[短編小説] 介護のための見合い 33編 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

昨日は幸子とバイク用品を買いに出掛け楽しかった秀一郎

ではあったが今日は昨日と打って変わり気が重い。

 

前々から病院に連絡して相談して欲しいと頼んでおり

今日は約束していた相談日、幸子にも教えていない

秘密が秀一郎にはあったのである。

病院に行く事を幸子は無論知らない、家族にも教えていない

 

朝7時に目覚め身支度を整え車に乗り込むと自宅の門を

静かに出ていった。幹線道路を走りながら考えこんでしまう

明るい未来が待ってる筈なのに秀一郎の表情には翳りが

あった。

 

車は石材で出来た高い門柱の間を通り抜けパーキング表示

の看板が示す方向へ進んで行く、平日だというのに多数の

車が停まっている。ワンボックスやセダンが向かい合っている

その間を通りぬけて行くのだが空きスペースがない

さらに右折してみるものの車は満杯、広い駐車場にも関わらず

仕方ないので第2駐車場へ向かおうとした時ふとサイドミラー

を見ると駐車した車の中の1台、黒いハイエースが動き出した

”もっと早く出ろよ、のろま”

秀一郎の車はクロカン4WDのためボディがでかい

クラウンクラスの車がミラーを格納していないと隣に停められ

ないのだ。大きなボディの車は駐車スペースを選ぶ

 

第2駐車場も入ってすぐはやはり駐車済みの車が多い

だが5台先にやっと空きスペースを発見した、しかも

隣に停めている車は軽自動車のスズキアルトワークス

向こう隣はパールホワイトのホンダNボックス、しかも

ミラーはきちんと格納している。

「ラッキー!!なんてついてるんだ今日は」

車体の大きな車に乗るドライバーは些細な事で幸福

を感じてしまうのである。

 

一瞬だけ幸せを感じた秀一郎であったが駐車位置から

第2駐車場入り口まで約75メートル、第1駐車場に入り

停めてある車の脇を歩き近道を思い描いても病院入り口

まではまだ200メートルくらい先だった。

「ふーー遠いな・・・」

「病人にこんな距離を歩かせるなんておかしいだろ!

 病院に辿り着く前にくたばってしまうよ」

他の病院と比較すると異様に大きな駐車場敷地なのだが

敷地面積に比べ収容台数は意外と少ない、それというのも

通路いや誘導路が一般駐車場よりも道幅が大きい

理由は支障なく救急車が通るようにと考えられているからだ

 

第一駐車場入り口まで歩いてきも病院の一部施設しか目に

入らない。病院の正面玄関へは木々の間を抜けて行かねば

到達する事ができない、宛ら(さながら)ハイキングコースの

遊歩道如き歩行者通路なのだ。

 

「はぁはぁ やっと着いた」

眼前には見るものを圧倒するように佇む巨大な建築物

それがこの病院、聖(セント)アロワナ病院。なんでもここは

フランスにあるノートルダム寺院を模して建築されたそうで

その風貌は一見の価値に値する。

 

しかし玄関から中に入ると外観とは違い近代的な病院

左には総合案内、その奥にある大広間は外来受付である

直進しすると通路の右壁には一面、病院施設すべての

大きな案内図となっている。秀一郎は来慣れたように

エレベーターを目指し歩を進めて行くと途中で行き止まり

となり右か左のどちらかしか進むことができない

エレベーターがdこにあるのか理解しているように迷わず

左へ曲がって行くと正面には大型エレベーターが2基

待ち構えていた。

 

エレベーターに乗り込むと6Fのボタンを選んで軽くタッチ

10Fまで移動するこのエレベーターはモーター音が静か

しかも速く発進時の衝撃もほとんどない快適なもの。

”スーーッ”と動くこの表現がピタリとくるエレベーター

 

6階に到着するとすぐ左方向へ進路をとり歩いて行く

すると外科・脳神経外科の表示看板と案内受付。

秀一郎はカバンからカードを取り出すと受付にいる

女性看護師に手渡した、カードの情報を読み取り

情報はパソコンの画面を通し表示される。

秀一郎が渡したカードはICチップが内臓された診察

カードだった。

 

「桐生 秀一郎様ですね外科の腐土壷(ふじつぼ)悠里

 先生がお待ちですので6-2Bの診察室へお入り下さ

 い。ここから真っ直ぐ進んで右手3つ目の部屋です」

 

看護師から言われるままに明るい廊下を進む秀一郎

ドアを2回ノックするとドアにつけられたインターホン用

スピーカーから返答してきた医師。

「桐生 秀一郎さんですね、お入り下さい」

静かにドアを開けると左側に置かれたひょうたん型デスク

椅子に座りデスクの上に置かれたパソコン画面を見る

フジツボ医師の姿がそこにあった。

 

「先生今日はよろしくお願いします」

緊張した表情の秀一郎と反した笑顔のフジツボ女医

「まぁそんなに緊張しないで、どうぞお掛けください」

フジツボ医師は相変わらず画面を凝視したまま返答

をした。医師が難しい顔をして画面をみている、大抵

の人は患者の治療に苦慮してるのだろうと思う事

評判高い名医として名前を馳せているフジツボ医師

秀一郎もまたフジツボ医師の知名度は承知のことで

尊敬もしていた。

 

待ち続け5分、10分と経過しても一向に変わらない

相変わらず画面を凝視し悩んでるフジツボ医師に

対し何を悩んでいるのか興味が沸いてきた。

患者という立場の秀一郎、医師のパソコンは患者の

極秘データであり個人情報にも当たるもの

気になっても絶対覗いてはならないデータである

秀一郎もそう理解はしていた、理解はしていたのだが

”見たい”

一度、男がそう思いはじめると欲望は止められない

止まることなく欲望は増幅をしていくのだ。

 

医師の背後から”そうっと”覗いてみると20インチの

パソコンワイドモニターの画面上は驚くべきものだった

 

”修三は憲次の背中に手を回すと慣れた手つきで

 身体を引き寄せていった・・・”

そこには男同士でキスをする劇画チックな差し絵

 

”・・・・・・ BL小説だ”

BLとはボーイズラブの略であり同性愛を表現したもの

秀一郎もはじめてみるものだった。目が点になるとは

こういう状況をいうのではないだろうか

秀一郎の視線を感じたのかフジツボ医師は振り返る

と赤ら顔をした男の顔を見ることができた。

「しゅ・う、いち・ろうさん!?」

「見てしまったのね」

フジツボ医師と視線をずらすようにして秀一郎は小さく

頷いた。尊敬していた名医の理想と現実、確かに

衝撃は受けたものの中学時代で溺愛したアイドルが処女

じゃなかったと知り、受けたショックほど今は大きくはない。

 

「じゃそろそろ仕事、仕事をしましょう」

見られてはいけないものを見られてしまった

いつもはクールな医師として噂が高いフジツボも動揺を

隠せないようであった。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません。