灰色だった空気は褐色の黒へと

変貌していった。

 

病室内では大きな揺れが発生、霊体である耕作達や幽霊の逸美まで

もが揺さぶられる磁場の揺れが起こっていた。

「地震だ」誰かが叫んだ。

「いいえ違います、地震ではありません。奴らが現れる前兆です」

マヤは隣室に接する壁を指さし凝視していた。

 

異形のモノ共は空間を切り裂くように突然姿を現した。

乱れた白髪に黒ずんだ顔と奥に窪む眼、歪んだ唇は嗤うその者を中心

として大小さまざまな大きさの顔が周囲を取り囲むようにする。100体

程の1個師団、悪霊というよりは悪魔の軍隊である。

 

「その娘を貰い受けにきた。」

「ジャックですね、あなた方の思い通りにはさせない。」

「盟主アザゼル様の意向に背くものは全て排除する、たとえ菩薩でもだ」

 

不動明王は剣を抜き対峙しようとしたがマヤは左手で制した。完全復活

してない不動明王では転移させることは出来ても不浄の輩を浄化する事

は出来なかった。マヤにとっても相手が悪魔の軍団では荷が重すぎる。

マヤが全力を出せば撃退は可能だろう、ただし関東はその衝撃で消し飛

ぶ事となる。もしジャック達を撃退できるものがいるとすればそれは・・・

 

「おれが相手をしてやろう」

「ひろしくん、あなたでは無謀というもの。今のあなたでは」

「マヤ心配無用、これまでも悪霊は退治してきた。」

”あれは悪霊じゃないの”マヤは心の中で叫んだが柳生には伝わらない。

 

柳生は意気揚々として立ち向かっていくがまるで壁にぶつかるように跳ね

返され倒された。内臓にダメージを負ったのか口から血を吐き出した。

何度倒されても再び起き上がりまた向かっていく柳生の姿は感動を与える

かもしれない、事実耕作たちは涙した。だがマヤはそうではない。

”お願い、やめてあなた”

菩薩となったマヤではあるが今も昔も柳生はマヤにとって愛する夫なのだ。

未来永劫、柳生とマヤが連れ添う為にはまだ必要なものが柳生には不足

していた。柳生がそれを得ることが出来ればマヤの眷属になれる、だが今

ここで死ぬことになればマヤとは永遠の別れが待っている。

 

「消えるがいい」

蘇った切り裂きジャックと悪魔の軍団は柳生に向けて炎の放射を打ち放

つ。灯油式草刈りバーナーの燃焼温度はおよそ600度だが今柳生が受

けた炎の温度は倍の1200度、人が発火するのは瞬時で起こる。

「うぎゃああ~」

柳生は炎に包まれ身を捩りながら絶叫した。

人間の女性ならば目を覆う場面であるがマヤは視線を変えず柳生を直

視する、両目からは涙が溢れ流れるがそれでもマヤは見る。どんな結果

が待っていようと見届ける覚悟がマヤにはあったのだ。

燃え続ける柳生の身体は髪の毛が焼ける匂い、人肉が焼ける匂いが部

屋中に蔓延し鼻を覆いたくなる悪臭を放つ。その状況でも柳生は立ち続

けた。

 

「すまないマヤ、これでお別れだ。さようなら」

「さようなら、あなた・・・」

最後の別れがお互いに終わった時、柳生の身体は崩れ落ちていった。

耕作も逸美も耕作の担当医も柳生を諦めた、柳生は死んだと。

だが不動明王には先程から姿勢を崩すことなく何かを待ってる様子さえ

見受けられる。柳生は燃え続け今は肉の塊となりそれでも燃焼を続ける

だが驚くことに柳生には意識がいまだ存在していた。

 

”柳生よこのまま去るというのか、まだ貴様には為すべきことがある筈”

”おれを呼ぶのは誰だ”

”貴様には待つ人がいる、みんなが貴様を待っている”

”我が名を呼ぶがいい、柳生よ”

その声とその話し方に柳生は覚えがあった。あれは異世界での会話だ。

”そうだ、あの男だ”

”不動明王よ”

 

その刹那、不動明王は光の塊に変わり燃える塊となった柳生に吸い込

まれた。ジャックと悪魔団は逸美を捉え連レ去ろうとする時、異変は生

じた。燃え尽きようとしていた柳生の肉片から12色の眩い光が発行し

暗闇となっている病室はフラッシュでたかれたかのように一気に明るく

なる。沼地から現れる人の如く光に包まれた男が徐々に浮き上がって

きた。胸元には両手で持った長い刀剣を携えて。

マヤが密かに願っていた完全なる不動明王化、今それが叶った。

 

「我は軍神、不動明王である。不浄の者よ消えるがよい」

柳生と一体化した不動明王はそう告げると多数の悪霊が集まった悪魔

に向かって長い刀剣を振り下ろした。銀色に輝く光の帯が刀剣の軌道

に沿って打ち出されると悪霊共は分断され消えていった。集合体の中

央にいたジャックは生き残り逃亡を図ったが何者かに逃走を阻止された

「ジャックよどこへ行く」

「逃げるのは許さない」

現れたその者は背中に白い翼をを持つも容姿は人間の男性に近い。

「アザゼル様お許しを」

「消えろ!クズめが」

アザゼルがそう呟いただけでジャックは湯気を上げ消えた。

 

「アザゼルか、古き友よ今ここで勝敗を決するとしようか」

「わが盟友よ、今は去るとしよう。次に会う時はどちらかが消える時だ」

「不動よその時まで鍛えておくがよい、また会おう」

 

悪魔の軍団とアザゼルが消えると今まで騒がしかった天候も嘘のように

静かとなり夜空には星々が輝いていた。だが竜巻は壮絶な足跡を残し

首都のあらゆる所で甚大な被害をだしていた。柳生達のいる大学病院

は被害が少ないが東京には材料費を削り建築基準に満たない違法建築

物が多い、そのようなマンションやビルは倒壊した。竜巻によって吹き飛

ばされた人間も少なくはない、時間が深夜だということもあって帰宅中の

事故こそ少ないものの就寝中だということもあり寝たまま重量物に押しつ

ぶされ死亡した人々は多かった。

 

「逸美、あなたの優柔不断な行動が今回の災害を生みました。あなたは

 その現実を受け止めなさい。そして死亡した人々に誠意を見せなけれ

 ばならない。」

「マヤ何も今そんな事を言わなくていいだろう」

「不動よ元夫とはいえ私に対して意見を述べるなど身の程を弁えなさい」

「くっ」

 

マヤからそのように攻められ元々鬱気味だった逸美は更に落ち込んだ。

だが誠意を示せと言われてもどうすべきかまったくわからない。マヤに聞

てみようと思うも”そのくらいもわからない”と云われそうで怖かった。逸美

は生前から何か悪いことが起こるとまず自分を責める性格だった、他界し

た今もそれは変わらない。”わたしのせいだ”

「逸美よ、今回の災害で多くの方々が死にました。就寝中だったこともあり

 自分が死んだ事も自覚できない、あなたのようにね」

「彼等をあなたのようにしてはならない。あなたは希望や夢を与えなけれ

 ばならないのです、それがあなたのすべき役目です」

 

マヤは口には出さなかったが逸美に歌で希望を与えなさいと遠回しに言

ったのである。今は理解できないかもしれない、いずれわかる時がきっと

くる。不動明王となった柳生に反感を持たれるのは覚悟のうえでマヤは逸

美にきつく言った。マヤは人間ではない、菩薩なのだ。神格ならば人から

反感を持たれようとも言わなければならないことがある、それ故に。

 

静寂の病室で今、会議がはじまる。

すべては蓮池逸美と翔子のために

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません。