[短編小説]  人形憑依(ホラー) | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

みなさん はじめまして。

ぼくは呪いのリカちゃん人形と世間では言われている

者です。別段人に恨みは持っていませんし呪う(のろう)

気持ちなど毛頭持ち合わせていないのですがなぜか

呪いのリカちゃん人形と呼ばれるようになってしまい

ました。

 

女の子の人形なので普通は女の子の幽霊が入る

ものが常識なのですがぼくは5歳で事故死した男

の子です。まずはぼくが事故死した経緯からお話

しましょう。

 

あれは夏の暑い日、ぼくは近所の河で大好きな

ザリガニ(アメリカ真っ赤ちん)に興じている時の

事でした。網ですくうとグレーのまだ小さいザリガニ

ばかりだったので今日はよくないと感じていたん

ですが”ポツリ ポツリ”と雨が降ってくると河に

濁りが入ってきて赤くなったザリガニが取れるよ

うになってきました。そうなると面白いもので

片腕はさみのザリガニ、大きなザリガニなど

僕は周囲のことなど無関心で取ることだけに

集中してしまったのです。ダム放水のサイレン

が鳴り響いたのは気づいていましたが鳴っても

河の水はそんなに増えないと甘くみていたのが

大間違い、数分後には津波のような濁流に僕は

飲み込まれて河の中で僕は踊るように揉まれて

さらに腐った木に押しつぶされ僕はこの世を去り

ました。ママに言われていたのに

「サイレンが鳴ったら河から離れるのよ」と。

今も僕は見つけて貰えず河の冷たい水の底に

泥水や砂と共に埋まっています。

 

幽霊となった5歳の僕は採ったザリガニを探してる

内に成仏ができなくなり街中をふらついていると

ごみ捨て場に埋まっている女の子の人形をみつけ

なぜかわからないけどこの人形を見捨てる事が

出来ず人形の中へ吸い込まれていきました。

 

泥やゴミの汚水で人形は頭から悪臭を漂わせて

見るも無残な容姿だったのです。

それが当時人気だったリカちゃん人形と後になって

知りました。ぼくの話はここまでリカちゃん人形につ

いては僕が先生と呼んでいる太ったおじさんに話して

もらいましょう。

 

時は昭和の時代、今から45年くらい前の事

昔はお菊人形のような和服を着た人形しか存在

しておらず着替えが出来るリカちゃん人形の発表

は一世を風靡したものである。その当時の日本女性

の体型は現在とはかけ離れ足は短くずんぐりしていた

サラリと 伸びた長い髪、長く白い足を含めた身体は

スラリとしていてすべての女性が憧れるプロポーション

女の子たちの間でヒットしたのは至極当然だった。

 

リカちゃん人形は改良され音声も出るように変わっていく

「わたしリカちゃん。」

声の出現と共に着替える服もバリエーションが増え制服

や家なども発売されるようになった。

 

捨てられたリカちゃん人形に入った少年の名前は宏和

(ひろかず)、坂下家に生まれたひとり息子だった為

両親の悲しみは大層おおきく捜索隊を編成し河川を

探した、捜索期間はおよそ2年。それでも見つからず

少年の遺体は現在も見つかっていない。

 

宏和(ひろかず)の魂が入ったリカちゃん人形はゴミ捨

て場からどうなったというと60過ぎの初老女性が拾い

自宅へ持ち帰った、無残な姿のリカちゃん人形を修復

するために。まだ幼い宏和に人形を修復するなどわかる

筈もなく腕をとられる時、足を取られる時と恐怖を味わ

っていた。”殺される”と思っていたのだろう。

恐怖を感じた都度、宏和は泣きわめいた。その感情が

リカちゃんに伝わり涙を流したのが見えたのだろうか

女性は話かけてみた。

 

「ごめんねぇ~あなたを苛めてるわけではないのよ

 少し辛抱してね。きれいにしてあげるからね」

 

