[短編小説]  釣夢 (過激表現あり) | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

”フィッシュ”

そう声をあげながらリールを巻くルアーマン、彼らにとって

釣りはゲームであり遊びなのだ。特にブラックバスを対象と

している釣り人らは釣っては放流を繰り返し離された魚は

魚体が傷だらけになりながらも生きていく

この物語は釣られた魚達から人間への警告である。

 

湖畔でひたすら竿を振る一人の男、振ってはラインを巻く

作業を何度も繰り返す、擬似餌を使い魚を騙して釣る

ルアーフィッシングというものである。男の道具箱には

ゴールド、ピンク、ホワイト、グリーン、レッド、シルバー

の色をした小さい金属の板が”ピカピカ”と光っている。

これはスプーンと言われるもので小さく仕切りが入った

透明のプラスチックケースには数十個入っている

 

「やはり朝はピンクにしないと駄目か」

 

リールを巻いてルアーを回収するとワンタッチでスプーン

を変え再び竿を振り込んで湖面に落とすと小さな着水音

ともにルアーは沈んで直後に竿を上げアクションをつける

リールをゆっくり巻くとロッドの穂先は強い衝撃を受けた

 

「きた!」

 

魚が突然ルアーを飲みこんだ。ラインにテンションをかけ

ながらロッドを立ててすばやくリールを巻く、ライン切れを

防ぐため強引には魚を寄せられない。ドラッグを調整して

適度にラインが出て行くようにするのである

魚体が大きくなればなるほどラインを出しては巻く、その

作業を繰り返す時間が長くなる、釣りをする人間には

この作業がとても楽しい瞬間でもあるのだ。

 

「ブラウンだな」

丁寧にルアーの針を魚の口元からはずし魚体を眺める

手でなるべく魚体に触らないようにしてブラウントラウトを

そっと湖に帰しながら

「今度会える日まで元気でいろよ」

泳ぎ去る魚に声を投げた。

 

この釣りをする男、名前を日吉要(ひよしかなめ)という

ルアーフィッシングが流行となった立役者でもあるのだ

この男が言い放った言葉

「魚は口元に針が掛かっても痛みを感じることはない」

魚の研究者でもある日吉の言葉だから信憑性が高いと

多くの人は判断したのだろうかルアー人口は増えた。

 

日吉は痛みを感じない生物それが魚を言った訳ではない

むしろ傷をつけるのは魚の口元だけから虐待とは違う

そう言いたかったし魚の寿命を縮める行為はいけないと

考えていたのだが言葉が足りなかったせいで多くの釣り人

達は勘違いをしてしまった、確かに釣った魚に優しく接する

人もいるが大半の人間は針を抜くときも強引に再び水に

返すときも乱暴に投げて水面に腹を見せ浮かんでいても

気にしない。これでは魚達の恨みをかうことも道理

ただその恨みはすべて日吉へと向かうことに成った。

 

夏の暑い日々が続く7月、山で涼を求めるため湖畔で

テントを張り日吉は長野県にある木崎湖まで来ていた

目的は涼しく過ごす事、だが他にここまで来た理由が

あった。それはサクラマスを釣ること

日中は朝早くから湖岸で竿を振り夜はテントで宿泊

そうやって夏休みはここで過ごそうと考えてきたので

あるが3日が過ぎた朝、目が覚めると異変が起こった。

 

目覚めると景色は一変したのである

テントの中で寝ていた筈なのにテントどころか湖もない

大きな岩がそこらじゅうにあり大きな海草のようなものが

ゆらゆらと揺れている、まるで海底で見るような景色

 

「なんだここは、テントの中で寝ていたのに・・・」

 

薄暗い景観のなか砂と岩の地面を歩いてふと上を見ると

ガラス張りの向こう側から光が入っているかのように

煌いて(きらめいて)いた。地面を歩いていくと時折光る

発光体が宙を舞ってあっという間に飛び去っていく

 

不思議なことにこの場所には一切木々が生えていない

それなのに地面には朽ち果てた丸太や折れた木の枝

ところどころにはドラム缶が倒れて砂に埋まっていた

「なんだここは、業者が不法投棄した産廃だろうか」

あまりドラム缶に気をとめず先を歩いていくと今度は

ドラム缶に行く手を阻まれ乗り越えるしか道はない。

 

ドラム缶を間近で見た日吉は驚きで声をあげてしまう

「ああ~!」

なんとドラム缶にはよく見慣れた文字が描かれていた

誰もが毎日のように目にする缶のデザイン

”SUPER DRY”

ドラム缶を手で擦ってみると缶の色はシルバーであり

ビール缶そのもの、大きなビール缶だったのだ。

 

ここではじめて日吉はあることに気がついた。

砂と岩の地面、めり込んだ空き缶そして揺れる海草

まさに海底とおなじロケーションではないかということに

だが水中にいる感覚ではない、水がないから呼吸は出来

るし普通に歩ける、だいいち生物がまったくいない

 

ドラム缶いやビール缶を乗り越えて歩いていくと岩の陰に

しゃがみこんで困ってる長い髪を持つ若い女性を見つけた

日吉は女性の美しい容姿、しかもTバック姿に目を奪われ

一瞬で心を捕まれてしまう。

「お嬢さん、何を困ってるんですか。わたしに手伝える事が

 あればどうぞ言ってください」

しかしその若い女性は何も返答しなかった

 

もう2、3歩女性に歩み寄ってみる日吉

だがその瞬間、女性は霧のように消えてしまった。

なにやら腕が異様に熱いと感じ左腕を見てみると驚愕した

腕には鈍く光る金属が服を貫き突き刺さっていたからだ。

来ていた服は真っ赤に染まり血は服を濃い赤へと徐々に

変えていく、腕から突き出た金属は直径10ミリ程度で鋭角

にとがりしかもやじりの如き返しもついていた。

 

痛いと思ったその刹那、日吉は宙に引っ張られた

激痛と共に宙を舞っていく男はその時、見てしまった。

上空からの乱反射する光線にひかり部分的に反射している

まるで釣りに使うラインのように直線的に光を放っていた

”逃げなければ”

しかし思ってはいても刺さった釣り針のような物は抜けない

抵抗しようとすればするほど腕がちぎれそうな痛みを受ける。

 

さらに物凄い速度で引っ張られている

鏡のような上空がどんどん近づいてきた、周囲が明るくなると

直線的に光っていたものは遂に姿を現した。

半透明の太い糸、糸というよりはロープと呼んだほうが良い

 

鏡のような上空を抜き出た日吉は見た。

巨大な2本足で立つ魚型の巨人を、やつらは黒い瞳を爛々

と輝かせ口元は緩んで笑みを浮かべている。

奴らは大きな口を開いた、小さな鋭い歯がぎっしりと並ぶ

”もう駄目だ、喰われる”

 

再び日吉が目覚めると目の上にはLEDランタンが光っていた

テントの中だったのであれはすべて夢だったと悟る

「なんだ・・・夢だったのか」

「はぁ~~夢で良かった」

 

そう言葉をだした日吉の唇、下唇からは血が流れ

それはあたかも釣り針が刺さった後の様であった。

 

 

この物語はフィクションであり実在の

人物、団体には一切関係ありません