何気に俳優である昭雄のブログを読んでみたマッケンジー鈴木
いつもは仕事のことばかり書いてる昭雄だったが
今日に限ってバイクをねたにした記事が書いてあり
サーキットを走る昭雄の雄姿を映し出した画像もアップされ
最初はいいなぁと見ていた鈴木だったが、
読んでいるとなんか苛立ってきてしまう。
「どんなバイクでも膝スリしてやるから持って来い!」
と挑発的な言葉を投げかけていたからだ。
”生意気な・・・・・”
鈴木の心に火がついてしまった。
昭雄も負けず嫌いだったが鈴木も負けず嫌い。
なんとかして高慢な口を黙らせてやりたかった鈴木であった。
だがブロックタイヤのオフロードバイクは卑怯だし
旧車のマッハH2やGT750B、バンビーンOCR1000
などもたぶん膝スリをやってのけてしまうだろう。
GTレース用のサイドカーはタイヤが車のように
タイヤのエッジが角ばっているから曲がること自体
難しいが器用な昭雄は侮れない。
「そういえば奴はカスタムバイクは駄目と言ってなかった」
そこで鈴木は閃いた。
自分で作ってバイクを作ってやろうと考えたのだ。
その日からガレージに篭る日がはじまった。
仕事へ行く前にガレージへ
仕事から帰ってきてもガレージに入り飯も食わず
ひたすらガレージでバイクを作っていく。
それから2ヵ月後、鈴木はサーキットで昭雄と会っていた。
無論自分で作ったバイクに昭雄を乗せるために
トラックからシートカバーをかけたままのバイクを下ろす
4tセーフティローダーだから重いバイクも簡単に降ろす
事ができた。
大袈裟と思うかもしれないが300キロを超える大型バイク
を一人で荷台に乗せることは不可能で
荷台そのものが後方へ降りてくる自動車積載用の
セーフティローダーが必要不可欠だったのだ。
シートカバーを剥がすと異様に大きいバイクが姿を見せた。
その重厚さはハーレーをも凌駕するほど、まさに巨大。
「なんだぁ、この馬鹿でかいフロントタイヤ、」
昭雄は思わず驚いた!
それもそのはずでフロント20インチ130/40扁平だから
前代未聞のオンロードタイヤなのだ。
50ミリの倒立フロントフォークにはサブタンクもつく
「ところでこのバイクってトライアンフのロケット?」
「ん?ああ そうそ」
そんな名前のバイクは初めて聞いたので思わず
鈴木は焦って頷いた。
「でもさぁ、タンクには”大学受験のTRY”って書いてある」
昭雄の言葉に再び焦ってしまった。
トライアンフなるバイクメーカーが実在するとは知らなかった
ので適当にCMの名前を流用したのだ。
「ところでこのバイクで膝すれるのかい?」
鈴木は不敵な笑いを見せる。
鈴木には勝算があったのだ。
エンジンは直列6気筒でさらにツインターボ仕様
燃料タンクは30リッターでフレームから大きく張り出し
絶対にニーグリップを出来ないように作ってあり
タンクを保護するようにフレームは鳥篭のように張り巡らせ
リアタイヤは225/35-19インチの極太
マフラーはステンレスパイプに網板をつけただけのものが
左右に一本ずつ、それも極太マフラー。
絶対にハングオフ出来ないようにと作ったバイクだ。
コーナーリング中片足はバイクから離れても逆側の足
はバイクを押さえつける必要があるのだ。
鈴木は膝スリやるどころかバイクにも乗らないだろうと
考えていたのだが・・・・
「これエンジンのパワーは?」
「2300CCで295PS、33.5kg/mを3500回転で」
数値を教えれば昭雄は躊躇するだろうと思ったが
昭雄は
「おおお~~、乗ってみようかな」
「な、なにぃ!!やめておいたほうが身のためだぞ」
乗ろうとしてる昭雄を制止するかのような鈴木。
乗るわけないと思っていたので作ったバイクの試運転
さえしていなかったのである。
もし走って何かあったらすべて製作者本人のせい
鈴木は犯罪者となってしまう恐れがあったのだ。
”なんとしてもサーキット走行だけは阻止せねば!
と鈴木が考えてる間にも昭雄はエンジンを掛けてしまう
エンジン掛けて直後のことだった。
大きな爆発音と共に二つのタービンはすっ飛んでいった
左右別々の方向へ。
鈴木はエンジンの火入れさえもしていなかったのだ。
だがおかげで昭雄がバイクを走らすことは無くなった。
タービンの無くなったエンジンは空燃費マップのバランスが
とれなくなりエンジンは止まったから
やっと出来上がったバイクは披露してすぐ死んだ。
動かないバイクはどんなに綺麗でも単なるスクラップ。
しかし製作者の鈴木には愛しいわが娘であった。
赤い夕日が照らすサーキットで
一人涙する鈴木、どこまでもどこまで伸びる
悲しげな男の影がひとつ。
この物語はフィクションであり実在する人物とは
一切関係ありません