そして自分の着ているエプロンのポケットから4つ折

にされたガーゼのハンカチを取り出してみる。赤い

イニシャルの刺繍があり開くとハンカチの4辺はピンク

の刺繍で彩られている。

 

女性はそのハンカチで薄汚れたリカちゃん人形の顔

をスーーと優しく拭いてみると絶望感で満ちていた

哀しげな表情の顔が微笑んでいるように見えてくる

 

「まぁ可愛くなったねぇ」

 

女性の気のせいではない、確かに表情は変化した。

まるでリカちゃん人形は女性に対し嬉しいと顔で訴え

ているかのように。リカちゃん人形の想いは宏和の

想いでもあった。

 

湯水を使い化繊毛髪専用シャンプーで毛髪をさする

ように洗っていくとまだ新しい人形のせいもあるが

長い髪の毛は本来の輝きを戻していった。

濡れた髪の毛を乾かすとそよ風に吹かれても揺らぐ

絹糸のようにあくまでも滑らかな長い髪の毛となる

 

手芸が得意な女性にとって人形の服をつくるなど

いとも簡単にこなしていった。オーダーメイド並み

の色鮮やかなドレスを着けるとリカちゃん人形は

光り輝いていた。こうして宏和(ひろかず)の魂が

入るリカちゃん人形と初老の女性の暮らしがはじ

まったのである。夜は女性の作った姫様ベッドで

眠り昼間は女性が作った専用応接セットで過ごす

宏和の心は毎日が充実し幸せであった。

 

しかし永遠の幸せなどある筈もない。宏和の幸福

な暮らしは突如壊れてしまう。初老女性は脳卒中

で倒れそのまま帰らぬ人となってしまった。女性の

身体は以前から病魔に冒されて医師から余命を

宣告されていたのだ。大好きだったおばぁちゃん

宏和は女性を”おばぁちゃん”と呼んでいたのである

おばぁちゃんの死で悲しみと寂しさを知った宏和は

更なる過酷な道を進むことになっていく。

 

5歳で他界した宏和、感情はそのままに知識だけは

増えていく。10年で男女の恋愛をしり18年で男女の

性行為を経て妊娠することを知る。だが人形に憑依

した宏和にはあまり年月は関係なかった、事故死した

年代から今どのくらい経過したのかさえ知らない。

そして世間で噂されている「呪いのリカちゃん人形」の

ことなど知る由もなかった、自分のことが話題となって

いる事なのに。

 

霊体である宏和は歳月を経ても力が強くなることはない

あくまでも純粋な心の持ち主だった。しかし純粋である

が故、唆される(そそのかされる)とそういうものなのか

と疑う信じてしまう。宏和のような純粋な幽霊には悪い

奴等が近づくもの、いわゆる悪霊と呼ばれる霊である。

 

ただ人間と共に居たい、それだけが宏和の願いだった

そんな宏和に悪霊は囁いた。

「おまえの両親はもうおまえの事など忘れ去った」

「おまえみたいな気味の悪い人形など誰が好きになるか」

「おまえがもし人間に仕返しをしたいのなら俺が手伝って

 やろう、またおまえが力を増したいと思うのなら手を貸す」

 

まだ5歳の宏和、知識は5歳としてはあったが悪霊が存在

するとは夢にも思わなかったので一人寂しかった宏和にと

って悪霊は話しかけてくれた親切なおじさんとしか思えな

かったのだ。これが呪いのリカちゃん人形と呼ばれるように

なるはじまりだった。

 

なぜ新しいままにリカちゃん人形は捨てられたのかという

疑問が残る、当時音声を発する人形は新しい試みであり

大量に生産される人形の中には部品の工程作業で欠陥

が一部発生した。現在市販される商品であるならば企業は

クレーム対応しなければならないが当時、そのような対応

はなく販売する玩具店も返品は許していなかった。

宏和の魂が入ったリカちゃん人形は音声に問題があった

音声システムだけは初老の女性でも修理不可能だった

のである、なぜなら手芸ができてもエンジニアではない。

そして人形に声が出るなど女性は夢にも思わなかった

 

リカちゃん人形の音声、宏和が入っているものは

発する音声が遅くまるで男の声のように聞こえてしまう

音声を重要視する女の子にとっては期待はずれとなった

これが新しいのに捨てられた原因である。

 

時は流れ時代は平成20年、20になり成人式を迎えた

若い女の子は自分へのご褒美として幼い頃に両親から

買ってもらえなかったリカちゃん人形をネットオークション

で競り落とす事ができた。よほどリカちゃん人形が欲し

かったのだろう、女の子は届く日を夢に見てリカちゃん

人形に着せるドレスを仕事から帰ると毎夜 縫う。

 

リカちゃん人形が届くのを1日1日と待ちわびていた

だが届いてみると、音声が聞くに堪えない声だった。

それでも女の子は自分で縫ったドレスを着させ部屋の

ガラスケースに飾ることにした、最初のうちは見ている

だけで心が癒されていたが慣れてくると声が悪い

その事がどうにも我慢できなくなる。これだけならば

まだ部屋に置いていたかもしれないが女の子がベッドに

入り深夜になると人形のほうから物音がするようになる

それは日増しに大きくなり、ある日寝ていると女の子は

誰かに見られている気がして目を開くと、そこには

こちらを向いてベッドに入ってるリカちゃん人形があった

一度はじまると毎晩ベッドにはリカちゃん人形がいた。

 

眠れなくなった日々が続き女の子は睡眠不足に陥る

女の子は夜が訪れるのが怖くなってしまった。暗闇の

中にあいつはいる!そう思うと怖くてたまらない

女の子はリカちゃん人形を捨てようとゴミ捨て場に置いて

くるがその日の夜、女の子が帰宅しのんびりバスタブに

つかっている時のこと。

 

睡眠不足と仕事の疲労で女の子は少しの間浴槽の中

で瞼が下がって眠ってしまった。”はっ”と我に戻り目を

開くと浴槽の底から気泡がひとつ、二つと浮き上がって

気泡は徐々に数を増し”ぼこっぼこっ”と泡状になる

更に底から黒い影のようなものを見つけその影は太もも

の間から湯面に向かって昇りあがって来る。

女の子は恐怖で湯から出ることが出来ない、黒いものは

円状に広がりまるでマリモのようにも見えたがこれは女の

髪の毛だと理解することが出来た。黒いものは更に上昇

を続け目をツブッタ小さな顔が現れた、顔には濡れた髪の

毛を絡み付けて。

 

無防備な浴槽の中で現れたのは捨てた筈のリカちゃんで

あった。突如人形の目は見開き”にやり”と緩んだ口が開

いた。

 

「こぉ~~~~ん なに 汚れ  ちゃったよ、 あら  って」

 

女の子は絶叫し人形を手で投げ飛ばした。

あまりの恐怖に浴槽から全裸のままにベッドに潜り込み

布団を被って震える夜を過ごした、朝になるのがとても

長く感じた怖い一日だった。

翌日女の子は人形が戻ってこられない遠い場所へ売る

ことを決めネットオークションに出品した。安くてもいい

一日でも早く誰かに引き取って欲しいと

 

こうしてリカちゃん人形に入った宏和は人への恨みを

募らせていく、悪霊のおじさんに言われた言葉

”人間は信じるべきじゃない、とくに女はすぐ裏切る”

まさにその通りだと宏和は確信する。

 

宏和はその後九州へ運ばれたがすぐに東北の最北

青森へ行く。恐怖のリカちゃん人形として買った人は

すぐに手放した。ネットではすでに呪いのリカちゃん

人形として広まっていたのである。

 

この話題に目をつけたのがとある心霊動画番組制作

会社、宏和は取材を受けることになる。取材は人形を

調べていくうちになぜ呪いの人形と呼ばれるようにな

ったのか最初に購入した人を調べるため新聞に捜索

広告を出した、リカちゃん人形の音声が壊れている

から 最初の持ち主を特定出来る筈と思ったのだろう

 

捜索は困難に困難を重ね長引いた・・・

と思いきやあっさり見つかってしまう。現れたのは50

代の主婦であった、主婦の女性は取材者から”呪い”

と聞き 大きな声で笑い出してしまう

 

「呪い?ぎゃっはは、の・ろ・いの間違いでしょう」

「だって音声がのろい、とろいんだもの」

 

「それは一体どういうことでしょう」と取材者が尋ねると

 

「普通のは”わたし リカちゃん”というところをね、この

 子は”わ・・・た   し りぃ か ぢゃ  んん”と言う

 のよ」

 

「今聞くと面白いけど買ったのはまだわたしが小さい頃

 だったからこんなのいらない!ってね」

 

「音声が故障していたというわけですね」

 

呪いの人形ということで貰い手がないのを可愛そうと

思ったのか主婦である女性は自分が引き取ると言った

人形の中にいる宏和は納得してはいなかったが。

”こんなおばさん、僕はしらない”

それもその筈で宏和にとってはおばぁちゃんが初めて

の主人だったからだ。それ以前の主人は知らない

若い女のところがいいが幼い女の子でもいい、幼い

女の子は大人の女にはない魅力がある。だがおばさん

は嫌だ、太ってずぅずぅしい。宏和はそう考えた

 

主婦は嫌がる宏和を連れ家へ帰宅した。

”このおばさんも以前女の子を脅かした手口で怖がらせ

ればきっとおばさんも誰かに譲るだろう”と宏和は確信

を持っていたのではあるが・・・

 

おばさんを恐怖のどん底に落としてやろうと宏和は思い

きり怖い表情でおばさんのベッドで睨み付けたのだが

 

「あらあら なんだ一緒に寝たいのね」

 

・・・おばさんは老眼だった、メガネをしないと宏和の表情

がぼやけて見えたのだ。気持ちが消沈したのは宏和の方

となったのである。おばさんが入浴中現れても効果なし

それだけではない、夜 苦痛になったのは宏和だった

宏和はガラスケースの中でおばさんの着替える姿を否応

なしに見せられる、5段腹の醜い脂身(あぶらみ)そして

ひどい加齢臭とワキガ、パンツからはみ出た尻の贅肉

”みにくい”

宏和は毎日が苦難の日々、耐え難い日を重ねた。

 

そんなある日、おばさんは宏和(リカちゃん人形)をガラス

ケースにいれたまま隣の一戸建てを訪問する。

隣には70代の女性が一人で住み他には誰もいない

70代のおばぁさんから居間に案内されると仏壇に遺影

があるのを見つけた、それは5歳くらいの男の子。

”なんか自分に似ているなぁ”

宏和はその写真を見て思った。

 

「おばぁちゃん今日は確か息子さんが亡くなられた命日

 ですよね」

 

「そうなの。あれから40年経ったの、今日は宏ちゃんが

 大好きだったザリガニ、みたいなロブスターのクリーム

 和えを供えてみたのよ」

 

「それは息子さんも喜んでるわ」

 

その会話ではじめて宏和は目の前にいるのが母であると

気がついた、位牌にも宏和という字が入っている。

今でも自分の母親は自分を忘れてはいない、宏和はそう

思うと哀しくて涙が流れてしまう。悪霊から聞かされたのは

まったくの嘘であるとはじめて気がつく宏和。

宏和は事故死した後すぐに両親を探した、両親が宏和を

探したように。幼い宏和は家へ帰る道を忘れていたからだ。

 

「かぁさん、ただいま」

リカちゃん人形から抜けた宏和の顔は40代の男性へと変

わっていた。

 

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体とは一切関係ありません